【今日子のプロレス今日この頃】⑤「抱きしめてあげたい❸西村修(その2)」
お酒の好きな西村さんとは、飲みながら、いろいろな話をします。
プロレスの事、世界中を旅した事、元宝塚のトップスターに惚れられた話など、興味深い話をたくさんしてくれます。
印象に残った話も多いのですが、その中からいくつかご紹介します。
海外遠征に行く直前、ファンから激励の言葉と共に、お母さんが重い病気になってしまったと書かれたファンレターが届いたそうです。
今のようにメールも携帯電話もない時代。
しかも渡航前で、準備や各種あいさつ回りなど、多忙を極めていた時期。
それでも、出発前日に、新日本プロレス道場近くの等々力渓谷にある、万病に効くという湧水を、ペットボトルに何本も汲んで、手紙の住所を頼りに、そのファンの家まで運んで行ったというのです。
「夜中だったので、玄関の前に、メモを添えて置いて来ました」
朝、起きてビックリしたでしょうね。
笠地蔵が来たのか!? と。
翌日、遠征に旅立ってしまい長期間、海外に滞在。
その後、病気のお母さんはどうしただろうと気にはなっていたものの、時間だけが過ぎてしまった。
帰国後、事務所に行ったら、そのファンから手紙が来ていたそうで「お母さんは結局、亡くなってしまったけれど、でも湧水を飲んで、とても感謝していました。遠征前の忙しい時に、ありがとうございました」と書かれていたそうです。
当時、各選手が、イメージアップのためか、いい話やエピソードを競って出していた時期でした。
「その話、すればいいのに」と勧めたのですが「これは、その子と自分の話です。ひと様に言う事ではありません!」とキッパリ言い切ったのです。
でも、時空を超えて、私が書いちゃいました(^_^;)
正直、スマンかった。
でも、きっと西村さんは「仕方ありません」と苦笑する事でしょう。
他にも、自殺未遂のファンを励ますため、かなり遠いところまで、何時間もかけてわざわざ出向いたり(もちろん取材等ではありません)人知れず、善行を重ねています。
ネットが一般的になったばかりの頃、あるファンが、西村さんの名を語り、人生相談のサイトをやっていたそうです。
真面目に回答するので、それが評判となっていまい、会社の知るところとなり、警告したと言うのです。
その人は「本当に申し訳ない。どうぞ訴えて下さい」と全面謝罪したとか。
ところが、西村さんは「ちゃんと答えているのですから、別に構いませんよ。どんどんやって下さい」と返答したと言います。
肝が据わっていますね。
普通ならギャーギャー言うでしょうに。
物事に動じないと言うか。
「怖いものは何もないです。死んじゃう訳じゃないんだから」
ガンを乗り越えた人間は強いです。
その生死感は、もはや達観していると言っても良いと思われます。
(続く)
今は議員でもあるので、「抱きしめ」はやめておきます。