【新日本】大張高己社長インタビュー<第1弾>AEWとの禁断の扉、全選手が完走した『G1』、感謝のシンニチイズム、涙の9月声出し大会の裏側を明かす!

②G1 CLIMAX32の振り返り(コロナ禍でも参戦選手が完走できた要因や感じた事)


©新日本プロレス

――真夏に行われた『G1 CLIMAX32』の振り返りということで、私が一番すごかったなと思うのは、コロナ禍でも参戦選手が皆さん完走できた事。これは企業努力の賜物であって、なおかつ選手、スタッフ全員が一致団結しないとできなかったことだと思うんです。これを代表者の大張社長として、どのようにそれをやってきたのか。みんな一致団結して乗り切っていくための秘訣みたいなものは、振り返ってみていかがですか?

「これは、企業秘密ですね(笑)」

――(笑)。しかし間違いなく思いっきり沢山の感染対策を講じたわけですよね?

「そうですね、順を追って話すと、今回のG1 CLIMAXは人数しかり、あと海外から渡航してくる選手が半分いましたね。トータルでは28人の参戦、過去最多クラスだと思います。あとは、原則全選手を全大会でご覧頂ける、というポリシーでした。なぜかというと、コロナ禍で止まってしまった来場習慣をもう1回皆さんに呼び起こしたいというか、もう1回習慣を再起動してもらいたいというのがあったので、これでもかというぐらいに閾値を大幅に超えるものを、来場するかどうか迷うんじゃなくて絶対に行くという大会にしたかった反面、さっき言った人数の面、海外から半分来るということ。それから常に毎日戦いがある、毎大会全選手に出番がある。これはコロナが一番喜ぶ、コロナリスクが最も高いシリーズなんです。連戦で欠かすことができない、一人も欠場できない。だから、覚悟を決めましたね。普通にやったら絶対どこかで感染者が出でしまうと。

 もちろんケガもあるし、あと海外から渡航してこれないというのも大きなリスクです。あのときはまだPCRの検査が必要だったんです。PCRがもし陽性だった時の対応など、いろいろ考えて対策は打ったにしろ、来れないリスク、離脱するリスク。そもそもプロレスとしてのケガのリスクなどがある中で、コロナのリスクがあって、なおかつ1大会じゃない、全大会完走しなきゃいけない。しかも50周年、5万人のご来場を目標にしますと公約もして、退路を絶ったという状況に自分で追い込んだ大会でしたね。」

「私はレスラーではないので、戦いをどうこうということは、言ったこともないし言うつもりもないです。だけど、選手、社員、全員にお願いしたのは、「とにかく完走しよう」ということです。心の面で言うと、完走するという目標にみんなで一致団結したということ。あとは、2年半前のパンデミックが始まったときから、私はコロナ対策のトップでずっとやってきたので、いろんな検査であったり、予防策も発症したときの対応も、ずっと陣頭指揮を執ってきて、いまだにそれをやっているんですけど、その経験、ノウハウが結果的には生きたのかなと思いますね。

 みんなにお願いしたのは、申し訳ないけど、世の中は緩和されているけど、外食には行かないでくれ、お弁当を出すからと。そして、手洗いと、今まではうがいはやってなかったんですけど、うがいもルール化して、バックステージの洗面所にコップとうがい薬を置いてくれと。あとはマスク。まさに私、マスク警察です。マスクも全員着用で、海外から来ている選手は、私もこの間イギリスから帰ってきたばかりですけど、マスクを朝忘れました。それぐらい習慣が違うから、悪意がなくてもしないケースもあるんですけど、とにかくしてくれ、常にしてくれ、とにかく完走しようと。それで5万人行ったらみんなにボーナスだと話しました。マスク警察だと言ったのは、僕はなるべく試合に帯同して行くんですけど、バックステージとか練習時間に顔を出して、マスクをしていない外国人のレスラーがいたから英語で、とにかく完走しないといけないからみんなマスクしてくれってお願いしたり、怖い選手にも勇気を持って声をかけたり。」

――よく皆さんそれを守ってくれましたね。


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「100%守ったかというとそうじゃないかもしれないです。経営の話をしちゃうと、経営者から見えないところが9割9分だと思うんです。その9割9分の見えない面を何が突き動かすかって、自分も共感できたゴールとかビジョンだと思うんです。完走したいよね?に反論する人はいないじゃないですか。それはファンの皆さんもそうです。だから、そのシンプルなフレーズでみんなの気持ちを1つにできたことがこの完走につながったのかなと思います。これまでで初めて言いましたよ、シリーズ完走しようだなんて。だって当たり前な目標すぎて。でも今は、なかなか難しい目標でもあるじゃないですか。あとは京都の九頭竜大社にお参りに行きました。」

