「いくつになっても青春!」49歳でデビューの53歳Himiko クラッシュギャルズ全盛時にあきらめた夢をかなえる!

【WEEKEND女子プロレス#55】

 女子プロレス界において、“25歳定年制”は完全に過去の遺物となった。現在では、年齢ではその倍にあたる50代を超えても現役で活躍するレスラーもいるほどだ。とはいえ、そういった選手たちは数多くの実績を積み上げジャンルの歴史を紡いできた大物ばかり。実際、ネームバリューは絶大で、若手以上の歓声を浴びることもしばしばだ。

 一方で、子どもの頃に描いた夢をあきらめ、プロレスとは完全に無縁の生活を送りながらも、あるきっかけからプロレスへの情熱が再燃、50歳手前で夢をかなえた選手がいる。ディアナのHimikoは、今年3月11日に53歳になった。プロレスデビューは2022年1月23日。50代突入目前の49歳でプロレスラーになり、レスラー生活は4年目に突入した。

 とはいえ、Himikoは高齢デビューを自虐ネタにしたイロモノレスラーでは決してない。「ホンモノのプロレス」を標榜する井上京子のディアナに入門し、京子とジャガー横田の目が光るプロテストを合格したのだ。年齢的には同僚の選手よりむしろレジェンドに近い。それでも彼女は厳しい練習に耐え抜き、堂々とリングに上がれるにようになった。その原動力は、彼女が夢を描いていた頃にあこがれたリングの原風景にあると言っていい。


「写真提供:ワールド女子プロレス・ディアナ」

 プロレスとの出会いは、幼少時に祖父母の家で見たプロレス中継。アブドーラ・ザ・ブッチャーのフォーク攻撃で相手レスラーが血だるまにされる。それがもっとも古い記憶であり、プロレスは怖いものというイメージが刷り込まれていた。

 が、中学1年生の頃にクラッシュ・ギャルズブームが到来。会場は女子中高生のファンで埋め尽くされた。

「カッコいい!と思ったのが最初です。それから女子プロレスのテレビ放送を全部見るようにしました。後楽園ホールはほとんど毎回行くくらいの大ファンになりましたね。入場曲が鳴った瞬間に大熱狂で、自分もそのなかにいたんですよ。地方では、千葉とか大宮スケートセンターにも見に行きました」

 同年代の女の子はみなクラッシュにあこがれた。そのなかで、彼女はすぐに自分もプロレスラーになりたいと思ったという。

「あのなかに私も入りたいと思ったんですよ。プロレスラーになるにはどうしたらいいのかと考えていた頃、テレビでオーディションのお知らせがあって、私も応募しました。そこから食べて食べて体重を増やして、60キロを超えて62キロくらいになりましたね」

 ただし、年齢が応募条件に達していない。それでも彼女はなんとしてもレスラーになりたいと、全女の道場に通い始めた。

「あの頃は1回500円とか、お金を払えば練習に参加できたんです。そこで練習生になって、まずはオーディションに受かるための基礎を学ぼうと考えました」

 道場では、のちにデビューしていくことになる練習生たちを何人も見てきた。仲良くなった練習生もいる。が、彼女はまだ中学生とあって、リングに上がらせてもらえるには至らなかった。

「もう立派なプロレスラーなんじゃないかってくらいの人たちがリングでスパーリングをしていましたね。それを横目に私はランニングマシンで走ったり、筋トレしたりしていました。どうしたらこの(リング)なかに入れるんだろうと思いながら…」

 その後もオーディションに応募。規定の年齢には達していなかったものの、練習生は書類選考には通過できたのだ。道場に通っていた特典でもあったのだが、身体が小さいこともあり、高校進学を機にプロレスラーへの夢を断念した。

「結局3回くらい受けました。でも自分よりガタイの大きい人がほとんどで、そういう人も落ちてるんだから自分なんか絶対に無理。そう自分に言い聞かせるようにして、普通の学生に戻りました」

 以後、プロレスから完全に遠ざかった。あえて見なくなったのではなく、自然消滅的にプロレスが頭から離れていったのだ。短大卒業後就職し、3年ほど勤めるとフランスとスペインに留学。帰国後も就職し、OLとして働いていた。

 しばらくして全日本プロレスが家の近くで興行をおこなったとき、なんとなく会場に足を運んだ。武藤敬司と曙がタッグを組んで出場した世界最強タッグ決定リーグ戦。いわゆる有名人見たさに出かけたプロレスで、あの頃の記憶が蘇った。

「プロレス熱が再燃しました(笑)。これでハマってしまって、男子プロレスをくまなく見るようになりましたね。ただそのときは、まだ自分でやりたいとは思わなかったです」

 ファンとして会場に出かけるうちに、プロレス好きの友人が多くなった。やがて女子プロ関係者とも面識ができ、スターダムを旗揚げした頃の高橋奈苗(現・奈七永)とも知り合った。久しぶりに見た女子プロレスが、スターダム。だが、まだレスラーになりたいとの気持ちにはなっていない。その頃、彼女が取った行動とは…。

「スポーツクラブ感覚でプロレス教室に行ってみました。さくらえみさんの『誰でも女子プロレス』の情報を聞いて一度行ってみようと思って。47歳くらいのときですね。同年代くらいの人もいたか? これがけっこういたんですよ。同じくらいか、もしくは年上の方もいましたね。なので、自分が浮いてるとかもなく。小さい子から大人まで、年齢に関係なくみんなで身体を動かす感じでした」

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