ウルフアロンは揺れる新日本プロレスの救世主になれるか 正念場がやってきた

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

揺れる新日本プロレスの「救世主」となれるか。「五輪金メダル」ウルフアロンに注目が集まっている。

棚橋弘至社長の現役引退マッチに沸いた新日本1・4東京ドーム大会で、デビューしたのがウルフだった。EVILからNEVER無差別級王座をいきなり奪い取り快進撃が始まる。

花道で柔道着を脱ぎ捨て「坊主頭のプロレスラー」ウルフアロンとしての入場で、一気にファンの心を掴んだ。投げ技の切れ味に、悪の殺法にも屈しない精神力…ファンの支持率は右肩上がり。的確なコメントも見事だった。


Ⓒ新日本プロレス

ところが2・11大阪大会で成田蓮にわずか128秒でフォール負けを喫した。シングルマッチ2戦目にして初黒星。Tシャツを脱ぐ間もない惨敗だった。

まさかまさかの光景に、超満員札止めだった会場はショック状態に陥ってしまう。ウルフ自身もうつろな目のまま無言で引き揚げた。


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この大会では、IWGPヘビー級王者・辻陽太が「爆弾発言」を放っている。チャンピオンとして新日本を思えばこその親会社への注文だったが、オーナーからは辻が意図しないSNSが発せられ、一部の選手からも異議が飛び出している。辻とオーナーが激しい論戦を繰り広げたようだ。

誰もかれも新日本をより大きくしたいという熱い想いは共通している。立場によって受け止め方は変わって来るのだ。

元より選手がより闘いがいのあるリングを求めて、移籍していくのは自然なコト。これまでにも多くのスターレスラーたちが、新日本から巣立っていった。

前田日明、高田延彦らがUWFを立ち上げ、長州力、谷津嘉章らがジャパンプロレスを設立、武藤敬司らが全日本プロレスに移籍し、中邑真輔、オカダ・カズチカらが米プロレス団体へ…その後復帰した者もいるが、歴史は繰り返される。

内藤哲也、BUSHI、EVIL…辻は共に闘ってきた「同僚」たちの離脱には、黙っていられなくなったのだろう。会社の選手へのスタンスなど、以前から鬱々たる思いを抱えていたが、チャンピオンとなりV1を果たしたことで、覚悟の発信となったようだ。

辻の決意のアピールそして髙橋ヒロムの「送別セレモニー」で、いささかインパクトが薄れてしまったが、辻VSジェイク・リーのIWGPヘビー級戦は熱闘そのもの。王者・辻の懐の深さと新時代の「名勝負数え唄」の幕開けを告げていた。


Ⓒ新日本プロレス

ピンチはチャンス。新日本はこの繰り返しだ。トップ選手が抜ければ、くすぶっていた選手や若手レスラーはのしあがる機会を掴める。

つまずいてしまったウルフにとっても同様だ。何度でも立ち上がってこそレスラー。負けを知らなければ、本当の強さは身に付かない。一直線にスターになった者などいない。

順調に出世の階段を上がっていくスターには、ファンの気持ちは乗りにくい。やられて、マットに大の字になり、地獄の底を覗いた後に、不屈の闘志で這い上がって来る姿にこそ熱くなれる。人間力にファンは魅かれるのだ。

ウルフはどう這い上がってくるのか。早速、リベンジの舞台がやって来た。「NEW JAPAN CUP 2026」(3月4日、東京・後楽園ホール大会で開幕)に参戦。1回戦の相手がドン・ファレである。

ファレは超大型の悪党戦士であり、難敵そのものだが、ウルフが仕切り直しの再出発を披露するには最適の相手と言える。

決勝戦(3月23日、新潟・アオーレ長岡大会)まで勝ち上がり、優勝すれば「SAKURA GENESIS 2026」(4月4日、東京・両国国技館大会)で、IWGPヘビー級王者・辻に挑戦できる。

ウルフのサクセスストリーの舞台は用意された。あとは勝利のみ。厳しい闘いの連続だが、五輪金メダリストの胆力は底なしのはず。

シリーズ中に満月の夜はないが、勝利を掴み取り、月に向かって狼の遠吠えのような激しい雄叫びを聞きたい。

正念場を迎えたウルフアロンに刮目せよ。(敬称略)

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