【新日本】棚橋弘至社長が語る、プレイヤーからの完全転換と経営者としての覚悟「トップスターの離脱は悲観していない。これは新日本プロレスの歴史であり、新陳代謝である」

■選手マネジメントの観点で、契約形態・育成システム・報酬設計など見直しは必要か?

――:選手マネジメントの観点でお伺いします。海外の巨大資本プロレス団体に対抗するため、契約形態や報酬設計の見直しが必要だというお話がありました。具体的にどのような青写真を描いていますか?

棚橋:やはり海外団体の提示するギャランティの額は莫大です。数年契約で億単位の金額が動く世界ですから、今の日本の市場規模では、まだそのレベルの契約をポンと出すことは難しいのが現実です。では、日本に残って戦う選手たちのギャランティをどうやって上げていくか。これはもう、「いい試合をして、プロモーション活動を頑張って、団体の売上を伸ばす」という王道しかないんです。

――:ビジネスのパイ自体を大きくするしかないと。

棚橋:はい。だから今、海野(翔太)や上村(優也)といった若い選手たちに、積極的にメディア出演やプロモーション活動に行ってもらっています。彼らが顔を売り、グッズの売上を伸ばし、観客動員を増やす。それが巡り巡って、団体全体の利益となり、最終的に彼ら自身のギャランティの向上に直結する。そのサイクルを理解して動いてもらうことが重要です。

――:国内のスポーツ産業全体における、新日本プロレスの市場規模の拡大ですね。

棚橋:スポーツやエンターテインメントにお金と時間を使ってくれる人の総数は、急激には変わりません。野球、サッカー、バスケ、バレーなど、様々なジャンルとの「可処分時間の取り合い」になります。でも、僕はプロレスというジャンルが、全スポーツの中で「一番伸びしろの可能性を秘めている」と信じているんです。

――:一番の可能性、ですか。

棚橋:はい。なぜなら、「プロレスという名前は知っているけれど、ちゃんと試合を見たことがない」という人の割合が、他ジャンルに比べて圧倒的に多いからです。野球やサッカーは、ルールを知らなくても一度くらいはテレビや現地で見たことがある人が大半でしょう。でもプロレスは、「知ってはいるけど未体験」の層が分厚い。つまり、一度見てもらって、その熱や面白さを体感してもらえれば、ファンになってくれる可能性が一番残されているブルーオーシャンなんです。

――:なるほど。未開拓のファン層をいかに振り向かせるか。そのためには、棚橋社長がエース時代に地道に行ってきたプロモーション活動が、今こそ組織全体で必要になるわけですね。

棚橋:僕が全国を飛び回って「プロレスを知らない方に知ってもらう」というプロモーションを続けてきたDNAは、今の若い選手たちにも受け継がれています。10年前、20代で僕のプロモーションをきっかけに会場に来てくれた方が、今では結婚されて、お子さんを連れてファミリーで会場に足を運んでくれているんです。これが長年地道に種を撒いてきたプロモーションの副産物であり、最大の成果です。かつては「男性が熱狂するもの」だったプロレス会場に、女性ファンが増え、今度は「ファミリーで安心して楽しめる空間」へと進化しつつある。この流れを加速させ、遊園地やテーマパークに行くような感覚で、家族全員で楽しめる新日本プロレスの空間を作り上げていきたいですね。

(後編に続く)

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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