方舟の天才、丸藤正道。GHC王座戦の”敗北”を胸に、『N-1』制覇という新たなる”証明”へ

プロレスという戦場で、巨体の力自慢でもなく、宙を舞う軽業師でもない。

常識を越え、発想の斜め上を行くレスラー、それを「天才」と呼ぶ。

プロレスリング・ノアという方舟で、その称号を25年以上も背負い続けてきたのが、丸藤正道だ。

キャリア27年。いまだ枯れぬ閃きは、むしろ円熟と共に深みを増す。

だがその天才も、GHCヘビー級王座奪取という目標を逃した。8月16日、後楽園ホールでのKENTAとの死闘。

30分を超える攻防の末、go 2 sleepに沈んだ。固い握手の裏に込められた友情と悔恨。

25周年記念にして最後かもしれぬ盟友とのタイトル戦。これを「敗北」と片付けるのは容易い。

しかし天才にとって敗北は終止符ではない。むしろ次章への狼煙なのだ。

「俺が弱かっただけだよ。でもN-1に出る。天は俺を見捨ててない」

試合後の丸藤は、悔しさを押し殺しながらも、すでに視線を前へと向けていた。

N-1 VICTORY――最も過酷なリーグ戦が、次なる証明の舞台である。

方舟と共に歩んだ25年。2000年、三沢光晴と共に新たな航海に乗り出した創設メンバー。

その存在は単なる選手にとどまらず、ノアの設計図を描き、舵を取り、時には自ら船体となって波を受け止めた。

史上初のGHCグランドスラム達成。その足跡はノアの歴史そのものである。

丸藤の闘いは国内に収まらない。AJスタイルズ、ウィル・オスプレイといった世界の天才たちと渡り合い、化学反応を生み出してきた。

その一方で、ようやく実現した飯伏幸太との一戦のように歯車が噛み合わぬ残酷さも経験した。

だが成功も失敗もすべてを糧にし、進化を止めぬ姿勢こそが、天才を天才たらしめている。

だからこそ、今回の“敗北”もまた丸藤の糧となる。

「若いヤツらも外国人選手も覚悟しとけ。今の俺はまだ強えぞ」

この言葉に込められた闘志。敗れた天才は、より危険な存在に変貌する。

『N-1』を制覇し、再びGHCの頂へ。

方舟の天才がどんな芸術を描き出すのか。我々は固唾を飲んで待つしかない。

そう、丸藤正道は終わらない。

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