【編集長コラム】「レスラーと花粉症」

花粉の季節。みなさん、花粉症は大丈夫だろうか? 今年も目がかゆく、鼻水が垂れ、クシャミが止まらない。

春先の不快な症状が「花粉症」というアレルギー症状だと、認められるようになったのは、一体いつ頃からだろうか。

昔は「花粉症」などという言葉さえ、一般的ではなかったが、今、思えば花粉症に苦しむ人はいた。プロレス界でも変わりない。

故「狂犬」ディック・マードックさんも「春に日本に来ると、クシャミが出てかなわない。鼻炎なのかな、目もかゆい」と、ぼやいていた。マスク着用を勧めたが、当時の米国ではマスクをする習慣がなかったのだろうか、花粉の攻撃をひたすら耐えていた。

エキストラ出演したCMでも、撮影時にクシャミが止まらなくなってNGを連発してしまったという。

鼻をすするのは、マナー違反とする文化もあってか、ひたすら鼻をかんでいたマードックさん。その鼻が赤かったのも、今思えば、花粉症だったのかも知れない。「(花粉症は)荒くれ馬よりもタチが悪い」とでも、言いたかったのではなかろうか。

日本人選手でも、今も昔も花粉症と闘っている者は多い。試合数が多かった時代には、気候がだんだん良くなる春先から初夏にかけて、大会が目白押しだった。地方サーキットに出れば、花粉を吸い込む機会も増える。

症状を緩和する薬などもあまりなく、ただただ耐えるのみ。花粉症が認知されていないのだから、クシャミでもしようものなら「何だ。風邪か。情けない奴だ」などと叱られてしまう。

となれば、クシャミが出そうになってもグッと堪えて飲み込むしかない。目がかゆくてもこすれない。「何だ。眠いのか。たるんでいるぞ」と怒られてしまうからだ。

くしゃみと目のかゆみは、それでも何とか我慢できる。だが、鼻水を我慢するのは至難の業だ。

試合中に鼻がたれて来ても鼻をかめない。第一、格好悪い。苦肉の策で、こっそりティッシュを小さくまるめて鼻の奥に詰め、試合をする選手もいた。だが夢中で闘っているうちに、気がついたら抜け落ちていることもしばしば。

試合後、マットの上に丸くて小さな白い謎のブツが2つ、ちょこんと鎮座している謎の光景を、何度も目撃した。最初は何だか、わからなかったが、自分が花粉症になると合点がいった。

今では効果的な治療法もたくさんあるので、謎のブツがリングに残されることはない。もはや見られなくなったリング上の不思議な光景・・・花粉症の季節が来る度に、思い出してしまう。

「進撃の大巨人」石川修司も花粉症に苦しむ仲間。「マスクが手放せない」と特大サイズのマスクを愛用しているそうだが、さすがにリング上でクシャミをしている姿は見たことがない。

「大きなクシャミをすれば、相手が吹っ飛ぶんじゃない? 『ジャイアント・クシャミ』どうですか?」との提案には、ただただ苦笑いするばかりだった。

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