“美仙女”の葛藤から素で躍進の岩田美香。団体史上最大のビッグマッチでスターダムを迎え撃つ!

 そして迎えたプロデビュー。しかし、岩田の思惑とは違っていた。団体は、岩田をアイドルレスラーとして売り出したのだ。

「まず最初に福岡から仙台に来たとき、新聞に『センダイガールズに美仙女入門』という記事が出たんですね。なんじゃこりゃ!となりました(笑)。デビューのときもアイドルみたいに売られて。私って男っぽいし、キャピキャピなんかしてないからすごく戸惑いがありました。違和感ありまくりで、納得できないままやっていたと思います」

 さらに追い打ちをかけたのが、新リングネーム募集の企画だった。そこでつけられたのが「白姫美叶(しらひめ・みか)」。

「いま考えたらキャバ嬢かよってくらいの名前ですよ(苦笑)。まあ、応募してもらってついた名前なので、あまりディスっちゃいけないんですけど(笑)。でも正直、当時はきつかった。自分のやりたいプロレスと、やってることが違う。こういうことやりたいんじゃないんだという葛藤がすごくあって、プロレスへの楽しさがほとんどなくなっていましたね」


「写真提供:センダイガールズプロレスリング、撮影:ペペ田中」

 試合にも勝てず、くすぶっている状態。そんな岩田、いや白姫を見かねたDASH・チサコがある提案をしてきた。「シングルで闘って、負けたら改名しろ!」というのがチサコの出した条件だ。勝てばそのまま白姫が続くが、負ければ不本意な状況から解放されるかもしれない。だとすれば渡りに船の条件だろう。が、切羽詰まっていた彼女にはそんなことを考える余裕はなかったようだ。

「あの頃は先輩を好きだと思ったこともなかったし、そんなこと言われて腹が立ちました。名前変えろと言われ反発した自分もいた半面、心のどこかで変えたかった自分もいたんだと思います。それでも試合は負けにいったわけではなく、真剣にやって負けました。結果、リングネームを戻すことになったんですけど、いま思えば負けてよかったなって(笑)」

 岩田美香に戻った岩田美香。橋本とのタッグチーム、ビューティーベアでは何気にビューティーが残っていたものの、岩田は試合で徐々に素の部分を出せるようになっていく。その素の部分こそが、硬派で武闘派の岩田。凄みある殺気に満ちた闘いこそ、もともと彼女のやりたかったプロレスなのだ。

「それまでは、リングに上がったら白姫美香にならないといけないプレッシャーもありました。でも戻してからは、私がやりたいことをやればいいと思えるようになって、自分のなかの芯ができた気がしましたね。そこからようやくプロレスが楽しいと思えるようになったんです」

 だが、楽しさを見出して間もなく、負傷により1年以上に及ぶ長期欠場…。「橋本はもっと強くなっていくし、(仙女の)みんなは前に進んでいくし、それに耐えられなかった自分がいましたね、きつかったです…」


「写真提供:センダイガールズプロレスリング、撮影:ペペ田中」

 欠場中、プロレスから遠ざかった。家族も気を遣ってか、帰省中、彼女の前でプロレスを話題にすることもなくなった。それでも挫折から這い上がり、不屈の闘志でカムバック。試合内容で説得力を重ね、23年1月、ようやく仙女ワールド王座初挑戦のチャンスを得た。キャリアからすれば、かなりの遅咲きだ。

 さすがに一発奪取にはならなかったものの、現時点で同王座には2度君臨。武闘派・岩田の印象をより濃くしていくことになる。とくに昨年、スターダムのワンダー・オブ・スターダム王座も獲得した安納サオリとの連戦は、仙女の枠を飛び出し、武闘派・岩田を外部に向け大きくアピールできたと言っていいだろう。

「自分がやりたいことをやって評価がどんどん上がってきたというのをすごく感じたんですよ。そんな頃ですね、安納と闘うようになったのは。べつに他団体のベルトがほしいわけではなかったけど、安納が持ってるからほしいと思いました。以前は、岩田って弱くて橋本より劣っているイメージ。自分でもそう思ってました。でも最近では、怖くて強いと思われるようになってきた。どうしてなんだろうと考えたときに、自分をそこまでにさせてくれたのが安納だと気づいたんです」

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