「破壊なくして創造なし」没後21年、今も鳴り響く『爆勝宣言』不器用で最高に愛された破壊王・橋本真也の“トンパチ伝説”

■ 「時は来た!」闘魂三銃士の絆と、小川直也との血闘

同期入門の武藤敬司、蝶野正洋とは「闘魂三銃士」として時代を牽引した。入門初日に蝶野と洗濯機の順番を巡って大乱闘を起こしたエピソードから始まり、三人は切磋琢磨しながら深い絆で結ばれていた。

1990年2月の東京ドーム大会、猪木・坂口組との大一番を控えた決戦前。極度の緊張感漂う控え室で、テレビカメラに向かって大真面目な顔で「時は来た!」と叫び、続けてボソッと「それだけだ……」と付け加えた。

横にいた蝶野が思わず吹き出しそうになるのを必死に手で押さえて堪えたというこのシーンは、大の時代劇好きだった破壊王ならではの愛すべき名場面として、今も語り草となっている。

※蝶野は後に「俺は笑ってない!」と釈明しているが、この瞬間の面白さは誰もが認めるところである。

そして、柔道界から鳴り物入りで参戦してきた小川直也との遺恨である。

1999年1月4日の東京ドーム。プロレスのルールを無視した小川の突然の暴走ファイトに対し、鼻骨を骨折させられ、なす術なく蹂躙されて無効試合となった。

試合後の会見で「絶対許さない」、「何がアントニオ猪木だ!」と、背後にいる絶対的な師匠・猪木へ怒りの牙を剥き出しにした。

その後、「負けたら引退」を公約した運命の5度目の対決。

STOの連発によってマットに沈みゆく中、焦点の合わない虚ろな目で「もうダメだ」とも発言しているような動きを見せ、実況の辻よしなりアナウンサーが「立ってくれ橋本!」と絶叫した姿は、日本中を震撼させた。

しかし、どん底から這い上がり、ファンから送られた百万羽の折り鶴に背中を押されて引退を撤回。

自ら立ち上げたZERO-ONEの旗揚げ戦、両国国技館の中央で「破壊なくして創造なし、悪しき古きが滅せねば誕生もなし、時代を開く勇者たれ!」と絶叫した姿は、まさにプロレス界の救世主であった。

同興行のメインイベント後、リング上でノアの三沢光晴を挑発した小川の「今度は三沢だからな!」というマイクに対し、三沢が珍しく感情を露わにして「やってやるよ」と応じたあの大乱闘。

全てが、橋本真也という存在が生み出した強烈な磁場であった。

 

■ 家族への不器用な愛と、早すぎる旅立ち

リング上では無敵を誇った破壊王だが、私生活では愛すべきほどに不器用な男であった。

最初の妻・かずみ氏にプロポーズした際、「もうちょっと冷静になって考えたほうがいいんじゃないの?」と真っ当に諭されると、吸っていたタバコを自らの手の平で揉み消すという、常軌を逸した激しい愛情表現を見せた。

しかし、度重なる不倫問題で家庭は崩壊していく。

一度目の不倫の際は「そうだ!」とあっさり認め、「お前より理想の人に近い」と悪びれず、二度目の際は鼻水を垂らして号泣し謝罪するも、3日後には「だいたいさぁ、人のクルマからそうやって手紙を持って来る、お前が悪いだろう!」と完全なる逆ギレを見せる。

そのメチャクチャな行動は、まさに私生活でも「トンパチ」そのものであった。

だが、長男・橋本大地への愛情は本物であった。貧しい玩具に恵まれなかった幼少期の反動からか、子供のためのおもちゃに自分が熱中してしまい、妻が触ると血相を変えて怒った。

後に自分の方に問題があると気付くと、「子供用と自分用」の2セットを買ってくるようになったという愛らしいエピソードも残っている。

2005年7月11日。ZERO-ONE崩壊の莫大な負債を一人で被り、長年放置していた右肩の手術を経てリハビリに励んでいた矢先の悲劇。

葬儀の日、武藤はショックのあまり階段に座り込み立ち上がれなくなり、蝶野は人目をはばからず声を出して号泣した。

出棺の際、霊柩車に向かって高島宗一郎アナウンサー(当時)の涙声の絶叫が響き渡り、入場曲『爆勝宣言』が流された。数千本の赤い紙テープが宙を舞い、大「ハッシモト」コールが轟く中、破壊王は天へと送られた。

あれほどプロレスファンに深く愛され、魂の底から惜しまれながら旅立ったレスラーを、私は他に知らない。

 

■ マットのど真ん中で永遠に鳴り響く『爆勝宣言』

没後21年。プロレス界を取り巻く景色は大きく変わった。激しい打撃戦や危険な角度の投げ技に対する価値観も変容しつつある。

しかし、橋本真也が残した圧倒的な熱狂と、人間の生々しい感情のぶつかり合いは、今も我々プロレスファンの胸の中で激しく燃え盛っている。

リングという四角いジャングルに、己の全存在をぶつけ、怒り、泣き、笑った。

不器用で、無茶苦茶で、誰よりも強くて、最高に愛おしい破壊王。

今日という日は、あの『爆勝宣言』を脳内で大音量で鳴り響かせながら、天に向かって心の中でこう叫びたい。

「時は来た!」と。

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