【編集長コラム】「ジェイク・リーの魅力」

3冠奪取こそならなかったが、全日本プロレス王道トーナメントに優勝するなど、いよいよ躍進目覚ましい「答はイエスだ!」ジェイク・リー。冷静沈着でクールなイメージが強かったが、ここにきて殺気も加わってきた。

現在は、激しいサバイバルレースが展開中の2019世界最強タッグ決定リーグ戦に野村直矢とのコンビで出陣している。タイプの違う2人が、お互いのライバル意識を内に秘め切磋琢磨しており、いよいよ楽しみでならない。

プロレス力は人間力とばかり、自分磨きに積極的に取り組んでいるジェイクは先日、東京・新橋演舞場で上演されたスーパー歌舞伎Ⅱ 「オグリ」を観劇し、市川猿之助の世界に酔いしれた。伝統芸能の古典的な様式美に宙吊りや電飾、映像効果、巨大水槽など今風の要素もプラスされたド迫力の舞台は、きっと、いい刺激になったハズ。

観客席には中高年のマダムが目立つ。突如、現れた長身、ハンサムのジェイクにざわつき「モデルさんなのかしら?」「素敵な殿方がいらしてますわよ」「あら、お近づきになりたいわ。どちらのご子息かしら」と、ヒソヒソ話が会場ロビーや客席のアチコチから聞こえて来た。

にこやかな微笑を浮かべるジェイクに「あの方、どなた?」と、後からコッソリ聞いて来たご婦人もいた。「全日本プロレスのジェイク・リー選手です」とお伝えすると「あらまあ、プロレスラー? もっと強面のイメージがありますけど、あんな二枚目がいるのですね」と驚いた様子だった。

「プ女子」が増えているが、中高年の女性ファンは、まだまだ少ない。ジェイクの魅力は新たなファン層の開拓につながりそうだ。

観劇を終えたジェイクは「スーパー歌舞伎、初めてでしたが、古典芸能に新しい要素も取り入れていて、温故知新というか、素晴らしい。とても楽しかったし、面白かった。お客様を楽しませるというエンターテインメント、すごく参考になった。発信力が問われる時代ですから、強さだけでもダメですし、口だけでもダメですし、総合力、創造力が必要とされている。そういう点からもすごく勉強になった」と満足げだった。

当初は歌舞伎界から猛反発されたというスーパー歌舞伎にも「新しいことを始めるのは大変なこと。応援だけではなく、反対や批判もたくさんあったはず。けど、それを乗り越えてこんな素晴らしい舞台になったのだから、ドラマチックで感動的」と共感した様子だ。

この日の舞台だけでなく、ここまでの道のりや関わった人たちの努力にも思いを馳せていたジェイク。気配り、配慮のできる男にとって、この日の経験が、必ずやリングに反映されるはず。

思えば現代のプロレスは、ベースとなる昔ながらの古き良き闘いの要素に、今風の新しい入場シーンや個性的なリングコスチュームなど、華やかさが加味され、スーパー歌舞伎との共通点も多い。

元よりジェイクは自己プロデュースにも励んでいる。デザイン性に富んだリングコスチュームは、動きやすさも兼ね備えている。入場テーマ曲の選曲、試合はもちろんのこと、オフザリングでも積極的な情報発信を心掛けている。

人の集まる場所に行き顔を覚えてもらう、普段着もおしゃれする、子供にも丁寧に接する…常に考え、行動しているようだ。また、話をしていても、どんな内容であっても決して否定的に捉えない。第一に相手を尊重する姿勢が見て取れるのは、人として成熟している。

どんなことから興味を持ってくれるかわからないのだからと、日頃から自覚を持った言動を心がけているという。まずは会場に来てもらうことだ。

どんな素晴らしい試合も、見てもらわないことには始まらない。プロレスに目をむけてもらいたい、プロレスを好きになってもらいたい。自分のことだけではなく、全体として考えているところも素晴らしい。

観劇後に軽い食事後、ジェイクは24時間オープンのジムへ向かった。スーパー歌舞伎に刺激を受けた後にトレーニング。いろいろなことを吸収したいという意欲にあふれ、何とも充実した一日だったようだ。

リング上だけがプロレスではない。リング上もリング下も、すべてをひっくるめてジェイク・リーから目が離せない。

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