熱狂の『ゼンニチJr.フェスティバル』開幕と、受け継がれるプロレスの魂!ドリー・ファンク・ジュニアを偲ぶ特別な夜
哀愁を帯びた10カウントゴングが、会場の隅々にまで染み渡っていく。
今月4日、85歳でこの世を去った「グレート・テキサン」ドリー・ファンク・ジュニアの追悼式。
全日本プロレスのPWF会長も務め、日本のファンを芯から熱狂させた名王者を送り出す、神聖な儀式である。

設置された献花台には多くのファンが列をなし、祈りとともに別れを告げた。
だが、悲しみに包まれたリングは、やがて熱を帯びた「戦場」へと変貌する。それがプロレスの宿命だ。
昨年に続き開幕したジュニアヘビー級の祭典『ゼンニチJr.フェスティバル(ジュニフェス)』。
前年度覇者の青柳亮生が左ヒザ前十字ジン帯損傷により直前で欠場という波乱に見舞われたものの、DRAGONGATEから現GAORA TV王者の望月成晃が代替参戦。
計12名の猛者たちが、8月29日の大田区大会での栄冠を目指して走り出した。
今回は、偉大なるレジェンドが遺した「プロレスの魂」が、現在のリングで躍動する選手たちにいかに受け継がれているのか。
開幕戦の熱闘を通じて、マットのど真ん中から迫ってみたい。
■ 王者撃破の波乱。真っ向勝負の果てに見た「受けの美学」

開幕のゴングが鳴ると同時に、全日ジュニアのプライドが激しくスパークした。
第1試合に組まれたのは、世界ジュニアヘビー級王者の田村男児と、初出場の青木優也によるBブロック公式戦。
静かなる闘志を燃やす王者に対し、青木は真っすぐに情熱をぶつける。
両者は序盤からエルボーやフロントキックの凄まじい乱打戦を展開。
田村が雪崩式ブレーンバスターやショートレンジ・ラリアットで王者の意地を見せれば、青木も一歩も引かず、最後はランニング式ケサ斬りチョップという強烈な一撃で3カウントを奪い取った。

開幕戦から王者が沈むという大波乱。
しかし、敗れた田村の口から出たのは、一切の言い訳のない王者の覚悟であった。
「青木優也がああやって辛抱するなら、俺ももっと受け止めないといけない。痛みもすべてを受け止めないとチャンピオンじゃないと思ってるから。受け止め切れなかったのは、俺はそこまで。まだまだ命を削って、くたばるまでやるだけです」
「痛みもすべてを受け止める」
この言葉には、どんな相手の攻撃からも逃げず、懐深く受け切った上で名勝負を紡ぎ出したドリー・ファンク・ジュニアの「受けの美学」が確かに重なる。
負けてなお、田村のチャンピオンとしての器の大きさを感じる開幕戦であった。
■ 56歳の覚悟と、三冠戦に向けたヘビー級の巨大なプライド

急遽参戦となった56歳のベテラン、望月成晃の存在感も圧倒的だった。
ジュニア転向を果たした大森北斗を相手に、望月は得意の蹴りと徹底したインサイドワークで主導権を握る。
若き大森も投げっぱなしジャーマンなどで意地を見せるが、最後は望月が一角蹴りからツイスターへとつなぎ、見事に白星スタートを切った。

「俺が来たからにはそんな流れぶち壊してやるからな。俺が優勝して、世界ジュニアも勝って、俺が最年長記録樹立してやるから。覚悟しとけ」
若手の壁として立ちはだかるベテランの凄み。
年齢を言い訳にせず、常にリング上で最高のコンディションと闘志を見せつけるその姿勢もまた、生涯現役を貫き、後進の壁であり続けたドリーの姿を彷彿とさせる。

一方で、ジュニアの祭典が開幕する中、看板であるヘビー級戦線も負けじと熱を帯びている。
8月29日の大田区大会で三冠王座を争う王者・宮原健斗と挑戦者・安齊勇馬の前哨戦。
宮原は安齊の得意技であるジャンピング・ニーを切り返し、自らの正調ブラックアウト(ヒザ蹴り)を完璧に叩き込んで3カウントを奪取した。

試合後、宮原はダウンする挑戦者を「世界一カッコいい顔が台無しだな」と嘲笑。
さらに「勝つのは世界一カッコいい男・安齊勇馬ではなく、スーパースター宮原健斗だ」とふてぶてしく宣言した。
ジュニアの熱狂に決して負けまいとする、ヘビー級の巨大なプライドと愛憎が交錯する空間もまた、全日本プロレスの変わらぬ魅力である。














