まだOZAWAとInamuraには譲らない 「すべてはノアのために」清宮海斗の巻き返し

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

「狂乱のプリンス」清宮海斗が正念場を迎えた。思えば、何とも辛い一年となった2025年が終わろうとしている。

ノアの若きエース」清宮だったが、今年の元日決戦1・1東京・日本武道館大会で、一気に転がり落ちてしまった。


※写真提供:プロレスリング・ノア

GHCヘビー級王者として、OZAWAの挑戦を受けたものの、デビュー以来受けたこともなかったブーイングにさらされ、あえなく敗退。その周辺には「終わった感」が漂う始末だった。

思い出したくもない一戦が、今年のプロレス大賞・ベストバウトに選ばれた。「嬉しい」と素直に喜びを爆発させたが「負けた試合なのは悔しい」と続けた。

この黒星だけではない。今年はOZAWAに話題をすっかりさらわれ、道場での振る舞いから私生活まで「暴露」されてしまった。


※写真提供:プロレスリング・ノア

しかも、もう一人「令和」ならではのチャンピオンが登場してきた。Yoshiki Inamuraである。英語と日本語を織り交ぜた独特のマイクを展開している。当初は失笑交じりだったファンの反応も、今では歓声を呼び込んでいる。

OZAWAとInamura。これまでのエース像を一新させるチャンピオンとして、支持され人気も集めている。

清宮は格好良くてファイトも華麗にしてコメントも優等生…日本マット界に綿々と築き上げられてきた「若きエース」像を地で行っていたが、もはや時代遅れなのか。何より清宮本人が危機感を抱いたはず。


※写真提供:プロレスリング・ノア

26年の元日決戦1・1日本武道館大会では、王者InamuraとOZAWAがノアの象徴GHCヘビー級ベルトをかけて闘う。来年のノアをこの2人が背負って立つ、と満天下に示すためのメインイベントだ。

清宮は第6試合で、ジャック・モリスと組み、カール・アンダーソン、ドグ・ギャローズ組と対戦。「Invasion」と銘打たれており、ノア侵略を打ち出したグッドブラザーズを迎撃する一戦となる。


※写真提供:NOAH / WRESTLE UNIVERSE

第7試合はGHCタッグ王者・丸藤正道、拳王組にBUSHI、XXXX組が挑戦するタイトルマッチである。話題のXXXXとあって世間の注目度はすこぶる高い。

清宮が「復権」をアピールするには、メインは元より全9試合が争われる元日決戦の闘いを、すべて食ってしまうしかない。それこそベストバウト級のバトルを繰り広げるのだ。


※写真提供:プロレスリング・ノア

もちろん清宮のファイトは揺るがない。自身の10周年記念大会(12・7東京・後楽園ホール大会)で、1大会3試合しかも60分アイアンマッチで締めくくった超人的スタミナには定評がある。

清宮とのファイトで、OZAWAやInamuraがより一層輝いたという見方もある。プロレスは一人ではできない。ベストバウトも清宮が相手だったからこそOZAWAが光ったとも言える。


※写真提供:プロレスリング・ノア

ダテに若くしてGHC王座を獲得し、3回君臨しているわけではない。武藤敬司棚橋弘至と絡んだ経験も大きい。

「嫌われていることを思い知らされた」と振り返る1・1 OZAWA戦。世にいう「OZAWAショック」だが、当初は凹んでいた清宮も徐々に「ピンチはチャンス」と捉えているようだ。

自身の感情をストレートに口にする。「若きエース」の看板にこだわるコトなどない。優等生になる必要もない。もはや清宮には似合わない。いや、ファンも清宮にソレを期待してはいないのだ。


※写真提供:プロレスリング・ノア

12・21静岡・浜松大会でも晴斗希に「(元日決戦のパートナーは)ジャック・モリスではなくて俺だろ」と絡まれたが、想いをストレートに発露している。「お前は助けに来なかっただろ。めちゃくちゃ痛かったんだよ」とキッパリ。かつての清宮なら考えにくいセリフを口にしていた。

SNSでもOZAWAやInamuraの「暴露」や「イジリ」に反論。積極的に活用するようになった。

試合内容ではまだまだOZAWAやInamuraに負けてはいない。マイクで先を行く2人をファイトでギャフンと言わせれば、立場は逆転する。何より誰よりも中身の濃い10年を過ごしてきた。

2018年暮れにGHC初戴冠を果たした祝勝会は「海斗」というお店が会場だった。「ありがとうございます」と、さわやかな笑顔を満開にしてくれた。その場にいた全員が、改めてファンになっている。悪乗りとも思える「横向き」Tシャツも評判だ。彼の魅力は底なし。

ブーイングも期待の裏返し。期待していない選手にはブーイングすらしないだろう。

決め台詞も「すべてはノアのために」。「アイアムノア」と叫んでいた選手がいなくなった今、やはりノアを背負うのはこの男だ。

辛い時期を過ごした清宮だが、「辛」の字に一本足せば「幸」になる。どっしりと構えた上で清宮流のコメントに磨きをかける。まだ29歳。レスラーとして脂の乗る30代はこれからだ。

優等生は卒業だ。来年はあらゆる面で、ひと皮もふた皮もむけた「新生プリンス」清宮を見せてくれるだろう。

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