富山智帆リングアナウンサー プロレスに心を動かされて「リングアナが本職」に
プロレス興行において、リングアナウンサーは、ある意味で大会の顔にもなる重要なポジションだ。主役はあくまでもプロレスラーながら、リングアナのコールは非日常空間への入口でもあり、団体のカラーも左右する。ライブにおける観客とレスラーの橋渡し役とも言えるだろう。
フリーのリングアナウンサー、富山智帆(とみやま・ちほ)は現在、数々のリングを担当。女子はもちろん、男子団体やデスマッチもコールする。あらゆるスタイルのプロレスで自己の個性を維持しつつ、その場に合ったコールを心掛けているという。はじめてのコールから13年目、定評あるコールを続ける彼女のポリシーとは? まずは、プロレスとの出会いから…。
「私はそもそもプロレスというものを知らずにきたんですけど、高校卒業後に鹿児島から上京して役者をやっていたんですね。当時所属していた事務所からオーディションがあると言われて受けた舞台のお仕事が、ハッスルという団体の企画する作品で、新宿FACEでの公演だったんです。そこにKGだった頃の朱里ちゃんが出ていて、TAJIRIさんやKUSHIDAさんも本人役で出演されていました。その舞台はリングでおこなわれるので、ロープワークや試合シーンもあったんですね。すぐにやられちゃう役でしたけど、私もそこに加わりました。その舞台で選手の方たちと知り合い、『よかったら(プロレスを)見においでよ』と声をかけていただいたんです。そこから見にいくようになり、団体がWNCになったときにTAJIRIさんや大原はじめさんから『会場のアナウンサーがいないからやってみないか?』というお話をいただきました」

舞台出演時には、5人組の女性ユニットが結成され、CDデビューも企画されていた。俳優とプロレスラーのコラボチームですでにレコーディングもすませていたというが、ハッスルの消滅でお蔵入りに…。もしもこれが陽の目を見ていたらどうなっていたか。朱里がアイドル活動、富山にも選手としてデビューする話が舞い込んだ可能性もゼロではない。
現実として、彼女にはスタッフとしての打診が届けられた。しかし、すぐにリングアナというわけではなく、会場案内的な役割だったという。
「本コールは日系の子が英語でやっていて、私には会場内のアナウンスとか、ルール説明の日本語担当みたいな感じでしたね」
その後、正式にリングアナのポジションを得ることに。2013年4月13日の大阪。ボディガー復帰戦がメインのWNCの大会だった。
「正規のリングアナの方が大阪に行かないので、『代わりに富山がやらないか?』と。私、実はずっとコールをやりたかったんですよ。正直、それまでどうしてやらせてくれないのかなと思っていました(笑)」
この大会がリングアナとしての正式デビューとなり、数カ月後にはREINA女子プロレスからもオファーが来た。WNCとREINA兼任となり、そこに東京愚連隊も加わった。単発興行からも呼ばれるようになり、フリーのリングアナとして次々と声がかかるようになっていく。その数は年々増加し、13年目を迎えた今年はFREEDOMS、GLEAT、P.P.P.TOKYO、プロミネンス、NEW BLOOD(スターダムの若手ブランド)を中心に、プロレス格闘技専門チャンネル、サムライTVのニュース番組『ニュース・スープレックス~龍』のナレーションも担当している売れっ子リングアナウンサーだ。
彼女がマイクを握るのはレギュラーの団体と、そうではない団体、さらには自主興行など単発の大会など多種多様。基本的に、リングアナは大会でひとりだ。では、大会によってコールのやり方を変えたり、意識が変わることはあるのだろうか。
「ありますね。基本的に私は英語でのコールを使うんですけど、団体によって使ったり使わなかったりします。たとえばNEW BLOODでは安藤(頼孝)さんがやってきたイメージを崩さないように。GLEATでは最初から(英語でと)オファーされているので、ずっとそれでやっています。Evolutionで代打をつとめるときもあるのですが、そのときは新土(裕二)さんがベースを作っているので、それに合わせてやるようにしています。こだわりは絶対に必要ですけど、自分を表に出すのがすべてではないので」

事前に確認を取り、団体、大会の要望に合わせられるようコールのやり方に変化をつけているという富山。では、リングサイドから見るプロレスは彼女の目にどう映っているのだろうか。プロレスを知らないところから業界入りし、ファン目線も持ち合わせているだけに、気になるところだ。また、リングアナはコールだけではなく、基本的にはゴングも鳴らす。試合記録もリングアナがつける場合が多い。ルールを把握するのは当然であり、レフェリーの動きも凝視していなければつとまらない。
「お客さん目線で見て、ルールで気になったところ、わかりにくいところをレフェリーにすべて投げかけたんですよ。それがわかればアナウンス時の言葉の使い方も変わるかなと思って。それをバーブ佐々木さんにぶつけたんです。たとえば、ノータッチルールってなんですか?とか。同い年で業界の大先輩でもあるバーブさんは、一つひとつ丁寧に答えてくれました。
また、リングアナの部分では新日本の阿部(誠)さんや、弥武(芳郎)さんにこういうときってどう説明していますかとか聞きます。自分でも使えるなと思ったところはパクらせてもらったり(笑)。そこは団体によっても変わりますね。
たとえば、FREEDOMSで固定のファンの方が多いところでは、トルネードルールだったらトルネードだとアナウンスするだけでいいですけど、地方ではどんなルールかを事前に説明したりします。シンプルにするか、ちゃんと説明するか、ですね」














