【JTO】6周年記念大会でサンダー誠己、運命の兄弟対決へ「兄を倒し、僕がJTOの象徴になる」
2025年7月11日、プロレスの聖地・後楽園ホール。
設立6周年を迎えるプロフェッショナルレスリングJTOが、団体の歴史において、いや、日本プロレス史においても前代未聞と呼ぶべき一夜を迎えようとしている。
メインイベントで行われるのは、QUEEN OF JTO選手権試合、王者・稲葉ともか vs 挑戦者・稲葉あずさの“姉妹対決”。
そして、セミファイナルに組まれたKING OF JTO選手権試合、王者・ファイヤー勝巳 vs 挑戦者・サンダー誠己の“兄弟対決”。
二組の肉親が、それぞれの団体の至宝を懸けて雌雄を決する。偶然か、必然か。運命の糸に手繰り寄せられるようにして実現したダブルタイトルマッチは、まさに“奇跡”と呼ぶにふさわしい。
今回、我々はその奇跡の中心に立つ一人の若武者に話を訊いた。
デビューからわずか1年。破竹の勢いでトップ戦線に駆け上がり、絶対王者として君臨する実の兄への挑戦権を掴み取った男、サンダー誠己。
その涼やかな表情の奥には、兄への敬意、王者への渇望、そして運命に立ち向かう者だけが持つ、静かで、しかし燃え盛るような覚悟が秘められていた。運命のゴングを前に、彼は今、何を思うのか。

■兄より先に決めた「プロレスラーへの道」。心に秘めた原風景
――デビュー1年という節目に、後楽園ホールのセミファイナル、しかもKINGのタイトルマッチ。最高の舞台が整いましたね。
誠己:ありがとうございます。いよいよこの時が来たな、というのが率直な気持ちです。デビューした時から、いつか必ずこういう機会は来るだろうと自分の中で思っていましたから。
――それは目標として、明確に意識されていた。
誠己:もちろんです。
――改めて、サンダー誠己選手がプロレスラーを志した原点からお伺いさせてください。
誠己:きっかけは、本当にたまたまテレビでプロレス中継を見たことでした。そして、その団体が僕の地元である大阪に来ると知って、家族で観戦に行ったんです。その日を境に、僕の人生は決まりました。会場の熱気、リング上の選手たちの圧倒的な存在感。そのすべてに心を奪われて、「プロレスラーになろう」と。
――その時、お兄さんであるファイヤー勝巳選手も一緒に?
誠己:はい、一緒に観ていました。
――プロレスラーになる、という気持ちを固めたのは、どちらが先だったのですか?
誠己:僕です。即決でした。観戦を終えて家に帰って、もう次の日には両親に「俺はプロレスラーになる」と伝えていたのを覚えています。
――お兄さんとは、その時「二人でプロレスラーになろう」といった話は?
誠己:いえ、特には。二人とも初めて生で見るプロレスの迫力に興奮して、「面白かったな」「また行きたいな」という会話はしたと思うんですけど、お互いがプロレスラーを目指すという核心部分については、まったく話していませんでしたね。
――では、それぞれが胸の内に秘めていたわけですね。
誠己:そうですね。僕はもう心に決めて、ずっと秘めていました。
――しかし、先にJTOの門を叩き、デビューを果たしたのはお兄さんでした。その時は、どのような心境でしたか?
誠己:もちろん、悔しさのようなものがなかったわけではありません。でも、それ以上に、先に道を作ってくれた兄の背中を追える立場になった、と。目標がより明確になったという意味では、僕にとっては良かったのかな、とポジティブに捉えていました。
――お二人は5学年差だそうですね。幼い頃は、やはりお兄さんが絶対的な存在だったのでは?
誠己:はい。兄弟ゲンカをしても、マウントは必ず取られていました(笑)。体格も力も、まったく敵わなかったです。
――プロレスごっこなども、かなりされたんじゃないですか?
