7月引退の“黄金の虎”4代目タイガーマスクが無法王者DOUKIに突きつけた、誇り高き“最後の牙”「佐山サトルのストロングスタイルでテメー、ブッ潰してやる」
■無法地帯に響き渡った、ストロングスタイルの咆哮

同日のメインイベント。
IWGPジュニアヘビー級王者・DOUKIと挑戦者・YOHの一戦は、新日本プロレスの誇るべきジュニアの歴史を汚す、目も当てられない凄惨なバッドエンドを迎えた。
DOUKIのセコンド陣による度重なる介入、凶器攻撃、レフェリーへの暴行。
ダーティーファイトの極みとも言える手法で王座を死守したDOUKIは、ベルトの授与を拒否し、あろうことか立会人の棚橋弘至社長に自らの腰へベルトを巻くよう要求する暴挙に出た。
権威が地に墜ちようとしたその時、怒りに震える男がリングに現れた。
数時間前に引退を発表したばかりの、タイガーマスクである。
不穏な気配に気づき場外へ逃れた極悪王者に対し、怒気を孕んだ声で痛烈な宣戦布告を行った。

「オイ!オマエ、こんな試合でファンの人が納得すると思ってるのか、コノヤロー!次、オレがやってやる!」
後楽園ホールが大きくどよめいた。
引退まで残り3ヶ月。ケガなく平穏にキャリアを終える選択肢もあったはずだ。なぜ、あえて最も危険で、無法を極める王者の前に立ち塞がるのか。
「オレはこの新日本プロレスで育ってないけど、佐山サトルのストロングスタイルでテメー、ブッ潰してやる、コノヤロー!そして!コイツをブッ潰して、チャンピオンのまま引退してやる!」
その言葉には、新日本ジュニアの歴史を背負ってきた者の強烈なプライドと、悪に染まったリングを自らの手で浄化せんとする絶対的な覚悟が込められていた。
「チャンピオンのまま引退する」。
前代未聞の野望である。しかし、その口から発せられると、単なるビッグマウスではなく、本当にやってのけるのではないかという期待感を抱かせるのだ。
■究極のケジメ。散りゆく虎が見せる最後の夢

タイガーマスクがDOUKIを標的に選んだのは、単なる義憤だけではないはずだ。
本当に守りたかったのは、「新日本プロレスのジュニアヘビー級」というブランドの誇りそのものだ。
長年、獣神サンダー・ライガーらと共に築き上げてきた、純粋で、激しく、そして美しいジュニアの闘い。
それを無法の限りで汚す存在を、許せるはずがなかった。
「佐山サトルのストロングスタイル」
その原点回帰とも言える言葉は、長年、自身を縛り付けてきた呪縛でもあり、同時に最大の武器でもあった。

引退を目前に控え、すべての重圧から解き放たれた今、最も純粋な「虎の牙」を剥き出しにしようとしている。
引退試合の相手がDOUKIになるのか、あるいはタイトルマッチがその前に組まれるのかはまだ分からない。
だが、確実に言えることは、タイガーマスクのプロレス人生の最終章が、決して湿っぽいお別れツアーではなく、血みどろの「闘い」の連続になるということだ。
散りゆく黄金の虎は、最後の最後まで我々に夢を見せてくれる。
極悪王者をストロングスタイルで叩き潰し、最高峰のベルトを腰に巻いたまま、リングに別れを告げる。
これほど劇的で、これほどプロレスラーとしての矜持に満ちた「ケジメ」のつけ方が他にあるだろうか。

7月7日。
七夕の夜空の下、黄金の虎はどのような姿でリングを降りるのか。
我々ファンは、その生き様を目に焼き付けるために、残り3ヶ月間、その一挙手一投足から一秒たりとも目を離してはならない。
タイガーマスクの最後の闘いは、今、最高潮の熱を帯びて幕を開けたのである。
<写真提供:新日本プロレス>














