【編集長コラム】「サーベルは守護神」

「竹刀」。田中将斗、伊東竜二、ダンプ松本らが自在に操り、対戦相手をひるませているが、かつては上田馬之介さんが手にしていた。上田さんの盟友「狂虎」タイガー・ジェット・シン氏の代名詞はサーベルだった。

サーベルは多くの国の軍隊で、軍刀として将校・士官の階級を示すシンボルでもある。主な兵器が銃器がとなってからも、ファイティングスピリットや気合いを示す精神的なもの、装飾的な意味合いもあって携帯され続けている。

大暴れしていたころのシン氏は「サーベルはラッキー・アイテム。私はいつも持っているから強い」と豪語していた。

「インドの狂える虎」と言われたシン氏は、いつ何時でも本当に怖かった。アブドーラ・ザ・ブッチャー氏は、ファンに愛される悪党だったが、シン氏はファンに恐怖を与える悪党。同じ悪党でもある意味、対極にいた。いがみ合ってはいなかったが、微妙な距離は縮まらなかったようだ。

記者としての初取材は、成田空港でのシン氏の来日レポートだった。「ハウ・ドゥー・ユー・ドゥー?」と、笑顔で近寄ったのだが、当たり前のように蹴り飛ばされた。その時にも手にはサーベルが握られていたように気がする・・・。

シン氏は空港の記者会見でも、よくサーベルを口にくわえていた。「飛行機に持ち込めるのか?」と、誰でも疑問に思うだろう。シン氏には「ハタリ、ハタマタ!」と一蹴されたが、どうやら「日本にも私の信奉者はいる。普段は預かってもらっている」ということだったらしい。

シリーズの合間、新日本プロレス事務所を訪れた関係者のお子さんが、保管されていたシン氏のサーベルを発見。「シンのサーベルだ!」と大喜びで遊んでいたところ、うっかりして先端を曲げてしまった。次期シリーズ、大暴れするシンのサーベルの先端は少し変形したままだった。きっとインド人もビックリだったはず。

引退してもシン氏は日本にも友人が多く、茨城・つくば市には親類が「シンのカレー屋」を開いている。

数年前、来日中のシン氏がいるということで、恐る恐る訪れると、現役時代は絶対見られなかった笑顔で、歓待してくれた。ホッとしたが「あの頃は、恐かったですよ」と語りかけた途端、表情が一変し、コブラクローで首を絞められてしまった・・・。

今では、カナダで資産家として暮らすシン氏。地元の発展に貢献し、シン氏の名前がつけられた学校や通りができている。「サーベルは?」と聞くと「今は持ち歩かない。大切に飾ってある」と笑っていた。

柴田惣一 (プロレスTODAY編集長)

「プロレスTODAY編集長」であり「プロレス解説者」。
〝千のネクタイを持つ男”の異名もあり。
テレビ朝日「ワールドプロレスリング」、サムライTVでプロレス中継の解説。
今日も一緒にプロレスを楽しみましょう!

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