――そうだったんですね。その効果はてきめんですね。

「八方塞がりを打破してくれる神様なので。」

――なるほど。あえてお参りにきちんと行かれたんですね。

「そうです。日本電産の永守会長が困ったときに必ず行くというところに行って、そこで9周回るんですよ。ちなみに、最後におみくじを引くんですが、そこで出てきたのが、先祖を大切にしろ、だったんです。私たちにとっては先祖って1人しかいないですね。鳥肌が立ちました。」

――そうですね。神ですよね。

「そういうできるところはやりました。自衛隊に導入されているという空気清浄機を巡業バスや控室に導入してみたり、とにかくできることは全てやりました。」

――すごいですね。大張社長を筆頭に皆さんがワンチームになって、一つのゴールに向かって、本当に完走できたというのは、選手、スタッフの皆さんが、外食もそれぞれも地方においしいものもある中で我慢していって、弁当で乗り切ったというのは、これはプロフェッショナル魂ですね。

「準備が結構早かったというか、私たちはもう去年の段階で医療用の抗原検査のキットを数百入手していて、全選手がすぐさま検査でき、自宅でもすぐ検査できる体制をとっていたり、いろんなプロスポーツの世界のノウハウや医療のノウハウがあるので、私ももしかしたらお医者さんより詳しいんじゃないかと思える部分があるぐらい知識が増えてきてますけど、そういうのがあって、コロナと向き合ってきたのはあると思いますね。シリーズ中に熱が出た人は何人かいます。それをどういうルールで復帰させるのか?熱中症になった人もいました。だけど検査でクリアになって、戻して、陰性だったから拡大しなくて、というのが、その判断基準みたいなものも自然と体に染み付いていたというのがあるかもしれません。そういうときに限って私が現場にいて速やかに判断できたのはラッキーだった部分もあります。」

――どんな大会でもいろんなかたちでコロナ感染者が、試合もできないというぐらいになっていた状況下で、ロングランシリーズとして皆さん完走されたという。

「選手、社員を称えたいですね。」

――そのときの社長って本当に大変だったんだろうなと思います。選手や社員の皆さんを率いて、この状況下で全員で完走できた事はファンもすごい喜んだと思います。その中でジェイ選手が1回欠場になってしまいましたが、あの時の心境はいかがでしたか?

「広島でしたかね。」

――あのときはゾワッとしますよね。

「検査何回やった?とか、どのキットでやった?とか。それで戻せるのか戻せないのか、いつから戻すのか?長野からか?とか、そんな話をしましたね。そして基準をクリアして無事に戻ってきました。」

――G1 CLIMAXというトップ選手が集結するシリーズでコロナ禍での全選手が完走できた、本当に素晴らしいワンチームだったなと思います。


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「当然、野生のライオンのようなものですから、言うこと聞かない選手もたくさんいますし(笑)手懐けることなんてできないけど、まずはファンの皆さんに最後まで闘いを見せるという使命感が一番だったと思います。あとは、興行が大成功ならボーナスだって狙える。でも一言言っておくと、オカダ選手が頂点に立ったじゃないですか。私は今回本当に歴代最も熾烈な戦いだったと思います。もちろん強敵揃いではあるけど、輪をかけてコロナとの戦いもあって、タイトなスケジュールで連戦なわけですよ。シングル、タッグ、シングル、タッグと。それで、私が5万人って言っているわけじゃないですか。というのもある中でみんな戦い抜いて、その頂点に立ったオカダ選手は、歴代最高のG1チャンピオンだと思いますね。だから権利証の話が出たときも、納得感はありました。」

――それぐらいの価値だと。

「そう思いますね。選手、スタッフみんなで戦い抜いた特別なG1だったから、権利証を奪い合うんじゃなくて、これを制した人がドームに進むというのは素直に納得できましたね。」

――あのオカダ発言は社内会議の中では割と満場一致で、そうしよう、という認識になった感じですか?


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「誰が勝ったとしても、その点についてはおそらく反論はなかったでしょう。選手だけじゃない、スタッフも経営も、みんな苦労しているし、この道のりを知っているから。7月からの苦しい戦いを、リング上だけじゃないですからね。全てで我慢して、自粛して、そして大爆発させる、という戦いで、過去歴代最高のチャンピオンだという認識じゃないですかね。」

――もうみんなが、スタッフ含めて当事者でしたもんね。本当に素晴らしいG1クライマックスだったなと思います。

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