【新日本】大張高己社長インタビュー<第2弾>スターダム合同興行、約3年ぶりのイギリス大会、50周年イヤー集大成の1.4ドーム、そして亡き猪木さんへの思いを語る

②イギリス大会(ROYAL QUEST Ⅱ)について現地での反響は?
 日時:2022年10月1日 (土) 〜 2022年10月2日(日)
 会場:イギリス・Crystal Palace National Sports Centre(ロンドン)
 観衆:2,137人(札止め)


©新日本プロレス

ー-次はつい先日開催されたイギリス大会(ROYAL QUEST Ⅱ)についてですが、実際現地に行って、終わってみての感想はいかがですか?

「私は初めてのヨーロッパだったんです。で、英語が通じてよかったなと。普通に生活は困らなかったんですけど。ここで猪木さんの話していいですかね?」

――はい。

「私たちがホテルに着いたのが8時ぐらいで、時差もあったのか、ちょっとうつらうつらしていた深夜ですね。連絡が来て、猪木さんが亡くなったと。行く前から少し状況が良くないというのは聞いていて、ついに亡くなってしまったということで、喪失感で返信もできなかったです。ただふと思ったのは、あれ、みんなここにいるな、と思ったんです。私も、菅林会長も、木谷オーナーもイギリスにいたんです。選手もある程度いてくれて、亡くなったという話があったとき、日本で両国大会で10カウントかなとみんな言っている中で私は、いや、ここでやろう、ロンドンでやってくれとお願いして、手配してもらって、そうしたらありがたいことに、テレビ朝日さんのロンドン支局の方が動いてくれて取材にも来てくださったんです。」

――そうなんですか。


©新日本プロレス Sarah Hatch/@britwrespics

「そう。だから映像、残ってたじゃないですか。あれって現地の私たちの試合用のカメラじゃないんです。テレビ朝日さんのカメラなんです。ロンドン支局から来て撮ってくれたんです。あと10カウントって、どうやら向こうでは習慣がないんですって。ただスタッフが早く行って、リングアナウンサーとかにレクチャーしてくれてやれることになったんですけど、これなぜ私はやろうと思ったかというと、カール・ゴッチさんの鍛錬した蛇の穴は確かイギリスだし、ファンの頃に猪木さんの試合を見に行く度に、猪木さんって要所って出てきて挨拶するじゃないですか。必ず猪木さんが、今年は新日本プロレスが世界に羽ばたく年になると思います、って毎年言っていたんですよ。猪木さんって、お父さんにだったかな?日本一、いや世界一になれ、って言われて育った人なんですよね。ボーダレスなんですよね。ずっと世界的な視野で物事を見てきた人だと思っています。」


©新日本プロレス Sarah Hatch/@britwrespics
 
「それで、猪木さんの訃報、10カウント、これが我々の手でイギリスで行われるというのは、すごく猪木さんとしても、新日本プロレスとしても象徴的なことなんじゃないかなと。変な言い方をしますけど、面子を見ても、導かれてきたような感じがしました。私だけが日本にいるとかではなくて、オーナーまで揃って行っていたんです。実は今月中に猪木さんに会いに行く予定だったんです。ずっと計画と準備をしていて、最短で様々な段取りが完了した9月に終身名誉会長になっていただいて、10月に発表する予定でしたが、それが叶わなかった反面、お前たち、イギリス行ってこいよ、って言われたような気がしたんです。それで10カウントを叩いたら、イギリスでは習慣がないせいか、ファンの皆さんが拍手しながら徐々に立ち上がって、私はお客さんの真正面で見ていたんですけど、拍手が起きて、歓声が起きて、猪木コールが起きて、これは猪木さん主演の映画のエンディングシーンみたいだな、って思ったら、自然と涙がこぼれました。私だけ泣いてると思って振り向いたら、オカダ選手と棚橋選手も泣いていましたね。」


©新日本プロレス Sarah Hatch/@britwrespics

――みんな、感極まったんでしょうね。

「外国人の方々がいる映像って、カンヌ映画祭じゃないけど、映画みたいなんですよ。これが猪木さんの最後か、っていう。日本も素晴らしいんだけど、それがイギリスで行われるという状況も含めて、悲しさと共に、すごく感動したんです。それで試合が始まっていくわけです。」


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――猪木さんの訃報についてはファン、関係者、レスラーの皆さんも、すごく深く思うところがあったと思います。皆さんが異国の地で訃報を聞いたというのも何かの御縁だったのかも分からないというところが、今の話ですごく感銘を受けました。実際そこから試合が始まってやっていくわけですけれども、イギリス大会のお客さんも非常に盛り上がったと思います。

