【編集長コラム】「イクメン」棚橋弘至から思い出したレジェンド

IWGPヘビー級王座奪還には失敗したものの「まだまだ、強くなってやる」と復活を誓う棚橋弘至。「エース」を熱く支持するファンも多いが「イクメン」としても人気を集めている。

お子さんたちとの交流ぶりをSNSなどでも積極的に発信している棚橋。タレントデビューも近いといわれる、上のお嬢さんと一緒に、結婚式やパーティーなどにしばしば出席していた。

まだまだ小さかったお嬢さんは、知らない大人ばかりの会では不安なのか、棚橋のひざの上に乗って甘える場面を目撃した。その時の棚橋の優しい顔と言ったら・・・。

そこで、思い出したのが大熊元司さん㊧だ。「現役最年長レスラー」として大暴れしている、グレート小鹿と「極道コンビ」を結成し一時代を築いた伝説のレスラーである。

大熊さんは大相撲を廃業後、日本プロレスに入門し、全日本プロレス旗揚げに加わった。身長180センチで、体重は約130キロ。「クマさん」の愛称通りの風貌だった。

小鹿との極道コンビで、日本そして米マットでも活躍。アジアタッグ王者に何度も輝き、小橋健太のデビュー戦の相手も務めている。永源遥さん、渕正信らと結成した悪役商会で、ジャイアント馬場さん、ラッシャー木村さんらのファミリー軍団と対戦する大熊さんの勇姿が、蘇ってくる。「クマさん、クマさん」とレスラー仲間からもファンからも慕われていた。

見た目そのまま、豪放磊落のイメージが強いが、米遠征中にホームシックに陥るなど、とても寂しがりだった。

大熊さんにはかわいいお嬢さんがいた。東京・目黒のフルーツパーラーを、スラッと細身で髪の長いモデル風の奥さんと、家族3人で訪れていた大熊さんと出くわしたことがある。

フルーツパフェ、プリンアラモード、フルーツジュースなどカラフルでおいしそうなメニューがテーブルいっぱいに並ぶ。「パパ、はい、あ~ん」とお嬢さんから、さくらんぼなどを、口に入れてもらっていた。照れながらも顔をクチャクチャにして本当に嬉しそうだった。

まだ小さかったお嬢さんは、おなかいっぱいになると、眠くなってしまうのかグズり出す。「こっちにおいで」と、大熊さんはひざの上に抱っこしてやさしく頭を撫でていた。

大きな大熊さんのひざの上に抱かれ、安心したのかスヤスヤと寝息を立てるお嬢さん。奥さんが「そろそろ帰りましょう」と言っても「起きちゃうから」と、しばらくそのままにしていた。

大熊さんは、本当に家族を大事にしていた。「普段は遠征で、家にいないからね。家族も寂しいだろうけど、本当は俺だって・・・」。貴重な家族の時間を大事にしていたのだろう。

大熊さんと棚橋。時代、団体もファイトスタイルも全く違うが、お嬢さんをひざの上に乗せている時の表情は似ている。どちらもとても優しいパパの顔だった。

リング上のプロレスラーからは「人生」が伝わってくる。その背中に自分の「人生」を重ねるファンも多いはず。プロレスラーの魅力は、もちろん「強さ」「凄み」だが、垣間見える「人となり」も魅力の一つだろう。

「パパ」レスラーの「お子さんに向ける笑顔」。リング上ではまずは見せない一面だが、醸し出される一瞬がある。それもプロレスラーの魅力の一つ。「今日も一緒にプロレスを楽しみましょう」。

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