【俺達のプロレス名勝負列伝・第3回】新宿夢幻大(関本大介VSマサ高梨 2010.4.4DDT)

新旧洋邦・数々のプロレス名勝負を独自視点で取り上げていく連載「俺達のプロレス名勝負列伝」。第3回は2010年4月4日DDTプロレスリング・新宿フェイス大会で行われた王者・関本大介(大日本プロレス)VS挑戦者・マサ高梨(現・高梨将弘)のKO−D無差別級選手権試合です。

王者の関本はこの高梨戦が二度目の防衛戦。インディー団体・大日本プロレスが生んだ175cm 120kgのマッスルモンスターはメジャー団体やレジェンドレスラーも認める実力を誇ります。DDTにとってあまりにも強敵な他団体王者でした。一方の挑戦者となった高梨は3月の挑戦者決定バトルロイヤルを制し挑戦が決まりました。170cm 70kgと体格にも恵まれていません。また自ら”最汁レスラー”と自嘲するほど弱さを前面に出すレスラーでこの試合の勝ち目はほぼゼロと目されていました。だが高梨は実はDDTきっての策士であり、テクニシャン。またスタミナ勝負にも自信を持っていました。ファンは「この男なら何か大仕事をやってのけるのでは…」という期待を抱いていたのも事実でした。

試合は関本のパワー殺法とテクニックで高梨を圧倒していきます。木の葉のようにこっぴどくやられていく高梨が活路を見出したのが関本への徹底的な右ヒザ攻めでした。低空ドロップキックやドラゴンスクリュー、足横須賀、足四の字固め、サソリ固めと次々と一点集中にこだわる彼の姿にはある種の執念を感じさせました。

試合は20分を越えても高梨は関本に立ち向かいます。秒殺で終わるかもと思われていたこの一戦は長期戦に突入していく中で、関本のラリアット、フロッグ・スプラッシュ、アルゼンチン・バックブリーカーにも耐え抜きます。終盤、高梨は必殺のタカタニック(急角度回転エビ固め)を決めるもカウント2。さらにオリジナルの丸め込み技バッカスまで出すも決まりません。ここで高梨は勝負を賭けます。何と雪崩式タカタニックを狙います。これが決まればさすがのマッスルモンスターに勝てるかもしれません。高梨が関本に勝つのは夢物語かと思われていたのが、現実に変わろうとしていた刹那、なんと関本は雪崩式タカタニックを雪崩式インプラント(ジントニック)で切り返し、観客を絶望に陥れます。そして得意のぶっこ抜きジャーマン・スープレックス・ホールドでカウント3。25分58秒の大勝負はここに決着しました。

高梨が雪崩式タカタニックを仕掛け、両手で大見得を切った時、確かに「小よく大を制す」、「最汁レスラーによるマッスルモンスター退治」、「DDTに至宝を取り戻す」というあらゆる夢を見ました。だがその夢を幻として打ち砕いたのは大日本プロレス・関本大介という外敵王者でした。東京の繁華街・新宿で観た”夢幻大”という空間は熱狂と興奮を呼びました。この関本VS高梨は同年の日本インディー大賞のベストバウトを受賞しました。

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