誠己:それが、言うほどしていないんですよ。意外に思われるんですけど。
――そうなんですか。
誠己:はい。二人で一緒にプロレスの試合を観ることはよくあったんですが、それを真似て組み合う、ということにはならなくて。どちらかというと、それぞれが一人でプロレスの世界に没頭している感じでした。僕は大きなぬいぐるみなんかを相手に、頭の中で対戦相手を妄想しながら技をかけたりしていましたね。兄も、たぶん一人でそういうことをやっていたんだと思います。
――つまり、幼い頃からお互いを「ごっこの相手」ではなく、それぞれが独立した「一人のレスラー」としてプロレスと向き合っていたと?
誠己:今思えば、そうだったのかもしれません。
――その妄想の中の対戦相手が、1年という時を経て、現実の、しかも最高の舞台で目の前に現れたわけですね。
誠己:はい。この一年間、本当にいろんな経験をさせていただいて、自分の中ではあっという間でした。でも、この運命の一戦のために、僕はプロレスラーになったんだと思っています。

■「兄弟」は脱ぎ捨てた。咳払い一つで察知する、宿命のライバル
――その運命の一戦。対戦相手は「兄」であり、JTOの絶対王者「ファイヤー勝巳」です。今の心境はいかがですか。
誠己:世間では「兄弟対決」という部分がクローズアップされていますが、僕の中では、もうその意識はあまりないです。もちろん、血の繋がった兄弟であることは事実です。でも、リングの上では関係ない。彼は僕にとって、一人の選手として、レスラーとして、絶対に超えなければいけない壁。超えなければいけない存在。そこに「兄貴だから」という感傷や理由は一切ありません。
――今は一緒に暮らしてはいないそうですが、練習場などで顔を合わせる機会はありますよね。その時の意識は?
誠己:そうですね。他の選手と対峙する時とは、明らかに感覚が違います。空気が変わるというか……。
――先日、ジムで面白いエピソードがあったとか。
誠己:ああ(笑)。本当にたまたま同じ時間帯にジムに居合わせたみたいで。僕は彼の姿を見ていなかったんですけど、どこかから咳払いが聞こえたんです。その声だけで、「あ、いるな」って。
――声だけで分かった。
誠己:はい。自分でも少しびっくりしました。そこまで意識しているのか、と。血の繋がりなのか、ライバルとしての意識なのか分かりませんが、五感が研ぎ澄まされている感じはありますね。トレーニングの重量とかも、自然と目で追ってしまいますし、「兄貴がこれくらい上げてるなら、自分はもっと」という対抗心は常にあります。真似できる部分は盗もう、という気持ちもありますし。
――5学年差というと、昔は体力的な差も大きかったと思いますが、今の時点での差はどのように感じていますか?
誠己:現時点でも、まだ兄貴の方が勝っている部分は多いと思います。経験値も、王者としての実績も。でも、そこに埋められないほどの、絶望的な差があるとはまったく感じていません。むしろ、これからの伸びしろ、可能性で言えば、僕の方があると思っています。
――王者としてのファイヤー勝巳選手を見て、昔の「お兄ちゃん」との印象の違いは感じますか?
誠己:まったく違いますね。僕がJTOに入団した時から、彼はすでにKINGのベルトを持っていました。そして、この一年間、誰にもその座を譲ることなく、ずっと守り続けている。今のJTOの男子のトップは誰かと問われれば、誰もが「ファイヤー勝巳」と答えるはずです。その事実が、彼の存在をより大きく見せていますし、団体の顔を背負っているという風格は、弟の僕から見ても強く感じます。
――タイトルマッチが決まってから、お二人の関係性に変化は?
誠己:ありましたね。KING OF JTOランキング戦の決勝で僕が勝って、挑戦が決まってからは、明らかに変わりました。お互いに、意識的に距離を取っているというか。リングの外でも、一線を引いているような、感じがあります。
――やはり、やりにくさはありますか?
誠己:いえ、僕は全然。むしろ、その緊張感が心地いいくらいです。戦う準備はできています。
――試合では、兄の顔面に容赦なく張り手を打ち込むことはできますか?
誠己:行けたら、行きます。もう一発で。それが僕の覚悟を示す一番の方法だと思いますし、ファンの方々も、僕がどれだけの気概を持ってこの一戦に臨むのかを見ているはずです。遠慮や躊躇は、あのリングには必要ありません。















