【編集長インタビュー】「議員レスラー」西村修が語る・最終回「海賊みたいでした」

西村修 002

 

――橋本真也さんは「人の何倍も食べて飲むのがプロレスラーだ」と、日ごろからおっしゃっていた。豪快な酒を飲んでの武勇伝がいっぱいありそうです

 

西村 酒席では紳士でしたね。周囲に気をつかってくれるんです。「みんな、楽しんでるか?」って。親分肌なんですよね。グチャグチャに怒った後にも「悪かったな」とおこずかいまでくれた。

 

――アフターケアしていましたよね。優しい人でした

 

西村 だから、みんな付いていくんです。信仰心も強かった。四国に崇拝している先生がいらっしゃって、時間ができると訪ねていました。滝浴び修行もしました。橋本さんがリングイン知る時に、体の正面で独特の斬るポーズをしていましたが、あれは正式な所作だそうです。

 

――西村さんも精神修行に詳しい。橋本さんの修行によく同行されていました

 

西村 一緒に連れて行ってもらいました。ケガもなく過ごせたのはご利益だったんでしょう。あと、橋本さんといえば忘れられないのが、犬ですね。

 

――道場で飼っていた犬ですか?

 

西村 かわいいうちは家に連れて帰るんですが、大きくなると道場にほったらかし。それでも、犬に怒るんです。犬がおびえてしまって。犬って本当に「うわ~、困った」って顔するんですよ。橋本さんが道場にやってくると、物陰に隠れて「うわぁ~、来ちゃった」という表情を浮かべる。橋本さんがいないときは嬉しそうだった。

 

――犬に関しても凝り性なんですかね。何事も気持ちが入っている時と、無関心になった時の落差が大きかったんでしょうか

 

西村 任侠映画とかVシネマが大好きで、カラオケからファッションまで影響を受けていた。愛用していた独特の詰襟のジャケットも映画からです。普通にネクタイを締めるよりも似合っていましたね。とにかく、なりきっちゃうんで、時には迷惑しまいた(笑い)。

 

――「レスラー」という四文字を体現しているのが橋本さんだった

 

西村 海賊みたいでした。胸張って見栄張って豪傑でした。私が橋本さん始め昭和のレスラーも見ているぎりぎりの世代でしょうね。すごい方々でした。だから、いい意味でも悪い意味でもいまだに引きずっています。あの人たちをそばで見ていたら、こじんまりとしたサラリーマン感覚になりませんよ。

 

――伝説に事欠きません

 

西村 橋本さんは武藤敬司さんや蝶野正洋さんほどには身長に恵まれなかった。だから「アイツらに負けないためにはこうする」という思いがあった。体育館に用意してあるスタッフ用の弁当を頂いて食べていました。

 

――選手用ではないですよね

 

西村 「お前、何を食っているんだ」と色んな人に言われていましたが、全くひるまない。「いや、体を大きくするためです」と堂々と答えていた。となれば、先輩方も何もいえません。マネしたくてもマネできない、人間離れした人でした。常識も感性も感覚も人生観も、すべて超越した人です。天国の橋本さんに改めて感謝したいですね。「色々とお世話になりました」と。(終わり)

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