IWGP女子奪回の朱里、主演舞台スタートの驚愕の舞台裏

「期待していただけに、ちょっと残念ではありました。演技と実際のプロレスはまったく別物であるということを彼女に伝えましたね」
平井には後日の「追試」が課せられた。朱里にはリング復帰をめざし、リハビリの日々が始まった。それだけではない。9月18日&19日には志田光主演の舞台『引退』にゲスト出演。スターダム入団前、朱里は元レスラー・MARU主宰の劇団でステージに立っていた。そこには朱里の朱里組、志田の志田組という座組があり、その関係から志田の記念舞台に登場したのである。

Ⓒ新日本プロレス
そして、右ヒジも癒えた9・27後楽園で復帰戦。当然、朱里の狙いはSareee、IWGP女子王座奪還に絞られている。試合後にはその2人が舌戦を展開した。ここでSareeeは、俳優活動も含めて朱里の行動を糾弾。すると朱里は、「いままでやりたいこと全部やって、結果出してきてんだわ! だから、全部本気でやって、全部結果出してやるよ!」と言い返したのである。
「本気で全部結果を出してきた」。これはSareeeにも納得のいくところだった。Sareeeは、朱里の努力を見てきたひとりでもあるのだ。では、朱里の言う「全部」とは具体的に何なのか? あらためて本人に話してもらおう。

Ⓒ新日本プロレス
「いままで生きてきて、自分のやりたいことをやって本当に結果を出してきたので、そこには自信があります。キックボクシング、総合格闘技、プロレスなど、結果を出したいと思ったところで結果を残してきた。たとえばUFCにいったり、パンクラスやKrushでチャンピオンにもなりました。スターダムに来てからは赤いベルトの王者になる、女子プロレス大賞を取ると言って、実際につかみ取ってきました。もちろん、応援してくれる人、周囲の人たちの協力があってこそで、自分だけの力ではないのですが、結果として全部取ってきたんですよね」
結果という説得力。そして朱里は、またひとつ、新しい結果を出した。急きょ決定した新日本での防衛戦で、SareeeからIWGP女子王座を取り戻したのだ。
「急に決まったのですが、いつでもできるように準備して戻ってきたつもりでしたから。やっぱりIWGPだからこそ、新日本さんでやるのにすごく意味があると思うんですよね。私自身、新日本でのタイトルマッチは初めてだったのですごくうれしかったですし、実際に試合をしてみて、代々木も今回も、Sareeeと私にしかできない試合ができたんじゃないかと思ってます。本当に2人だからこその闘いができた。しかもリベンジを果たせて、本当によかったです」

写真提供:スターダム
両者はこの日、まったく同じ条件に並び立って闘ったと言えるのではなかろうか。Sareeeは10月2日、アメリカROHでアレックス・ウィンザーを破り王座防衛。朱里も6月6日にイギリスEVEでベルトを守って帰国し、日本での闘いに臨んだ。しかも挑戦者は2人ともウィンザー。「海外で防衛して日本で闘う」。この約束を2人とも守って向き合ったのだから、真のIWGP女子王者を決めるにふさわしい試合になったと言えるだろう。

そしてまた、朱里には「やりたいこと」がひとつ増えた。主演俳優として、舞台に立つのである。
新日本での激闘から一夜明けた10月14日、朱里の姿は都内某所にあった。そこは演劇の稽古場で、朱里主演『人を殺して何が悪い?』のリハーサルがおこなわれていたのである。
遡れば10・11後楽園でSareeeと6人タッグで前哨戦を闘い、12日には甲府で試合。13日にはスターダムの巡業を離れ新日本のリングに上がり、翌日には舞台の稽古。作品の脚本は9月末に手元に届き、10月4日の顔合わせから本格的に稽古が始まった。しかもスケジュールを調整しながらほかの出演者たちと稽古日を合わせ、時間を見つけてセリフをおぼえていかなければならないのだ。

プロレスラーと俳優の二刀流の真っただ中で、朱里はプロレスで大きな結果を出した。ならばこんどは俳優として。しかしながら、今作はプロレスとはまったく無関係のプロモーションとのこと。いままではプロレス関係者や選手のいる舞台や映画で演技をしてきたのだが、今回は完全に俳優・朱里としての勝負なのだ。では、『人を殺して何が悪い?』とは、いったいどんな作品なのだろうか?
「シリアスなサスペンスドラマです。会話劇というのか、セリフがメチャクチャ多いんですよ。なので、すでにテンパってます(苦笑)。でも、本気でやると(リングで)言ったので、こっちも本気でやりますよ。ちゃんとやり切るし、初日までには仕上げます!」
「全部本気でやって、全部結果出してやるよ!」というアピールには、Sareeeとの大一番を前に自身を鼓舞する意味もあった。こんどの「こっちも本気でやりますよ」にも、同じ意味が込められているのだろう。そうやって、朱里は結果を出してきたのだ。

写真提供:スターダム
しかしながら、経験こそあれ、俳優・朱里についてはまだ結果を残してはいないとのこと。もともと彼女は俳優志望で、エンターテインメント団体ハッスルでの空手ガールこと「KG」としてプロレスデビュー。そこから格闘技の道に入り、プロレスを継続。その過程で演技の経験も。映画『家出レスラー』出演によって、俳優への思いが再燃したのだという。
「俳優としては、まだ結果を出したとは思っていません。実力も全然だし、これからです。でもいずれは、舞台や映像作品でしっかり俳優朱里として認識される存在、注目される存在になっていきたいと思っています」

こんどの主役経験が新たな一歩となるのかどうか。もちろん、プロレスでもIWGP女子王座を防衛し、トップを張り続けていくつもりでいる。
「もっともっと女子プロレス、そしてスターダムのおもしろさを世の中に伝えたいんです。先日の新日本では、私たちを見たことない人もたくさんいたと思うんですよ。あの試合から女子プロっておもしろいなとか、男子とは違う魅力を感じてもらえたら。そう思ってもらえる人をどんどん増やしていきたいんですよね。スターダムの会場に来たら絶対におもしろいと、自信を持って言えるので」
リングからも舞台からも、目の離せない存在に。“モノが違う女”朱里は、上谷沙弥とはまた違う方法で女子プロレス、スターダムの知名度を上げていこうとしているのである。
※朱里主演舞台『人を殺して何が悪い?』
10月30日(木)~11月6日(木)
全10公演 11月3日休演日
シアター・アルファ東京にて
インタビュアー:新井宏














