【宮本和志インタビュー】天龍源一郎・川田利明・石澤常光に鍛えられた戦士、福島で「プロレスオリンピック」を開く!

<総合格闘技との邂逅、そして和志組へ>

――当時は、新しい人が出てきたなという、フレッシュなイメージを持ちました。本間朋晃選手との「ターメリック・ストーム」もありましたし、早い段階で評価されていましたね。いい体をされていたので、プロレスラーとしてもよかった。

宮本:今考えると、まだ細かった。

――ボディビルのおかげで基礎がついていた?

宮本:基礎体力の面では、普通の新弟子よりはできていたと思いますが、プロレスのトレーニングは違うので、半端じゃなくきつかったです。今でこそプロレス界にも科学的トレーニングが取り入れられていますけど、当時はスクワット何千回とか、昭和式のトレーニングでした。

――道場長は?

宮本:ケアさんが巡業が終わってから残ってくれた。武藤(敬司)さんが戻ってきてからは、石澤(常光)さん(ケンドー・カシン選手)がコーチでした。もう半端じゃなかった。地獄です! 石澤さんが道場に来る足音を聞くだけで「うわー!」となるほど。何かミスをしたら、スクワット千回。合同練習だけでもきついんですけど、それが終わってちゃんこを食べて休んでいると、馳さんから電話が来て「今から専修大学に来い」と。合同練習でヘトヘトの状態で学生たちと組んで、それから帰る。それがない時はナショナルトレーニングセンターに呼ばれて、アマレスのオリンピック候補の人と練習させられました。当時は馳さんが凄くやる気で……。たまに宇野薫さんとかも道場に来て、総合の練習もしました。宇野さんは強かったですけど体重差があって押し切れた。宇野さんはうまかったですね。パンチを目で見てよけるんです。

――かなり総合格闘技を意識されていたんですね。

宮本:石澤さんが総合をやっていたので、当時全盛期のPRIDEに負けちゃダメだということで。ボクシングのコーチも呼びましたけど、その時は嬉しいんですよ。先輩とスパーリングできるから、苦手だった奥村(茂雄)さんを必ず指名して、ボコボコにするんです(笑) 奥村さんはボクシングの時は逃げようとして、「今日の練習、ボクシング?」って聞いてくるので、「たぶん違いますよ?」って答えておく。いざ来てみたらボクシング(笑)

――四方八方、いろんなことをなさっていたんですね。

宮本:プロレスラーは強くなきゃダメですから。河野(真幸)とか土方(隆司)さんもそうですけど、当時のレスラーはみんな強かった。生半可じゃなく強かったです。初期の(ファンタジーファイト)WRESTLE-1の総合の人と一緒に総合格闘技やってました。ヒース・ヒーリング、マーク・コールマンとか、ケビン・ランデルマンも来ていて、一緒に練習しました。ヒース・ヒーリングには腕ひしぎを喰らって、ひじを壊しそうになりましたね。コールマンは実力があったので、手加減するところは手加減してくれるけど、ヒーリングは暴れ馬だから全部が強くて、タップするまで力を入れっぱなしなんです。コールマンやランデルマンはまだよかったです。

――当時は格闘技も含めてボーダレスな時代になっていましたね。

宮本:この経験は、アメリカに修行に出してもらった時に役立ちました。

――プロレスラーとして揉まれて、いろんなキャラをチャレンジしました。「ジャパニーズ・ミリオンダラーマン」とか……

宮本:武藤さんからの指示で、WRESTLE-1で半年くらいやりました。一千万くらいZEROのアタッシェケースに入れて、見せびらかしたりとか……

――葛藤があったのでは。

宮本:中途半端でしたね。ミリオンダラーマンは自分のキャラじゃないし……。あの時は、半ばヤケになっていました。自分としては天龍さんのような男臭いレスラーが好きでした。

――それから自主興行・和志組のプロデュースに至ります。

宮本:プロレスを通して、泥臭い男、天龍さんや川田さんの現役時代のスタイルが好きなので、古き良き時代のスタイルをもう一回やりたかったんです。「強く、痛みの伝わるプロレス」ですね。自分が育てている「闘真」という部門でも、選手にはしっかりスクワット千回から始めて、基礎体力をつけてスパーリングをさせています。

――プロレスラーらしいプロレスラーを育てる。

宮本:昭和の選手顔負けくらいに鍛えました。先日は闘真から、牙城がWRESTLE-1に参戦させてもらって、向こうの若手と戦い、三分くらいで勝利しました(2017.9.18 後楽園ホール大会)。向こうは武藤さんの代理で、こちらは僕の教え子。試合でも圧倒してくれて嬉しかったです。リング上で和志組の旗を広げてもらって、感無量でした。

――選手を鍛えるモチベーションも高い。

宮本:牙城は十月からアメリカに修行に出しますが、僕がアメリカに行っているときに世話してくれたディーロ・ブラウンがラスベガスでスクールをやっているので、そこに通わせます。ラスベガスにはランディ・クートゥアのジムがあるから「道場破りに行け」と言ってます。以前僕もそのジムに行ってみたら、ヴァンダレイ・シウバがいたんですよ。チャンスと思ってスパーリングを申し込んだら、グラウンドのスパークリングで絶対に負けない。体重差で20kgあるので勝って当たり前だけど。だけど、シウバより強い選手がいて「あいつ誰だ」とクートゥアに聞いたら、「まだ練習生だ」と。練習生でこんなに強いのか……。

――UFC本部があるラスベガスは、競技者が集まる場所です。

宮本:みんな必死で練習していたし、いい環境だなと思って、牙城もそこに行かせようかなと。

――内輪で練習するのとは違いますね。

宮本:いろんなタイプのレスラーがいるので、そこに順応できるように。石澤さんも「どんな相手が来るかわからないから、ちゃんと練習しなければだめだ」と言っていました。

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