「3年ぶりですからね。異常な雰囲気ですよ。アメリカでも感じるんだけど、ライブに対する欲求が溜まりに溜まっているし、新日本プロレスが3年ぶりというのもあるし、NXT UKって今もう解散しているんですもんね。」

――そうですね。

「やっぱりプロレスに対する欲求って、キャッチレスリングやランカシャースタイル発祥の国ですから、お客さんとしてはプロレスを見たかったけど見れなかったというのが爆発している大会でしたね。」

――実感して鳥肌が立つぐらい。

「立ちますよ、ああいうのを見ると。」

――しかも今回は内藤対ザックというのもありましたし、本当に点が全部線につながって、世界を超えてもきちんと線になっているというのが面白い動きだなと思いました。

「日本の選手に対する期待と人気はすごかったです。もっとホーム感、アウェイ感が出るかなと思ったんです。たとえばオーカーンはイギリスでやっていたことがあって地の利があるんだけど、オスプレイ、ザックばっかりが人気で、もうちょっとみんな冷静に日本のプロレスを見るのかなと思ったら、ドッカンドッカンでした。」

――みんながもう情報を知っているということですかね。


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「オカダ、棚橋、みんなドッカンドッカンで。最初のゲイブ(ゲイブリエル・キッド)の入場でもわいているし。ゲイブも地元ですから、全選手、全試合メインイベントみたいなわき方でしたね。」

――やっぱり飢えていたんでしょうね。新日本プロレスを。


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「あと応援の仕方をみんな試しながらやっていました。みんなで実験的に、これウケたからもう1回やってみようとか、手に取るようにわかりました。2,200人って、大田区(総合体育館)ってフルで入れて4,000とかですよね。あれを半分にしている状態で、半分入れた状態が二千何百人で、あの感じなんですよ。だから大体表情とか見えるんですね。見ていると、みんなビールとか飲みながら、もちろんマスクなんかしないです。あっちは歌を歌ったりするじゃないですか。それをやってみたり、日本式もやってみたり、一番はまりそうなものがどれかって探していたり。ただ、グレート-O-カーンのときはちゃんと、グレート-O-カーン、って。あのままでしたね。」

――歌があるんですよね。


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「初日はメイン、セミ、オスプレイ、海野。海野選手は負けてしまったんですけど、終わってもずっとオスプレイ選手を睨みつけていて。試合中の躍動感もすごいし、体も別人でしたね。生で久しぶりに見たんですけど、起伏がすごい。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、脂肪はほとんどないと思いますね。」

――海野選手は僕ら的にはある意味、今日本に帰ってきてほしい選手かなという気がしているんですよね。

「なんとお父さんがレフェリーとして裁くという。」


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――そうですね。でもやっぱり親子鷹じゃないですけど、海野選手に関しては棚橋選手とスタイルも似ている部分あるし、全然違うところもあるし。

「私はちょっと違うものをもう感じていますね。気性の荒さっていうか。棚橋選手って優しい感じしないですか?本当に優しくて明るいエース。海野選手は尖っているんです。」

――荒々しいですよね。


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「すごく荒々しい、という感じは戦いを通じて伝わりました。目つきもそうだし、負けても引き下がらないという感じがして、見た目は似ているんだけど全然中身は違うなと。棚橋選手には悪いけど、現時点の体つきは、もしかしたら海野選手が勝っているかもしれない。」

――でもまた棚橋選手は1.4までに仕上げてきますよ。


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「仕上げてくるでしょうね。あとメインがオージー・オープンとFTRですね。FTRはすごかった。オージー・オープンもでかくて、あの試合は本当に早く皆さんに見てもらいたいですね。」

――やっぱり大型選手の活躍というのはプロレスの醍醐味としても非常に見栄えがするものだと思います。


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「すごかった。FTRはAEWにいたときにちょっと見たぐらいですけど、そのときの印象の10倍も違いますね。あの試合はすごいですよ。オージー・オープンも体を生かしていて、あと彼らは飛べたりするし、しっかり経験を積んでいる選手で、ストロングのチャンピオンなんですよ。実力もあるし、拮抗しててすごく面白い試合だったんです。結果は皆さんご存知でしょうけど、FTRが勝つわけですけど、中身を見てください。めちゃくちゃ興奮しました。絶対に映像を見ても興奮する。すごいメインでした。」

――ぜひ見たいと思います。2日目に関してはいかがですか?


