【俺達のプロレス名勝負列伝・第10回】111秒の人生ドラマ(船木誠勝VS鈴木みのる 1994.10.15パンクラス)

新旧洋邦・数々のプロレス名勝負を独自視点で取り上げていく連載「俺達のプロレス名勝負列伝」。
第10回は1994年10月15日パンクラス・両国国技館大会で行われた船木誠勝VS鈴木みのるのシングルマッチです。

1993年、藤原組を離脱した元藤原組の船木選手と鈴木選手ら若手達は理想のプロレスを求めて旗揚げしたのがパンクラスでした。「完全実力主義」を標榜し、無駄を極限にまでそぎ落とした肉体と刃物のように切れ味鋭い打撃や関節技の応酬、秒殺試合が連発し、様々な格闘技のエッセンスを採り入れた「ハイブリッド・レスリング」と呼ばれるスタイルで旗揚げ以来注目を集め時代の寵児となりました。

旗揚げ当初のパンクラスの二枚看板は船木選手と鈴木選手です。二人は同い年で、新日本プロレス時代からの盟友であり、ライバルでした。ちなみに船木選手が鈴木選手の3年先輩です。

旗揚げ一周年記念興行となったこの日のメインイベントで組まれたのがこの対決でした。試合はいきなり船木選手がスライディングで飛び込んだところを鈴木選手がかわし、マウントポジションの攻防や差し合い、関節技の応酬など目まぐるしく動きましく、息つく暇もない展開となり、最後はマウントポジションからバックを取ってからのチョークスリーパーで船木選手が勝利を収めました。試合タイムは1分51秒(111秒)での秒殺勝利に場内は歓声に包まれました。

試合後、船木選手も鈴木選手も涙を見せました。理想のプロレスがやりたくて、新日本、UWF藤原組と彷徨った二人だからこそわかるその苦労と達成感。両国国技館は感動空間と化しました。この試合は1990年代のプロレス・格闘技界における屈指の名勝負として後世に語り継がれることになりました。

船木選手はその後、ヒクソン・グレイシー選手に敗れ引退し、パンクラスを離脱しましたが、2007年に復帰すると総合格闘技をへて、2009年にプロレスに復帰しました。一方の鈴木選手は怪我に苦しみ、一度は引退勧告もされましたが、2003年にパンクラス・ミッションの一員としてプロレス復帰すると、新日本・全日本・ノアとさまざまな団体でトップレスラーとして活躍し、現在では「プロレス王」と呼ばれるほどの地位に君臨しています。

そして、二人の理想郷だったパンクラスは素手とレガースのUWFスタイルからオープンフィンガーグローブと素足(もしくはシューズ)のMMAスタイルに変貌し、総合格闘技へとシフトチェンジしていきました。

しかし、パンクラス創設者である船木選手と鈴木選手は紛れもなくパンクラスの功労者であり、人生ドラマが凝縮された二人の一戦はパンクラス史上上位に入るベストバウトを残したことは揺るがない事実なのです。

 

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