20年目に突入の松本浩代 OZ、仙女、シードリング、主戦場での闘い方

前述したように、松本には冬の時代という認識はまったくなかった。全女、GAEA JAPANが活動を終了し、核となる団体がなくなったとしても、そんな業界事情はあとから教えられたと松本は笑う。中川vs栗原に見たあの衝撃が忘れられず、彼女はプロレスに没頭。順調に成長し、実績を積み上げてきた。
「息吹は若い選手ばかりということもあり、本当に実力社会でした。リングで結果を出した人が次の大会でメインに立てる。メディアの注目もあって、目立てば誌面で紹介される。
みんなのモチベーションがすごく高くて、みんな蹴落としにかかるリングだったと思います。練習はみんな協力して一生懸命にやるけど、隙見せたら食われるって、表でも裏でもすごいギスギスしてましたね。コイツを超えなきゃというのが目の前にいたので、ずっと闘っていました」
08年12・21後楽園、息吹のメインで中島安里紗を破りJWP認定ジュニア&POP王座を奪取、若手世代をリードする2冠王となった。また、しだいに団体のトップ戦線にも参入。とくに大きかったというのが16年11・13横浜文化体育館で加藤園子から奪取したOZアカデミー認定無差別級王座と、17年に橋本千紘から奪い、奪回もされた仙女ワールド王座だという。シングル、タッグを問わず常に参戦団体のトップに絡んでおり、これから先はOZ8・17後楽園でZONESと組んで倉垣翼&狐伯組のOZアカデミー認定タッグ王座に挑戦。シードリング10周年の8・22後楽園で真琴の保持するビヨンド・ザ・シー・シングル王座に挑み、OZ 8・24愛知・豊田合成記念体育館での加藤園子30周年記念大会参戦と、ビッグマッチの連続だ。
「写真提供:センダイガールズプロレスリング(ペペ田中)」
では、彼女はどんな姿勢で各団体のリングに上がっているのだろうか。
「正直、フリーっていらない存在だと思ってるんですよね。日本のプロレスって団体ありきなんです。たとえフリーが多くても、まずは団体ありき。私はそんななかでフリーとしてやっている。(レスラーとして)生まれたときからフリーなんですけど、団体に参戦するときは、どこも所属のつもりで闘っています。都合のいい性格なのか、勝手に所属だと思って闘っていますね。
OZには08年からずっと上がっていて、所属並みにいろいろ考えているつもりです。OZって歴史を紡いでいる団体。数ある女子団体でも一番ドロドロしていて、人間らしい団体でもあるんですよね。そんなOZに私は育てられてきて、その歴史を自分で紡いでいきたいと思っているんです。いまは山下りな、ZONESとのゴジゾネス連合で、OZの中心になっていきたいと思ってます。

「写真提供:センダイガールズプロレスリング(ペペ田中)」
旗揚げ3年目から関わっている仙女は後輩ばかりなんですけど、バチバチな闘いとか、私が大好きになった女子プロレスが詰まっているんですよね。人間離れした女子レスラーの強さがあって、そこに人生懸けてる女たちの集まり。そこに里村明衣子の遺伝子が橋本を筆頭に岩田美香とか愛海たちにつながっていく。DASH・チサコと令和アルテマパワーズというチームを組んでますけど、チサコもまだまだとんがってるので、自分たちでケンカ売って熱いものを作っていきたいですね。
旗揚げから参戦しているシードリングって、私がぶっ潰したいメンバーの集まりなんです。高橋奈七永、世志琥、中島安里紗。(選手ではないが)南月たいようもいて、そんなリングに上がらない手はないと思って。奈七永を食いたい、世志琥を狙いたい、中島が嫌い。そんなヤツらが集まるリング。いまは若手の子が増えて一気にフレッシュな団体になろうとしてますけど、それでも変わらない部分、女子プロで譲れないところはブレていないと思うんです。シードリングには変わらぬ強さがある。それが、シードリングに上がりたい理由なんですよね」
シードリング8・22後楽園では、VENYを破り最高峰王座に就いた真琴からの指名でタイトルマッチ。松本と真琴は同期にあたる。しかしながら、両者のデビュー当時はあまりにも対照的だ。松本が王道スタイルを突っ走れば、“無気力ファイター”と呼ばれた真琴はリストロックだけでギブアップするような史上最弱選手だった。あまりの弱さがかえって注目を集めたのだ。そんな2人は何度も同じリング(マット)に上がっている。松本がアイスリボンに参戦、タッグを組んだりシングルで闘ってもいるのである。

それが今回、立場が逆転。王者が真琴で挑戦者が松本、しかも団体最高峰王座を懸けて対戦するとは、当時を知る者には実に感慨深いタイトル戦だ。
「正直、真琴がVENYに挑戦したとき自分は悔しかったんですよ。真琴の思いが私の思いを上回っていたような気がして。その真琴がベルトを巻いて私との対戦を要求してきた。シングルのタイトル懸けて闘うのは初めてです。もちろん真琴との闘いではあるけど、自分との闘いでもあると思っています。真琴も自分自身に勝とうと試合に臨んでくるでしょう。ともにデビュー20年目。これだけ違う人生を歩んできて、ここでぶつかるなんて。お互い、プロレスで人生をぶつけ合いたいと思います」
さて、松本と言えば“雨女”としても知られている。事あるごとに、松本のいるところが雨に降られるのである。

「それ、昔からなんですよ(苦笑)。おかしいなとは思ってたんですけど、アイスリボンで雨の日の来場者にサイン色紙をプレゼントしていたことがあって、ほとんど毎回書いていました。そこから雨女と呼ばれるようになっていったんですよね。ホント、いいタイミングで雨が降るんです(苦笑)」
では、真琴vs松本のシードリング8・22後楽園も雨なのか? その可能性はあるとしても、後楽園は屋内だから大丈夫。むしろ、選手、スタッフ、さらにファンの10年分の思いが大きなパワーとなって、大会を盛り上げるに違いない。
インタビュアー:新井宏














