棚橋弘至の引退で天下取りレースが激化 ウルフアロンだけじゃない新日本プロレスのこれから

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

棚橋弘至の引退で一つの節目を迎えた新日本プロレス。「五輪金メダル」の文字通りの金看板を背負ったウルフアロンが、期待以上の旋風を巻き起こしている。だが、いかんせんまだまだルーキー。屋台骨を背負うにはもう少し経験と時間が必要だ。

現在、トップを走るのは辻陽太。IWGPヘビー級王座を復活させ、猪木から綿々と続く新日本の歴史を改めて再認識させた。令和の時代、生え抜き云々にこだわるのはそれこそ時代遅れなのかも知れないが、古くからのファンの辻支持率は高いようだ。

棚橋いわく「戦国時代」の新日本の天下取りレースで、辻が一歩リードしたのは間違いないところ。その辻にまず突っかけたのがジェイク・リー。全日本プロレスで三冠王座、ノアでGHCヘビー級王座に君臨し、IWGPヘビー級王座を加えて三大王座を制するグランドスラムを目指している。

ジェイクは新日本上陸後、ケガで長期欠場に追い込まれた。復帰早々の名乗りだったが、ブランクを感じさせない実績は十分といえるだろう。2・11大阪大会の辻VSジェイクのタイトル戦は、守る立場になった辻の正念場である。

辻がIWGPヘビー級王座を奪ったのはKONOSUKE TAKESHITAだった。DDT育ちで新日本、米AEWの三団体所属で、日米を股にかけ活躍している。新日本にはビッグマッチにスポット参戦しており、長年の新日本ファンにしてみれば、諸手をあげて応援とはいかなかったようだ。

かつてUWFインターナショナル・高田延彦や全日本・武藤敬司にIWGPベルトが流失したこともあったが、高田も武藤も新日本OBだった。「猪木イズム」にこだわる新日本ファンもどこかで納得していたものだ。

棚橋は「今は推しの時代。選手一人ひとりの魅力が大切」と社長としての見解を明かしており、猪木流とはひと味違った棚橋流エースで、新日本をけん引していた。「新日イズム」「ストロングスタイル」「生え抜き」…ライバル団体との殺伐たる対抗戦ではなく交流戦で業界全体の盛り上がりをはかっており、これらのキーワードとは一線を画しているようだ。

ただ、こんな時代の風に大きな波紋を呼び込んだのがYuto-Iceだ。OSKARとのコンビ「ノックアウトブラザーズ(K・O・B)」で、IWGPタッグ王座を保持し、昨年のプロレス大賞最優秀タッグ賞も獲得した。何よりIceのアピールがファンの共感を呼んでいる。

「プロレス会場で全部さらけ出せばいい」と公言。とかく生きにくい現代社会で、Ice自身が「救われた」というプロレスで「ハイになってくれ」とストレートそのもの。感情を爆発させ熱狂する「プロレスハイ」になろうと提唱。「プロレスハイ」という言葉は斬新で、ファンに刺さった。

4度目の入門テストでやっと新日本に入団するなど、決して順調なレスラー人生ではなかっただけに、Iceの言葉には魂が宿っている。その思いが心に響いてくるのだろう。リング上のレスラーに自分を重ねて見る、そんなファン心理をふるわせるものがある。

「ケンカが強いのがレスラー」と言い切るあたりも、令和のプロレスになじんできたファンたちにも新鮮に映ったのではなかろうか。

天下取りレースに急浮上したIce。辻はもちろん、海野翔太、上村優也の正統派エース候補コンビも黙ってはいまい。2・11大阪大会のIWGPタッグ王座戦でK・O・Bに挑む。

棚橋の後を継ぐ者として、熱い視線を集めながら、結果を出せないでいる海野と上村。辻どころかIceにも先行を許しては、天下取りレースの後方待機から抜け出せない。

1・25広島・宮島大会ではIWGPヘビー級王者・辻とIWGPタッグ王者、K・O・Bが王者トリオを結成し、ジェイク、カラム・ニューマン、ジェイコブ・オースティン・ヤング組と対戦。Iceがオースティンをフォールして快勝した。

Iceは「少しはハイになったか。この俺がブリブリにハイにしてやる。ただ…感じろ。Let’s get high! チッチッ Big up!」とアピール。いよいよ勢いを増している。

棚橋もオカダ・カズチカも内藤哲也もいない新日本で、誰が真のエースとなるのか。新時代の覇権を握るのは? まずは2・11大阪大会から目を離せないことだけは間違いない。

<写真提供:新日本プロレス>

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