【今日子のプロレス今日この頃】⑥「抱きしめてあげたい」❹鈴木秀樹(その2)
飲み過ぎてしまった女性を介抱してくれた事もあります。
宴会の帰り道、路上で気分が悪くなってしまった女性。
知らん顔してそそくさと帰る人もいる中、鈴木さんは、電柱にもたれかかる彼女の前に立って、通行人の好奇の視線から、遮断してくれたのです。
関わりたくないという気持ちを持っても仕方ない状況の中、鈴木さんは嫌な顔ひとつせず、彼女の吐き気が治まるまで、盾になってくれました。
こういう対応、まさに「大人の男」ですよ。
その後、彼女が鈴木さんの大ファンになったのは言うまでもありません。
注意する事があっても、エスプリを効かせて言ってくれます。
「ダメ」 「やめた方がいい」という言い方ではなく「怪我したところが痛いからって酒飲んでばっかりじゃ、レスラーですよ!」と、私の飲み過ぎをやんわりたしなめてくれたり。
とにかく、すべてが大人なんです。
実は鈴木さんは、生まれつき右目が見えないそうです。
小学校の時は、野球をしていたそうですが、ボールが見えないので断念したと言います。
だから今は、野球ではなくサッカーが好きなのかな、なんて勝手に想像しています。
しかし全く、苦にしていないのです。
「みんな何かあるでしょ。大なり小なり。みんな五体満足じゃないんで」と意に介さない。
達観していると言うか。
でも、最初から悟った訳では決してないと思います。
ここまで来るのに、特に幼少期には「悲しい思いや辛い思いもたくさんして来た」と思うのです。
なのに、そういう事は一切口にしません。
あれだけ明るく言えるというのは、本当にすごい事。
彼の心の強さは、本物です。
ひねくれた風を装っていますが、本当は純粋で心根の優しい人。
照れ隠しで、ふてぶてしい言動をしているのかも知れません。
「抱きしめてあげたい」と思いました。
実は、私も怪我が長引いて、もうこれ以上の回復は見込めないそうで
後遺症が残ってしまったようです。
痛いし、辛いし、悲しいし、落ち込む事も多いです。
でも鈴木さんの「誰でも何か、少しぐらいあるでしょ」という言葉で、泣いても治らないのだから、現状を受け容れて「折り合いをつけて暮らして行くしかない」と思えるようになりました。
少し救われたような気がします。
師匠の故・ビルロビンソンさんも右目が見えなかったと言います。
不思議な縁で、導かれた師匠と弟子。きっと絆は固かった事でしょう。
大技の連発が多い、最近のプロレス。
もちろん、すごいし、素晴らしいと思います。
ですが、一撃必殺の技の魅力は何とも捨てがたいです。
人間風車。これからも、この技を大切にしていただきたいです。
そしてそろそろ、大日本のタイトル戦線にも絡んで来るのではないかと
ファンの期待は高まっています。
大人のプロレス、本物のプロレスを魅せて下さい。
(この項終わり)
「抱きしめ」は未遂です。
うっかり抱きしめたら、関節を取られそうなので・・・。