リアルとフィクションが交差する「Venus誕生」演出家&出演レスラーにインタビュー

 そして、主要人物のひとりを演じる、みなみ飛香。2006年に11歳でデビューし、ブランクを経て2023年6月にアイスリボンにカムバック。しかし、同年9・17成増でのメインにおいて場外にプランチャで飛んだ際に左腕を骨折。3回の手術を経て、現在もリング復帰に向けてのリハビリをおこなっている。

 そんな飛香の現状を物語の軸としたのが、「Venus誕生」だ。表舞台から姿を消した女子レスラーが新団体旗揚げをめざし、さまざまな背景を持つ女性たちとともにリング復帰、あるいはデビューに向けて奮闘する姿が描かれるのだ。しかしながら、飛香には演技経験がない。では、欠場中の彼女がなぜ今回、この舞台に出演することになったのか?

「Venusという団体を旗揚げする社長の役なんですけど、話が来たときには私でつとまるのかなと思いましたね。演技したことないし、プロレスもできない。そんな状態でやっていいのかなって。でも、話を聞いていくうちにやらないで後悔するなら、やって恥をさらしてみようかなと思いました(笑)。試合もしてないし演劇もできない感じだけど、断ったらきっと後悔する。もしほかの人がやったとしたら、それ見てるのって悔しいじゃないですか。なので、おもいきってやってみようと。でも、やっぱりやってみるとすごく難しいです。役者さんもいるし、演技経験のある清水ひかりさんも出てるなかで、私だけホントにできなすぎてしんどかったですね。私の稽古の時間だけ何度も修正が入って時間をとられてしまい、ほかの人の練習時間を削ってる感覚にもなって、申し訳ないと思います」

 しかし、中山氏の言うように、演者としてもっとも成長したとされるのが飛香でもあるのだ。

「佐藤肇社長からは『社長役だけ決まってない』みたいな話で、『セリフ少なくて一言二言。全然できると思うからやってみて』みたいな感じで最初は言われたんですよ。だったらいいかなと思ってやってみたら、全然そんなことなかった(苦笑)。2幕3幕とメチャメチャセリフ多くなって、私、(物語の)中心になってないかと思い始めて(笑)」


写真提供:アイスリボン

 これは本舞台の性質からも、飛香の成長に合わせて変化が付けられていったものと思われる。レスラー志望者役の俳優は、本番を通じてトレーニングで成果を出していく。ともに相乗効果が出ているのである。

「ケガをしてプロレスできないけど、なにかやってみようという役なので、いまの自分とメチャメチャ重なるところが多いですね。キャラクターとして重なるし、セリフでも自分がいま思ってることだなあと感じるところとかあったりして、ホントにいまの自分と重なってます」

 物語がそのまま進めば、飛香は新団体の社長になるはずだ。実際、来年1月4日、神奈川・横浜産貿ホールでの特別公演では、演劇ではなくプロレス興行としての開催。その日、出演者は演じるのではなく、プロレスラーとしてプロレスのリングで試合をおこなう。では、2年間欠場中の飛香は…。

「本当に旗揚げしたら社長になる。それが不安です。(第4幕の)土壇場で社長が変わったりしたら? それはそれで、ちょっと悔しいかもしれないです(笑)」

 いずれにしても、飛香にとって当面のゴールはプロレスラーとしてのリング復帰にある。理想は1・4でのカムバックだが、こればかりはまだわからない。出演者たちのその後についても、1・4終了後に判明するようだ。

 はたして、11月の毎週金曜日におこなわれる全4回の最終幕を経て、1・4旗揚げ戦へとコマを進めるのは誰なのか? そして、1・4後もVenusは継続されるのか。継続となれば、それはプロレス団体か、それとも劇団か。また、これが本当の最終回になる可能性も…。「出演者の成長を見てほしい」と飛香。「Venus誕生」で、リアルが舞台に投影される瞬間を目撃しよう。

 

「Venus誕生」
11月7日、14日、21日、28日(すべて金曜日、開場18時30分、開演19時)
埼玉・レッスル武闘館(アイスリボン道場)
JR「西川口」歩9分

インタビュアー:新井宏

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