【編集長コラム】「夏風邪はストロングスタイルの敵」

夏風邪をひいている人が多い。みなさんは大丈夫だろうか。

「ストロングスタイル」を標榜する新日本プロレスは、とことん「ストロング」にこだわってきた。今では科学的なトレーニング法や栄養学など最新の理論が、積極的に取り入れられているが、かつては精神論が重視され、試合や練習以外でも軟弱な姿勢は認められなかった。

例えば「もう飲めません」「食べられません」などというのは「レスラーにあらず」と一刀両断。食事に限らず、普段の生活全般にも怖い先輩の目が光っていた。

風邪をひいてしまえば「情けない、だらしない、たるんでいる、気合が足りない」などと指摘されてしまう。特に夏風邪には厳しかった。「寒い冬ならともかく、暑いのに風邪をひくなど言語道断」という古風な考え方が定着していたのだ。

そこで対策も色々とあった。「風邪には梅干がいい」と梅干しをタッパーに入れて持ち歩く者。「うがいが一番」と、効果的だと言われるお酢や紅茶でうがいに精を出す者。加湿器などまだない時代に、寝る時には必ず濡れタオルを寝室に置き乾燥を防ぐ者。「風邪を引く前に風邪薬を飲んでしまえば、風邪引かない」と強引な方法を用いる者。各自がそれぞれの方法で風邪対策を行っていた。

それでもうっかり風邪をひいてしまった場合は、咳は我慢し、鼻水も必死に食い止め、風邪ではないと装った。だが顔色が悪い、ふらついているなどで、どうしても体調不良は隠しようがない。

そんな時には仕方なく「食べ過ぎで具合が悪い」としていた。食べ過ぎで調子が悪いのも、考えてみれば自己コントロールができていない訳だからどうかと思うが、それでも「体を大きくしようと無理して食べた結果」なのだから、周囲は寛容だった。

風邪をひいて具合が悪いのはダメだが、食べ過ぎで具合が悪いのは良しとする。「いかにもプロレスラーの理論」とも言うべき、何とも不思議な道理がまかり通っていた。怪我をしても黙ってコッソリ直す。それが普通だった。いい悪いは別にして、いつ何時でもゴリゴリの「ストロングスタイル」だったことは間違いない。

最近はどこに行っても、室内は涼しく快適な温度が保たれているが、その反面、夏風邪が昔より多くなっているという。夏風邪をひいている人を見る度、昔の「いかにもプロレスラーの理論」を思い出す。

柴田惣一 (プロレスTODAY編集長)
「プロレスTODAY編集長」であり「プロレス解説者」。 〝千のネクタイを持つ男”の異名もあり。 テレビ朝日「ワールドプロレスリング」、サムライTVでプロレス中継の解説。 今日も一緒にプロレスを楽しみましょう!

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