【編集長コラム】「金網の鬼・ラッシャ―木村さん こだわりの髪型」

デスマッチの流血戦を見るたびに〝金網の鬼〟ラッシャー木村さんを思い出す。

2010年5月24日に亡くなった木村さん。全日本プロレス時代のユーモアあふれるマイク・パフォーマンスで親しまれたが、国際プロレスのエースとして金網デスマッチで奮闘する勇姿が忘れられない。

日本マット界初の金網デスマッチに臨み「ハハシ、ハハシ、ハシハシ・・・ハハシ」という独特の息遣いでファイト。持ち前のラッシングパワーでドクター・デス、オックス・ベーカーら悪漢外国人選手を痛めつけた。

流血が激しくなり「あまりにも凄惨な場面のためお見せできません」というテロップが流れ、優雅に泳ぐ白鳥の映像が映し出された。ただ、音声は流れていた。木村さんの悲鳴、うめき声。白鳥の映像とのギャップは、今でも忘れられない。

真面目、実直、温厚。木村さんを悪く言う人はいない。口数は少ないが、いつも誠実に答えてくれた。「その髪型、パンチですか?」という何気ない問いかけに「いや、あのですね、これはパンチではなくアイパーなんです」「え、パンチとどう違うんですか?」「難しいことはわからないんですけれどもね、でもパンチではなくてアイパーなんです」。

こだわりの髪型だったようだ。後日、理容店で聞いたことを木村さんに伝えた。「パンチはペタンとチリチリになるのに対し、アイパーはやや大きめのカールなので、ちょっとフワッとした感じになるみたいです」。

すると木村さんは嬉しそうに「そう、そうなんです。だからね、アイパーなんです」と微笑んだ。「でもね、よくタクシーに乗車拒否されるんです。怖い人に見えるんでしょうね。まあ仕方ないですね」と、少し寂しそうに笑った。

また、木村さんは愛犬家で知られていた。新日本プロレス参戦当時、心ないファンから自宅に嫌がらせを受け、愛犬の熊五郎が円形脱毛症になった事をとても心配していた。「犬はいいですよ。本当にかわいい。恩も義理も忘れないですよ。犬は裏切ったりウソついたりしないから」と、ボソッとつぶやいた。

それ以上の事は決して語らなかったが、木村さんの苦難の人生を垣間見たような気がした。 木村さん、天国で熊五郎と散歩していますか。楽しんでくださいね。


※ジグザグジギー宮澤聡氏所蔵のプロレスカード

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