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「IWGP女子がトーナメント開幕しているんですよね。で、アバ・ホワイトとアルファ・フィーメル(ジャジー・ガーベルト)、どっちもでかい。私と変わらない位、身長があったと思います。185(cm)ぐらいあったんじゃないかな?たまたまホテルが一緒で、絶対レスラーだなって誰もが分かるぐらいで。試合展開もアルファ・フィーメルのほうが圧倒していましたね、見た目もすごいんだけどパワーがあるし、日本のリングにも慣れているし、圧勝してました。」

――1ランク選手がずば抜けているのかなというのもありますね。

「次はカイリ選手とやるんですよね、危ないですよ。これ勝つの難しいですよ。」

――そうですね。体格だけで言うと圧倒的に差がありますから。


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「20センチぐらい違いあるでしょ。体重も30キロぐらい違うんじゃないですか?」

――そうですね。カイリ選手にとっては大型選手との戦いで苦戦するとは思いますけど、でも非常に楽しみです。

「そうですね。どっちが上がってきてもおかしくない感じだな。あとギデオンが日本ではかわいいキャラなんですけど、イギリスだと完全に悪いやつですよね。」

――参戦するマットによってキャラクターが変わるという部分は、選手の見方としても面白い見方ですよね。

「かわいいキャラで、私もよくリツイートとかして応援していたんだけど、向こうでリングの振る舞いを見て応援をやめようかなと。」

――そのぐらい変わっていたということなんですね(笑)

「あれが本心なのかな?本質なのかな?と思って(笑)でもああいう面も見れて面白かったです。オーカーンは、やっぱりイギリスで人気がすごいですね。コロナ禍になって2年は戻ってなかったんじゃないですか?だけどオーカーンのことはみんな覚えているし。あと途中で辻選手が出てきたでしょ。1日目の途中で辻選手が出てきて何事かと思ったら、翌日石井選手とシングルでやっていたけど、辻選手もすごかったです。」


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――やっぱり変わっていますね。

「あの体でとんでもない飛び技をかけたんですよ。前々から知っていたのは、シューティングスタープレスを打てるんです。」


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――運動神経がめちゃめちゃいいですね。

「瞬発力があるんです。彼はアメフトをやってて、あとテコンドーをやっていたのかな。瞬発力と打撃の両方で石井選手を追い込んでいたんですよね。」

――ヤングライオン時代は出さなかった部分を海外に行くことによって、いろんなことを吸収して学び、そこから得た部分を思いっきりぶつけてきているという感じですよね。


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「場外に走っていって、ノータッチの背面プランチャやったんです。映像見てください。めっちゃ興奮するから。ちょっとレベルが違いますね。宝物度合いが全然違います。」

――ますます若手がそういう部分で花開いてきつつあるというのはすごくうれしいですよね。

「それで、最後は内藤、ザックが大声援の中で、なんか内藤選手はアウェイ感があまりなかったんだけど。で、デ・ハポン締めで、なぜかSANADA選手はスーツで登場と。なんでなんだ?と。あれ、この人スーツ着てたかな?って。」


©新日本プロレス Sarah Hatch/@britwrespics

――SANADA選手、スーツ姿またビシッと決まって男前なんですよね。

「イギリス紳士でしたね。本当にみんな大満足、大熱狂で、来ていた方と結構お話をしてたんですけど、もちろんイギリスの方が多いんですけど、フランス、ドイツ、オランダ、ヨーロッパ中から駆けつけてました。そもそもイギリス以外のヨーロッパで僕ら大会をやっていないじゃないですか。なおかつ3年ぶりじゃないですか。絶対行こうと思ってくれていたんでしょうね。フランスから車で来れるんです。知ってました?」

――そうなんですか?

「海底トンネルがあるんです。」

――そんなに大陸側も行き来しやすくなっているんですね。

「4時間半かけて来たとかね。みんな本当うれしそうに帰っていきましたよ。」

――でも異国の地で皆さんが喜んでいる皆さんというのは、また喜びもひとしおですよね。

「そうですね。こういう仕事をやっていたよかったなと。最初は猪木さんの10カウントから始まるわけなんですけど、最後はザックvs内藤で、内藤選手のデ・ハポン締めという、この2大会のパッケージ考えると、新日本プロレスでよかったなと。新日本プロレスで頑張れてうれしいなと思いましたね。」

――いい話ですね。新日本プロレスの50周年の歴史が世界各国に伝わっているというのが感慨ひとしおですよね。

「そう思います。」

➡次ページへ続く

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