【今日子のプロレス今日この頃】⑲「抱きしめてあげたい」⑩「ドン荒川さん」
ドン荒川さんが亡くなりました。
訃報は、ある選手から聞きました。
「え、あんなに元気な人だったのに?」
「いや、最近はずっと具合が悪かったらしいよ」
荒川さんは、ニコニコしていて愛嬌があり、いつ何時でも明るく元気な方でした。
昔、札幌に試合を見に行った時、街中で偶然出会って、ラーメン横丁に誘われました。
実は、お昼を食べたばかりだったのですが「いいじゃん、いいじゃん」と言われて連れて行かれました。
お腹一杯だったのですが、「いっぱい食べないと大きくなれないよ!」と、新弟子を指導するかのごとく、味噌ラーメンにゆで玉子やコーンなどいろいろトッピングしてくれて、山盛りの巨大ラーメンになりました。
残したら申し訳ないので、頑張って食べていたら「餃子と炒飯2皿ずつ!」と追加注文され、ビビってたじろぎましたが、そのお店は「うちはラーメン専門店。餃子や炒飯はない」だそうで、正直ホッとしたのを覚えています。
それでもわかる通り、荒川さんは本当にサービス精神旺盛な方でした。
まだ携帯が普及していない時代。
「カメラ持っている? だったら貸して。控え室の中、撮って来てあげるから」と言われ、お預けしました。
ところが、現像してみると、荒川さんがポーズを撮った写真がほとんどでした(^_^;)
そんなイタズラっ子みたいなところも、どこか憎めなかったです。
最後にお話したのは、昨年の初め(?)だったと思います。
スポンサーの高級化粧品会社の社長を紹介すると言われたのですが、「高価なものは買えないので」とやんわりお断りしました。
すると「ね、ね、札幌の味噌ラーメン覚えている? 美味しかったよねぇ。また食べに行こうよ」と、思わぬ事をおっしゃいました。
まさかそんな事を覚えているとは思わなかったので、ビックリしたと同時に、「ああ、だから荒川さんはスポンサーが多かったんだ」と納得しました。
奥様がとてもおきれいな方で「俺、実はモテるんだよ~」なんて、よく言っていた荒川さんですが、「ねぇねぇ、ちょっと抱きついてくれない?」と言われたことがあります。
「え、何でですか?」と聞いたところ「だってさぁ~、こっちからするとダメじゃん。でもファンから抱きついてくるのはいいんだよぉ」と、おどけた様子で笑っていました。
今考えると、セクハラとかHな感じでもなかったのですが、私もまだ高校生で、融通が利かなかったので「ヤダ!」と断ってしまいました。
「あ、ごめんごめん。ウソだよ~」と、ちょっと淋しそうにふざけた荒川さんでしたが、享年71歳。こんなに早く逝ってしまうのなら、あの時、抱きついておけば良かったです。
もう二度と会えないけど、今さら遅いですが、抱きしめてあげたいと思いました。
荒川さんは、天国でもきっと人気者になるでしょう。
いつも笑っていましたね。いつも明るく、ニコニコしていましたよね。
貴方の笑顔は決して忘れません。
いろいろと、優しく親切にして下さって、本当にありがとうございました。
安らかに。