【編集長コラム】「佐藤恵一を見守る恩師のエール」

教え子の一大事に黙っていられない!

全日本プロレスの2・13後楽園ホール大会。「Jr.BATTLE OF GLORY」に出場した佐藤恵一の正則學園高校時代の恩師2人が“緊急参戦”した。

佐藤は正月興行2連戦でヤジの嵐に見舞われている。お酒も入っていたのかも知れない。熱心な全日本ファンから「何しに来た!」「お前なんかいらない」「帰れ!」「出戻り野郎!」「全日本に佐藤は2人いらない」など、ヤジの集中砲火を浴びた。

昭和の新日本プロレスの会場を思い出す、厳しく激しいヤジの連発だった。「佐藤の心が折れてしまうのではないか」と心配になるほどだった。

尊敬する鈴木鼓太郎と行動を共にした結果、佐藤は全日プロを退団しW-1に入団。その後、再び全日マットに参戦している。一部のファンの神経を逆なでしてしまったのだろう。

ただ、今はボーダーレスの時代。全日プロの秋山準社長、大森隆男取締役をはじめ、他団体においてもUターン参戦の選手も多く、佐藤や鈴木だけを非難するのは、気の毒な気もするのだが・・・。

カール・ゴッチの墓がある東京・南千住の回向院で、昨夏の納骨式の際、司式役を務めた竹ノ塚・正安寺の田丸英春住職は、僧職につく前、正則學園高等学校の先生だった。

その時の同僚が、佐藤の恩師。佐藤が「あまりにひどくヤジられている」と知り、湯原勝典先生はじめ二人の恩師が、この日、後楽園ホールに駆けつけた。

年度末の学期末という、先生にとって「リアル師走」とも言うべき多忙な時期の電撃参戦。ヤジられている教え子を見逃せなかったようだ。

幸いこの日はブーイングのみで、ヤジまみれにはならなかったが、佐藤に対する反動もあったからか、対戦相手の全日愛を叫ぶ岡田佑介に声援が集中し、第一試合とは思えないほどの盛り上がりだった。

試合中の先生は、佐藤が攻め込まれると、腕組みをして厳しい表情で見守り、佐藤が優勢になると「よし!」とガッツポーズを繰り出していた。

佐藤が無念の敗北を喫すると「ああ・・・」と、無念の表情で天を仰いだ。

佐藤のファイトに一喜一憂する先生たちの顔を見ていたら「先生の教え子に対する愛情は、お父さんであり、お母さんでもある」と、妙に納得してしまった。

試合後、激励会が開催された。照れたような表情で、佐藤は先生と乾杯した。

「負けるなよ。もっと、ガンガン行けよ」等、身を乗り出して熱血指導する先生。

「僕らは君を応援することはできる。だが、後は自分次第だ。ヤジは悔しいだろう。悲しいだろう。それに打ち勝つのは、強くなるしかないんだ」。

神妙な面持ちで聞き入る佐藤。ほめて伸びる子なのか、励まして奮起する子なのか。生徒の特性によって指導の仕方は異なるそうだ。

佐藤の性格を熟知した先生だからこそできる、精神的な助言の数々。きっと、それらのアドバイスは佐藤にとって最良のエールだろう。

佐藤は「誰にだって置いてきたい過去はある。ただ、未来を悲観したことは一度もない」とあくまで前向きの姿勢で「自分の居場所を作らなきゃいけないんですよ」と唇をかみしめた。

強くなれ。強くなって、四角いマットで居場所を作れ。

先生はいつでも佐藤を見守っている。

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