【新日本】大張高己社長インタビュー<第1弾>AEWとの禁断の扉、全選手が完走した『G1』、感謝のシンニチイズム、涙の9月声出し大会の裏側を明かす!

新日本プロレスは2022年団体設立50周年を迎え、様々な仕掛けを実施し、早くも4分の3の日数(9ケ月)が過ぎた。

プロレスTODAYでは新日本プロレスの大張高己社長に50周年イヤーについて今年2回目の独占インタビューを実施。

今回はAEWとの合同興行、G1 CLIMAX32の振り返り、シンニチイズムの地方展開、9月の声出し大会、スターダムとの合同興行、約3年ぶりのイギリス大会、50周年の集大成となる来年の1.4東京ドーム、そして10月1日に逝去されたアントニオ猪木さんに対する想いについて多岐に渡り語ってもらった。

今回はインタビュー第1弾を掲載。

①AEWとの合同興行『AEW x NJPW: FORBIDDEN DOOR』について
 日時:2022年6月27日(月)
 会場:アメリカ・United Center(イリノイ州シカゴ)
 観衆:16,529人(札止め)

――今回は50周年イヤーとして4分の3が終わっての振り返りというテーマをさせていただこうと思っております。6月にAEWとの合同興行を開催した「AEW x NJPW: FORBIDDEN DOOR(禁断の扉)」、これはプロレス界にとっても非常に大きい出来事だったなと思っています。しかも観衆も1万6,529人、札止めという入りになりました。この大会を振り返って今の感想はいかがですか?

「50周年の施策の発表したときに『ドリームマッチを実現します』と申し上げました。それで直近で実現したのがノアとの合同興行(1.8横浜アリーナ)であり対抗戦でした。皆様それで打ち止めだと思っておられたかと思います」

――確かにノアとの対抗戦は相当チケットの売れ行きもよかったですし、普段見れない顔合わせでした。でも50周年だから、もしかしたらまだ何か仕掛けがあるのかな?と思いました。

「ドリームマッチでしたね。」

――AEWとつながりをどういうふうに持っていったのかというのはすごく気になりました。

「アメリカに会社を作って、コロナの中でも試合を止めずに、無観客であろうとコンスタントにストロング(NJPW STRONG)やビッグマッチ、そういうものを続けてきたことで、アメリカのリングを軸に人や会社の交流が行われたということだと思うんです。だから、ストロングを通じて皆様お馴染みのメンバーもいるわけじゃないですか。例えば懐かしい顔、(ランス)アーチャーはストロングであったり、リサージェンス(RESURGENCE)とかそういうところにも顔を出して戦ってくれていて。だから、そのリレーションというのは、新日本対AEWへ向けて、新日本プロレスのアメリカ法人であるニュージャパンプロレスリング・オブ・アメリカ、NJoAと我々は呼びますが、そこがあったことで実現したものだと思います。」

――やはり現地法人を立ち上げることによって、その窓口とコンスタントに連絡が取りやすいと。

「私はレスラーではないのですが、きっとレスラーはリング上で肌を合わせることが一番のコミュニケーションじゃないですか。その場所が新日本の場所としてあったということが非常に有意義でした。中2階みたいなものです。間の位置でアメリカ、つまりお互いにホームなんだけどアウェイという状態です。だからアメリカの人たちにとっては、国としてはホームなんだけど、会社としてはアウェイの会社で、その関係を作るには一番適切ですね。完全に物理的にもアウェイ、かつ会社の所属的にもアウェイなリングって、2段階難しいですよね。その間を取れる場所としてアメリカの法人があり、ストロングのリングがあり、ということだったので、それがなかったら恐らく実現していないでしょうね。」

――そのおかげで僕らはドリームマッチを今も見れているということで、非常にうれしい交流だったなと思います。

「新日本プロレスワールドでも発信をコンスタントにさせてもらっていますしね。」

――これは実際、大張社長が現地に行って、この大会前(現地時間・4月20日)に観衆の前に現れたわけじゃないですか。あのときの心境たるものはどんなものなんですか?すごく大変な場に躍り出ていくわけじゃないですか。しかもちょっと臨戦態勢で。

「まず、バレてはいけないと。」

――周囲にも極秘だったのですか?

「はい。控室にもゲストという名前しか書いてなかったです。ほかはみんな実名で書いてあったんですけど。」

――現場でもそうだったんですか?

「もうホテルに入るときからコソコソと。そして会場の控室の名前はスペシャルゲストだったかな。NJPWとは書いていませんでした。だからトイレに行くときもコソコソ行って、ましてやお客さんの前には出れなくて。手塚も行ってたんですけど、アジア人でスーツ着ている人は多分感づかれてしまうので、NJoAのCOOである手塚とも申し合わせて、なるべくお客さんの前に出ないようにしようと。試合の展開やお客様の雰囲気は生で見たかったですけど、中のモニターで見ていました。」

――極秘プロジェクトとして、現地入りして実際ステージに上がった瞬間はどうでした?


