【新日本】棚橋弘至社長が語る、プレイヤーからの完全転換と経営者としての覚悟「トップスターの離脱は悲観していない。これは新日本プロレスの歴史であり、新陳代謝である」

2026年1月4日、東京ドーム。長きにわたり新日本プロレスの“エース”として団体を牽引し、幾度となく絶望の淵からリングを救ってきた棚橋弘至が、ついに現役生活にピリオドを打った。

アントニオ猪木引退興行以来となる超満員の観衆に見守られながらリングを降りた棚橋は今、スーツに身を包み、「新日本プロレス代表取締役社長」としての重責に専念している。

プレイヤーとしての情熱を胸に秘めつつ、経営者として冷徹な数字と向き合う日々。一時代を築いた主力選手たちの離脱という激震が走る中、新社長はどのような青写真を描いているのか。

前後編にわたるインタビューの前編では、現役引退直後の心境の変化から、経営視点での団体改革、そしてトップ選手の離脱を「新陳代謝」と捉える前向きな組織論まで、棚橋社長の現在地に迫った。


©新日本プロレス

■1.4東京ドーム大会で現役を退き、経営に専念。プレーヤーから経営者へ完全転換するにあたり、最初に着手した改革とは?

――:本日はよろしくお願いいたします。まずは、1.4東京ドーム大会での現役引退、本当にお疲れ様でした。大変な一日だったと思いますが、ご自身の中で完全燃焼はできましたか?

棚橋:はい、よろしくお願いします。そうですね……完全燃焼、できました。

――:私たちファンも、棚橋選手の最後の雄姿をしっかりと目に焼き付けました。さて、プレイヤーから経営者に完全転換するにあたり、最初に着手された改革というか、ご自身の中で変えた部分はどんなところだったのでしょうか?

棚橋:物理的なところで言うと、後ろ髪を切りました。

――:そうですね! まずトレードマークだった長い襟足をバッサリと切られましたよね。

棚橋:はい、まずは切りました。これは僕の中での「スイッチ」なんです。プロレスラーになってから、「プロレスラーたるもの、後ろ髪を伸ばして華やかに見せないといけない」という気持ちをずっと持ち続けていたので。でも、短髪のほうが意外と評判が良かったので安心しています(笑)。

――:すごくお似合いだと思いますし、ビジネスパーソンのオーラが出ています。社内的には朝礼などで「これからは経営に専念する」といった決意表明はされたのですか?

棚橋:1月5日の仕事始めの時に言ったと思います。5日は朝から出社して、その後は大田区総合体育館の大会へ向かったんですが、社員の皆さんには「改めて社長一本になりました。これからもよろしくお願いします」と伝えました。

――:朝起きた時のスイッチというか、心境に変化はありましたか?

棚橋:「ああ、もう今日から試合の準備をしなくていいんだ」という寂しさはありましたね。でも、やりきったという思いのほうが遥かに強いです。何より、僕の引退試合で、猪木さん以来の超満員札止めを記録できたので。

――:アントニオ猪木、そして棚橋弘至。東京ドームを超満員にできる、まさに歴史に名を刻む光景でした。ファンの胸にも深く刻まれましたし、プロレスがこれほどの熱気を生み出せるジャンルなのだと再認識しました。

棚橋:僕自身、いちプロレスファンだった時代に、猪木さんが作り上げた超満員の東京ドームを見て、それがプロレスラーを目指すモチベーションになりましたから。今回、東京ドームが満員になるあの景色を、今の所属選手全員に見せることができた。それが、プロレスラー・棚橋弘至が最後に残せた一つの遺産かなと思っています。

――:あの光景を目に焼き付けた若い選手たちが、「次は俺たちがこの景色を作るんだ」と奮起してくれることが、社長としては一番喜ばしいことですよね。

棚橋:一回、あの頂上の景色を見ているのと見ていないのとでは、今後のモチベーションが全く違いますからね。それが現実にできるんだということを、背中で見せられたのは良かったです。

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