佳境に入った新日本プロレス「ジュニアタッグリーグ戦」で存在感を増すデスペラードの魅力

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

新日本プロレスの「SUPER Jr. TAG LEAGUE 2025」は折り返し点。10・26新潟・魚沼大会を終え、AブロックはYOH、マスター・ワト組、DOUKI、SHO組が3連勝。BブロックはV2を狙う藤田晃生、ロビー・イーグルス組が3連勝している。

秋を通り越し一気に冬の寒さが襲い掛かってきた日本列島だが、プロレス会場の熱気は酷暑のままだ。


写真提供:新日本プロレス

個性あふれるジュニア戦士によるコンビが12チーム揃っている中でも、存在感を示しているのが「逆襲のならず者」エル・デスペラードとKUUKAIのニューコンビ。デスペラードがメキシコマットで大暴れしていたKUUKAIを “ある人” から推薦され抜擢した。

10・11埼玉・所沢大会ではIWGPジュニアタッグ王座奪取には失敗したものの、多彩な連携攻撃を披露し、ジュニアタッグの魅力を存分に発揮した。

今リーグ戦では1勝2敗と黒星が先行しているが、メキシコ仕込みのルチャ・リブレを土台とする合体戦法は、見所たっぷり。デスペラードは左ヒザに不安を抱えたものの、そのヘッドワークと、KUUKAIの恐れを知らぬ空中弾は鮮やかそのものだ。


写真提供:新日本プロレス

KUUKAIは「デスペラードさんにチャンスをもらって、ここで俺は闘っている。まだ終っちゃいない。結果を残して、またベルトにチャレンジする」と意気盛ん。

デスペラードも「俺たちはシングルもタッグも両方やれる。前を向いて行く」と、伸び代があると実感している様子。日に日に頼もしさを増していくパートナーに目を細めている。

若きKUUKAIに向けるデスペラードの眼差しは、かつての「ジュニア大使」獣神サンダー・ライガーを思い起こさせる。ライガーはジュニアの逸材を発掘し、全国区にのし上がる舞台を用意した。何人ものジュニア戦士がスポットライトを浴び、ひいてはジュニア界の底上げにつながった。

デスペラードもジュニアに限らず、同様の活動に勤しんでいる。様々な団体に参戦し、新日本のストロングスタイルだけでなく、その団体のファイトスタイルに臨機応変に順応。デスマッチのリングにも飛び込んでいる。まさに「ジュニアの刺激的カリスマ」。「まだまだ対戦したい選手がいる」と、更なる他団体出撃も視野に入れているようだ。

2014年の1・4東京ドーム大会に登場したデスペラード。鈴木軍の一員としてノア制圧に乗り出し、初のタイトル獲得がGHCジュニアヘビー級タッグ王座だったのは、日本マット界のさらなるジュニア隆盛を目指す今のデスペラードのスタンスを暗示していたのかも知れない。

新日本マットに復帰後も、IWGPジュニアタッグ王者に輝き、21年には待望のIWGPジュニア王座に君臨。同王座には5回、君臨しており、BEST OF THE SUPER Jr.も24年に優勝している。


写真提供:新日本プロレス

ホームリングである新日本マットにとどまらず「デスマッチのカリスマ」葛西純との血だるまの抗争、他団体に進出しあらゆるスタイルをこなし、女子選手との対戦やタッグも積極的に乗り出している。

幅広いファイトスタイルに加え、デスペラード(ならず者)のリングネームとは対照的な真摯で誠実な人柄もあって、男子、女子を問わずプロレス界の人脈、パイプが多方面に広がっている。

先日も「スターライト・キッド デビュー10周年記念大会」(10月20日、東京・新宿FACE)に出場。「キッちゃんファミリー」の一員としてファイトしている。

先輩マスクマンであるライガーの様に、ジュニアだけでなく日本マット界全体のパワーアップのために動き回っている。

常にどんなスタイルでも全力ファイトの姿勢と、マスクの下の素晴らしい人間性でファンの支持率も高い。闘病中のファンに優しく語り掛ける様子には心打たれるものがあった。マスク越しの目は温かく穏やかで、ファンは激励に涙ぐんでいたが、こちらまで目頭が熱くなってしまった。

「デスペラード」といえば伝説のバンド、イーグルスの名曲だが、プロレス界のデスペラードもマスクマンそしてその正体、いずれも最高だ。

Pages 1 2

◆プロレスTODAY(LINEで友達追加)
友だち追加