©All Elite Wrestling

「すごかったですよ。久々の大観衆でしたから。たしか1万数千人入った会場だと思うんですよね。トニー・カーン(AEW)が先に出ていって、いろいろ想定外のことがあったんですけど、ニュージャパンプロレスリング、オーバリさん!と言って、ドンとわいて、みんなが立ち上がって拍手してくれたんですけど、多分私の名前なんて知らないし、新日本プロレスのプレジデントが来たということがサプライズだったんでしょうね。新日本プロレスの凄みを背中に感じました。これはもう引き返せないな、ここで戦うしかないな、という覚悟が決まりましたよね。」

――大張社長は背が高くて見栄えもいいから、正々堂々とその禁断の扉を開けにいったというその姿勢はすごくよかったなと思いました。歴史的な扉を開けました。でもモード的にはどうするか悩みますよね。

「首相や外交官のような役割じゃないですか。会社と会社のトップがどう触れ合うか、となりますよね。もちろんにこやかに仲良くやるのもある。でも、実際は厳しい臨戦態勢を選びました。今から戦う相手だから、カードをどう組むかが決まっていた状態ではなかったし。戦うカードというのは、対抗戦の部分が少なくともあるだろうから、普通の日本人っぽくにこやかに愛想をふりまくのは違うなと。戦う相手として握手するという。自然と、厳しい顔つきになりました。」

――臨戦ムードがその対抗戦感をしっかり出していて、そこからジェイ・ホワイトが間に入ってきて。

「想定外が二つありました。トニー・カーンがどう動く、そしてどのタイミングで呼ぶか。それで、先にリングに上がってもらうはずでした。分かった、じゃあ俺は呼ばれたらリングまで行けばいいのね、と。いつも私は神聖なリングに上がるときには靴を脱ぐので、いつも通り靴をちょっと緩めてるんです。生放送だしスムーズに上がらなきゃいけないかなと思って。それで、ゲートから出てきて、私はパッと周りを見渡しながら、前に進んでいるんです。なんでかって、リングに行こうとしているから。そしたら、気づいたらトニー・カーンは後ろにいたんです。」

――あれ?って。

「ゲートを出たところで待っていたんです。だから画的に私が上から握手をガシッてしているように見えるじゃないですか。あれは私が勇み足で前に出でしまっているからなんですよね。」

――なるほど。画角的にそうなっちゃうと。


©All Elite Wrestling

「背の差もありますけど、余計に上からかぶせるようになってしまったのは不可抗力だったんです。正面カメラから追うと私がすごくかぶっちゃうという。それと、いろいろ話そうと思っていたのは全部ジェイに持っていかれたという。あれには驚きました。めちゃくちゃ私、ジェイを睨んでいたと思います。なんでお前出てきたんだ?と。」


©All Elite Wrestling

――だけどジェイは一応新日本プロレス側の人間ですからね。

「新日本と言うよりも、あのときはBULLET CLUBとして来た感じで中断させられちゃったんですけど。バックステージインタビューでは言いたいことは言えたんですけど、完全に言いたいこと持っていかれましたね。ジェイが話している間、私はトニー・カーンに、どういうことだ?と聞いてるんですね。」

――いや、俺も分かんないよ、ってなっちゃいますよね。AEWとの対抗戦という部分では、まだまだこれからも禁断の扉は開き続けていってほしいです。


©All Elite Wrestling

「お互いに両方の主力の中のメンバーで欠場者いましたからね。(高橋)ヒロム選手も出れなかったし、向こうはCMパンク、ダニエル・ブライアンも出てないですよね。」

――まだまだ夢のカードというのはこれからも残っているなという感じがしますよね。

「率直に言って、実現した夢のカードは、ほんの一握りという印象ですね。」

――そうですね。

「出場選手という意味でも組み合わせとしても、シングルタッグの別としても、ほんの一握りだから、普通に考えると続きはみたいですよね。」

――見たいです。やっぱりカール・アンダーソンやドク・ギャローズ、そしてランス・アーチャーも日本で活躍していた選手がまたこちらで見れるという。各々の成長した姿というのが、ファンにとっては幻想が膨らむ部分なので、そこがリアルでまた見れるというのはすごくうれしいですね。

「点じゃなくて、新日本プロレスワールドで、前回の『AEW x NJPW: FORBIDDEN DOOR』からの流れも追えるわけじゃないですか。AEWの流れも追えるし、もちろん新日本の流れも追えるわけなので、両方見て色々コメントを頂ければと。私は、そういったファンの皆様の醸成する機運というものには敏感な方だと思います。」


©新日本プロレス

――AEW側にとっても日本のファンの開拓というか、AEW DYNAMITEなんかはTwitterのスポーツトレンドにも入ってくるようになりましたし、そういう部分ではお互いにとってプラスに働いているのかなという気はしました。

「PPV(ペイパービュー)もやりました。日本のお客様は、簡単に向こうに行けるタイミングではなかったので、PPVを買っていただく手段しかなかったんですけど。海外の大会、それから海外から見た日本の大会って、海を越えて、言語を越えるだけでハードルが上がるんですよね。日本の企業として新日本プロレスはアメリカで試合やったり、UKでもやったりしますが、地元の国でやるのとは運営やコストの面で、破格にハードルの高さが違うんです。大きな事業リスクを取らないといけません。なので、例えばAEWが単独で日本のお客さんに対してプレゼンスを上げようとしても結構苦しいところはあると思うんです。新日本プロレスと戦うことで、AEWの人たちってこんなに強いんだ、とか、逆にこの選手はこのレベルなんだな、というのが分かったと思います。

 プロレスのマーケットってアメリカは大きいとはいえ、メジャーリーグとかNFLのサイズとは全然比にならないので、グローバルな意味でのプロレスマーケットを、我々は例えばメキシコではCMLLとか、イギリスではRPWとか、各地にパートナーがいますので、グローバルな意味でのプロレスマーケットを協力して盛り上げていくというところではぜひ継続的に協力したいなと思いますよ。それは戦う、向かい合うことでそれに貢献できるかも分からないし、それはいろんな形があると思います。」

――ファン目線では非常にうれしいという声が圧倒的に多いので、また引き続きこれからも継続的にやっていただきたいなと思っております。

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