【編集長コラム】「Strong Quest・野村卓矢の一矢必中特訓」

「Strong Quest」野村卓矢が「令和の最強王者」を目指して着々と歩を進めている。

キャリア4年ながら、怖いもの知らずのファイトで存在感を誇る野村。岡林裕二が「普通、先輩に張り手なんかできない。でも野村は平気でやって来る。だからこっちもコノヤロー! となって、熱い試合になる」と目をむく。

キャプチャーインターナショナル王座を野村に奪われた竹田誠志は「普段とのギャップが本当にすごい。期待できますね」と、苦笑いしながら絶賛している。

今でも「中学生に間違われる」ことがあるという優しい顔立ちなのに、野村はリングに上がった途端に豹変する。「童顔の暗殺者」という異名も頷ける。

「5月は1試合でした」とポツリ。コロナ禍による無観客TVマッチ限定の現状に「暴れ足りない。ストレスが溜まります」と、珍しく厳しい表情だ。

とはいえ「プラスに考えて、体つくりに取り組んでいます。普段、なかなかできないことにも」と、トレーニングメニューに工夫を重ねている。その一つが、コシティだという。

コシティは、インドやイラン発祥の木製でこん棒状のトレーニング器具。日本では「プロレスの神様」カール・ゴッチさんが使用する姿が有名で、ゴッチさんからアントニオ猪木氏に伝えられ「ストロングスタイルの象徴の一つ」ともいえる。

独特の形状のコシティを手に持って回すことで、握力、腕、手首、肩を鍛錬でき、肩関節の柔軟性も上がる。

野村はペットボトルを代用品として使用。まずは500mℓで始め、慣れて来たところで1ℓ、続いて1・5ℓ、そして2ℓとステップアップしている。

「見た目より難しくて、最初はうまくできなかったけど、だんだんとできるようになった。家でやると、もしすっぽ抜けたら、テレビとか窓とかを割ってしまいます。道場やジムでするより緊張感を持ってできる。いつもとは違うところが筋肉痛になる。今までにないトレーニングですね」と笑った。

そして「いつか本物のコシティを回してみたい」と意欲満々。ゴッチさんに「マイ サン」と呼ばれた木戸修氏は、引退した今でも、神奈川・横須賀の豪邸の屋上でトレーニングと日焼けを欠かさず、コシティも続けている。機会があれば、木戸氏にコシティ指導を仰ぐのもいいかも知れない。

26歳の野村は「Stay Home」中に、猪木氏のDVDや写真集などを、何度も見返している。「僕は強くなりたくてレスラーになりました。強さにこだわりたい。誰にも負けたくない」と力説する。

よく食べよく飲む「エビスコ」で、サロメチールを愛用するなど、野村は「古き良き昭和」の匂いのするレスラーの一人。平成生まれの野村だが、昭和も、もちろん令和も大切にしている。「強くなるためには、新しいとか、古いとかは、全く関係ない。歴史や伝統ある方法も、新たなやり方も、良いと思えば、すべて参考にして取り入れていきたい」と目を輝かせた。

また、栃木出身の野村。那須与一にゆかりがある家系だという。那須与一は、835年前の源平合戦「屋島の戦い」において源義経に命じられ、70m以上も先の船上の平家の扇を一矢で見事に撃ち抜き、源氏の士気を高め勝利に導いた弓矢の名手だ。

「二本以上あれば次があると油断が生まれる」として、那須与一は一本しか矢を持たなかったという。まさに「一矢必中」だが「一撃必倒」を胸に一撃で相手を倒す強いレスラーを目指す野村に相通じている。

野村の「Strong Quest」とも言える強さを追究する旅は、まだ始まったばかり。いくつもの壁や坂があるだろうが、当面の目標はBJWストロングヘビーのベルト。重さを増した激しい蹴りと、雨上がりにかかる虹のように鮮やかなブリッジのスープレックスで、大日本プロレスの頂点を狙う。

熱い「闘魂」と「一矢必中」の想いを秘めた野村卓矢が、大輪の花を咲かせる日は近い。

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