猫と酒をこよなく愛する“鬼武者”佐藤耕平。その男、「おじさん」にして「怪物」なり

「今日のおじさん♪」 「今日の猫ちゃん♪」

インターネットの片隅で、一人の男が、自らの姿と、愛する猫の写真を、朴訥な言葉と共に発信し続けている。

そこに映し出されるのは、猫と酒をこよなく愛する、穏やかな笑みを浮かべる「おじさん」の姿。

しかし、その「おじさん」が、一度リングという名の戦場に立てば、日本プロレス界でも屈指の、冷徹にして非情な「怪物」へと変貌することを、我々は知っている。

その男の名は、佐藤耕平。身長193cm、115kgの巨躯。その体躯から放たれるエルボーバットは、一撃で相手の意識を刈り取り、必殺のパイルドライバーは、マットに深々と突き刺さる。

その瞳には、喜怒哀楽の感情は一切浮かばない。ただ、目の前の敵を破壊し、制圧するためだけに存在する、反逆の鬼武者。

しかし、その実像は、あまりにも多面的で、一言では言い表せない。プロレスリングZERO1の旗揚げメンバーとして、破壊王・橋本真也の魂を間近で浴び、新日本、全日本、ノア、大日本というメジャーからインディーまで、全てのリングを渡り歩き、その爪痕を深く刻み込んできた。

そして今、その男は、天龍源一郎の魂が息づく「天龍プロジェクト」のリングで、重鎮として、その強さの「証明」を続けている。

佐藤耕平とは、一体何者なのか。そのSNSで見せる柔和な「おじさん」の顔と、リングで見せる冷酷な「鬼武者」の顔。

その巨大なギャップの奥底にこそ、この男の真髄が隠されている。

これは、特定の団体に忠誠を誓うことなく、ただひたすらに「強さ」と「闘い」を求め続けた、一人の”反逆する武人”の物語である。

■怪物の誕生前夜。破壊王・橋本真也が命じた、肉体改造

佐藤耕平の原点は、プロレスではなく「格闘技」であった。1998年、全日本アマチュア修斗選手権ヘビー級で優勝。プロ修斗でも2戦2勝。

その実績を引っ提げ、2001年、旗揚げ間もないプロレスリングZERO-ONEの門を叩いた。

しかし、当時の佐藤は、長身だけが目立つ、細身の体つきであった。「痩せこけた」とまで言われたその姿は、プロレスラーとしての凄みには、まだ程遠かった。

それでも、その才能の片鱗は、隠しようがなかった。旗揚げ年の「火祭り」第1回大会、若手でありながら、あの”炎の戦士”大谷晋二郎と決勝を争い、準優勝という結果を残したのだ。

その才能を見抜いたのが、破壊王・橋本真也であった。佐藤は、橋本の付き人として、その強烈すぎる個性の全てを、間近で浴び続けた。

橋本とのタッグで、プレデター、トム・ハワードといった、規格外の外国人選手たちと対峙し、その強大な力の前に、何度もマットに叩きつけられた。

それは、佐藤にとって、最大の試練であり、最高の学び舎であった。

だが、佐藤は伸び悩む。2004年、スランプ。その姿に、業を煮やした破壊王が、非情なる命令を下す。「アメリカへ行け」。

無期限の武者修行。それは、生半可な覚悟では帰ってくることすら許されない、片道切符であった。

そして、約3ヶ月後。アメリカの荒波に揉まれ、日本へと帰還した佐藤の姿は、我々が知る「痩せこけた」青年ではなかった。

体重は115kg。鋼のような筋肉をその身に纏い、見るからに「怪物」と呼ぶにふさわしい、堂々たるヘビー級の肉体へと、その姿を変貌させていたのだ。

その”成果”は、すぐにリング上で証明された。2004年、第4回「火祭り」。田中将斗、大谷晋二郎といった団体の顔を次々と撃破し、決勝で大森隆男と激突。

この一戦のために温存していた必殺の奥義“ポールスター”(変形ノーザンライトボム)を炸裂させ、見事に初優勝を遂げた。

破壊王が託した未来は、この瞬間、確かに、音を立てて開花したのである。

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