“美仙女”の葛藤から素で躍進の岩田美香。団体史上最大のビッグマッチでスターダムを迎え撃つ!
“女子プロレス界の横綱”里村明衣子率いるセンダイガールズプロレスリング(仙女)が3月19日(水)、東京・国立代々木競技場第二体育館にて、2006年の旗揚げ以来最大のビッグマッチを開催する。当日は、4・29後楽園ホールでの引退を控える仙女ワールド王者・里村が橋本千紘を相手に防衛戦。仙女最高峰のベルトを持ったまま現役を退くのか、それとも過去に里村からこのベルトを奪い5度の戴冠歴を誇る橋本が2年半ぶりに奪回し、里村引退後の仙女を牽引していく権利を手にするのか注目される。もちろん、これ以外にもビッグマッチならではのカードが盛りだくさんで、橋本と並び今後の仙女をリードしていく立場にあるのが、岩田美香だ。
いまではすっかり武闘派のイメージが定着した岩田。しかし、デビューから数年間はアイドルレスラー的な注目を浴び、本人のやりたいプロレスとの違いに大きな戸惑いを感じていたという。
そもそも母親が大のプロレスファンで、彼女は物心ついた頃からプロレスに慣れ親しんでいた。家では常にテレビ画面にプロレスが映っており、男女問わず、また海外の試合も自然と目に入っていた。弟もプロレスに詳しくなり、岩田自身「英才教育を受けていた」というくらいプロレスが身近にある状況だったのだ。ところが、かえってこれが彼女の気持ちからプロレスを遠ざけていたという。しだいにプロレスを避けるようになったのだ。
「写真提供:センダイガールズプロレスリング、撮影:ペペ田中」
それでも、中学生になり親に連れられ見に行った初めての生観戦、NOAH博多スターレーン大会で、彼女の運命が変わることになる。
「嫌々行ったんですけど、これがメチャクチャおもしろかったんですよ。プロレスラーってカッコいいなと思ったし、雰囲気や音まで、すべて一発でのめり込んでしまって。会場内にポスターがいろいろ貼ってあったので、次はこれ行きたいとか親に言ってました(笑)」
そのときからすでに、自分もプロレスラーになると心に決めた。レスラーになるには女子プロレス団体に入らないといけないとも感じていた。そこから女子プロにも興味を持ち、博多スターレーンでさまざまな団体をライブで見るようになっていった。
中学卒業と同時に入門するつもりでいたのだが、高校は出てほしいという家族の希望もあり、学校に通いながら近所の格闘技道場で練習を始めた。さいわいなことに、その道場にはプロレスのリングがあり、九州で活動するローカル団体の選手もトレーニングに使っていた。受け身やロープワークなど、入門前から体験できたのである。
彼女の志望は、仙女一本だった。生観戦した女子団体のなかで強烈な印象を残したのが、仙台から九州にやってきた仙女だったからだ。
「入場式から緊張感が張りつめていて、ほかの団体の雰囲気とは違ったんですよね。選手が笑顔で手を振って入場する団体が多いなか、仙女はみんなお揃いの赤のジャージーでジッパーを上までカチッとしめて、闘いがある女性のカッコよさに惹かれたんです。入るなら絶対にここだと思いました」
「写真提供:センダイガールズプロレスリング、撮影:ペペ田中」
後日、九州に入団希望者がいると知った里村がわざわざ仙台からやってきた。そこで里村は岩田の意思を確認。そして、高校卒業後に岩田が期待を胸に単身上京、仙台の道場に住むようになったのである。ところが…。
「いやあ、しんどかったですね。すぐ帰ろうと思いました(苦笑)。練習もきつかったし、クタクタに疲れて帰ってきた後でご飯を作ったり洗濯したり、ほかにもいろいろ雑用とか。一番下というのもありましたけど、当たり前のことが辛かったです。でもその後、橋本が入ってきてからは同期で話せる人ができたので、そこからは頑張ろうと思えるようになりましたね」