WWE史上初の中国人女子スーパースター 東京女子初参戦のザイア・ジャオに聞く

【WEEKEND女子プロレス#29】


<写真提供:東京女子プロレス>

 WWE史上初の中国人女子スーパースターとして話題になったザイア・リー。現在は約7年間在籍したWWEを離れ、フリーとしての活動をスタートさせている。新しいリングネームはザイア・ジャオ。そのザイア・ジャオが、東京女子プロレスの9・22千葉・幕張メッセに初見参。瑞希とのタッグで上福ゆき&VENY組と対戦する。アジアンテイストが前面に出そうなカードとあって、ザイアの中国武術をモチーフとしたムーブのお披露目にもなりそうだ。


<写真提供:東京女子プロレス>

 中国・四川省重慶出身のザイアは、ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)のプロレスにカルチャーショックを受け、WWEの虜になった。

「ロックを通じてプロレスを知りました。リング上で展開される試合はもちろん、パフォーマーとしての存在感、カリスマ性が衝撃的でした。ロックを通じ、肉体をぶつけ合うプロレスの魅力とともに、背景のストーリーから試合が紡がれていくさまに感銘を受けたんです」

 彼女はもともとボディービルで身体を鍛え、キックボクシング、ムエタイなど格闘技のトレーニングも積んでいた。プロレスは大好きだが、あくまでも見て楽しむもの。現実問題として中国でプロレスラーになることは難しい。

「夢ではありましたけど、まさか自分がレスラーになれるとは考えてもいませんでしたね」

 ところが、WWEが初めて中国でトライアウトをおこなうとのニュースを聞き、おもいきって応募。ここで彼女を含む7人がトライアウトを通過し、17年1月から3人がフロリダ州オーランドのWWEパフォーマンスセンターでトレーニングを開始した。人生が劇的に変化する瞬間だった。

「コンバットテクニックを磨き、フィットネストレーニングを積んできた経験が実りました。トライアウトでは緊張しましたけど、自信はあったんです。滅多にないであろうチャンスを活かせて、とてもエキサイトしましたね。と同時に、大きな責任感を抱いたのも実際のところです。私だけではなく、私しだいで中国やアジアからの女性がこのあとに続くかどうかがかかっているわけですから。もちろん、中国人としての誇りを持ってデビューを目指しました」

 そしてザイアは、WWEが開催した初の女子トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」にエントリー。この大会は17年5月に正式発表され、世界各国から続々と選手が集まり、32名で開催されるほどの規模となった。

同年7月におこなわれた1回戦のメルセデス・マルチネス戦がザイアのプロレスデビューにもなっていたわけだが、デベロップメンタル契約をかわした時点で彼女のトーナメント参戦が計画されていたのだろう。アジア出身の選手が求められていたのだ。なお、このトーナメントには日本からも参戦があり、宝城カイリ(現カイリ・セイン)が登場。優勝したカイリはWWEと契約をかわし継続参戦、スーパースターの座を勝ち取った。

 つまり、ザイアとカイリはWWEの同期にあたるのだ。実際、両者はNXTのリングで組んだり闘ったりして経験を積んでいる。18年3月にザイアがレイナ・ゴンザレスからの勝利でNXTデビューを飾ると、初試合から6戦目となる同年6月30日にザイアとカイリが初タッグを組み、レイシー・エヴァンス&バネッサ・ボーン組を破ってみせた。7月にはシェイナ・ベイズラーのNXT女子王座に初挑戦。18年8月には「メイ・ヤング・クラシック」に2年連続でエントリーされ、2回戦進出で一歩コマを進めた。9月にはイオ・シライ(現イヨ・スカイ)が合流し、ザイア&カイリとのトリオも実現しているのである。

 イオ・シライとは19年にシングルで何度も闘っており、カイリとイオを通じ日本の女子プロレスのテイストを体感したと言っていいだろう。

「カイリとイオにはものすごく尊敬の念を抱きました。洗練された技術、機敏な動きは精度も高い。そのうえでもっとも驚いたのは、言葉ではなく試合、リング上の動きでストーリーを語るんですよね。彼女たちと闘ったり組んだりすることは光栄であり、それこそが実践的な学習でもありました」

 言語の異なる国で自分の意志を表現するにはどうしたらいいのか。共通のハンディを克服しようとする日本人スーパースターにシンパシーを感じ、レスラーとしての表現法を学んだのではなかろうか。

 20年1月、ザイアが「ロイヤル・ランブル」に出現し、ビッグマッチ、プレミアムライブイベント初参戦。21年7月にダークマッチ枠で「スマックダウン」に初登場を果たすと、12月にナオミをアシストする形でメインロースター昇格。22年2月、敵対するナタリアからの勝利で、スマックダウン試合デビューを飾った。その後は、ショッツィとともにWWE女子タッグ王座戦線で闘い、スマックダウン女子王座挑戦者を決める試合にも加わった。また、昨年11月にはNXT女子王座にも再挑戦。今年に入ると1月の「ロイヤル・ランブル」に登場し、2月には「イリミネーション・チェンバー」出場権をかけたバトルロイヤルも闘った。が、ビッグタイトルには手が届かず、4・15モントリオールにおいてナタリアとのシングルで敗れたのを最後にWWE退団、フリーとなった。


<写真提供:東京女子プロレス>

 そして今回、東京女子への参戦が決定したのだが、フリー&改名第1戦となった8月17日にはアジャコング、VIVA VANとトリオを結成した。アジャ、VIVAとも東京女子と縁のある選手だ。

「東京女子への参戦が決まり、とてもうれしく思っています。日本の女子プロレスには長い歴史があり、多くのレジェンドが生まれていますよね。独自の歴史と伝統、その一部になれるのかと思うとものすごくワクワクしますね。日本の女子プロレスを経験することをすごく楽しみにしています。東京女子のリングで私の力、粘り強さ、そして気持ちを見せたいと思います。アスリートとしてはもちろん、異なるスタイルを披露することで日本と中国の懸け橋になりたいとも考えています。今回の参戦は、私の限界を押し上げる機会にもなるでしょう。ベストパフォーマンスをすることで、私の能力を日本のファンとプロレス界にお見せしたい。日本の豊かなプロレス文化を吸収し、自分のスキルとパフォーマンス能力を高めたいと思います」

 今回はとりあえずワンマッチ参戦とのこと。その内容と反響しだいでは、ザイアの活動範囲がさらに広がる可能性がある。それはすなわち、中国発女子プロレスの発展だ。

インタビュアー:新井宏

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