【新日本】35年間の大歓声に感謝!天山広吉が満身創痍の体で辿り着いた“身も心もスッキリ”の境地!若い世代へ託した“何コラ”の精神「歯を食いしばって試合を見せてほしい」
新日本プロレスが誇る“真夏の最強戦士決定戦”は、最終局面の両国国技館2連戦へと突入した。
8月15日(土)、『G1 CLIMAX 36』第18戦が開催され、準決勝2試合という大きな見せ場が用意される中、館内の熱気と涙を一手に引き受けていたのは、この日をもって約35年間の現役生活に終止符を打つ天山広吉であった。

メインイベントで行われた小島聡との引退試合は、天山の直訴により5分1本勝負から時間無制限1本勝負へと変更された。

満身創痍の肉体を奮い立たせ、モンゴリアンチョップや大剛式バックドロップなど、昭和から平成、そして令和へと受け継がれてきた魂の技を打ち込んだ。

しかし、最後は盟友・小島のフルスイングのラリアットを浴びて3カウントを聞いた。

試合後には因縁の飯塚高史が登場し、大観衆が見守る中で奇跡の和解を果たす。

続くセレモニーでは錚々たるレジェンドたちが花束を持って駆けつけ、猛牛のフィナーレを華やかに彩った。

すべての催しを終え、バックステージへ戻ってきた天山。
リング上での鬼気迫る表情や、感動で涙ぐむ姿は消え去り、そこには大仕事を終えて安堵する一人の男の素顔があった。
限界を超えたダメージを負っているはずだが、天山はどこか晴れやかな顔つきで報道陣の前に座った。

「最後、本当に首が折れるかと思いましたけども、本当にスッキリ。これで何も悔いなく次のスタートに立てるかなと思いますね。コジが手加減してくれへんから…頼むわ、ホンマ(笑い)。永田もすごく応援してくれて、ありがとう。永田はまだまだ5年、10年やってくださいよ」
同席した永田裕志や小島に向けた軽口には、長年苦楽を共にしてきた第三世代ならではの深い絆がにじみ出ていた。
自ら持ちかけた時間無制限への変更についても、その覚悟を明かす。
「5分ではお客さんも納得しないだろうじゃないですけど、自分的にはコジととことんやりきりたい気持ちだったので。勝っても負けても」
「そんな最後は後味が悪いから。とにかくコジのラリアート痛かったわ…」
5分で引き分けに終わるような結末を嫌い、盟友の最大の武器を真っ向から受け止める道を選んだ。
そして、自身を後押ししてくれた超満員札止めの観衆へ、改めて深い感謝を述べる。

「いま持てるものを出し切ったというか。攻めもなかなか思うようにはいかなかったんですけど…でも、お客さんの応援があってここまでやることができて、本当に感謝しています。思い入れのある会場で最後の試合を迎えて、テンコジ対決でしたけど、身も心もスッキリというか。泣いちゃうかと思ったんですけど、意外となんか…。本番前のリハーサルでしゃべった時は、めちゃめちゃ泣いちゃったんですけど(笑い)」
大歓声の中で聞いた10カウントゴング。その瞬間の心境を問われると、照れ隠しのように笑い飛ばした。
「両国国技館の天井を見て、これで選手としては終わりなんだなって…。感慨深いものがありましたけど、なんか涙が出てこなかったね(笑い)。枯れちゃったのかもしれない」
「ここまでいろいろ良いことも悪いこともいろいろありました。でも最後の最後に天山コール…皆さんの応援が何よりも力をもらいました。本当に今まで、35年間ありがとうございました」

また、プロレスファンの涙腺を崩壊させた飯塚との和解劇についても、当事者である天山はユーモアを交えて振り返る。
「自分のために最後になって姿を現してくれて。「何しに来たんだコノヤロー!」って感じですけど、来てくれただけで、本当に感謝してますし。昔の友情タッグを組んでいたことを思い出してほしかったし、今日で最後なので。彼も引退してこれから先、何かストーリーがあるわけでもないし。これで最後でしょ、飯塚さん、もうヒゲ剃ってまともにやってくださいみたいな感じでした(笑)」
長年の遺恨すらも包み込む猛牛の懐の深さ。ここからは新日本プロレスの功労者として、後進を見守る立場となる。
激動の時代を生き抜いたレジェンドとして、次代を担う若きレスラーたちへ力強い金言を残した。
「皆さんも分かると思うんですけど、体もしっかり治して。リングに立つことはないと思うんで、新日本プロレスのこれからの若い世代の人たちを影ながら応援していきたいと思います」
「全部が全部コジには通用しなかったけど、技うんぬんではなく、向かって行く気持ち。馳(浩)さんとか長州(力)さんに教育されて育った世代なので、何コラって気持ちをもって戦ってきましたので。今の世代の人も、根性論を押し付けるわけじゃないけど、歯を食いしばって試合をお客さんに見せてもらいたいですね」

綺麗な技の攻防だけがプロレスではない。
泥臭く、不格好でも相手に向かっていく「闘魂」こそが、新日本プロレスの原点である。
天山のメッセージは、若い選手たちにとって重いバトンとなるはずだ。
そしてインタビューの最後、話題は天山を支え続けた家族へと移った。
大一番へ向かう朝、自宅での心温まるエピソードを明かした。
「珍しくね。朝11時くらいに出たんですけど、息子も嫁も普通だったら「行ってきます」って言ったら「はーい」みたいな感じですけど、2人ともちゃんと立って「パパ、頑張って」みたいな。なんかすごいなと感動して「頑張ってくるから」って。うれしかったですね」
「前の方で(見て、試合後は)リングに上がってくれって言ったんですけど「ボックスの後ろで見てるから。あなたが主役なんだから」みたいな感じで。でも、支えられたのは家族の力もありました」
リング上では怒りを剥き出しにする猛牛も、家へ帰れば良き父親である。
家族の存在が、過酷なプロレス人生を歩む上で最大の原動力となっていたことは間違いない。

しかし、引退後の第二の人生は、リングとはまた違った試練が待ち受けているようだ。
「ちょっと最近、風呂が汚くなっているので、また風呂掃除しなきゃいけないなと。これから選手としては終わってしまいましたけど、掃除当番としてはまだまだ。家の中ではちょっと厳しい生活になるかもしれませんし、ちょっとそれを考えると憂鬱な感じですけど、まさにツームストーン…。本当に皆さん、35年間長いあいだありがとうございました」
首の骨が折れるかと思うほどの死闘を演じた数十分後に、風呂掃除の心配をして報道陣の爆笑を誘う。
プロレスラー・天山広吉の愛される人間性が、この最後のコメントに凝縮されていた。
戦いを終えた猛牛は、愛する家族の待つ我が家へ、清々しい足取りで帰っていった。
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