『プロレス語辞典』著者・榎本タイキさんインタビュー「プロレスは明日の活力」

<キーワードをめぐる対話>

――(『プロレス語辞典』を拾い読みしながら)語録のチョイスが本当にいいなあと思います。(アンドレ・ザ・ジャイアントの)「木こり」なんて最高ですね。

榎本:これ、面白いですよね。ただのアンドレだけでもいいんですけど、それだけだとちょっと、と思って。

――「活字プロレス」、いいですね。『週刊ファイト』『週プロ』『ゴング』と、写真点数が少ない中で、どんなことが起こっていたかを文章で知るのが面白かった。今はネットがあるので、情報は瞬時に届くからいいですよね。

榎本:鈴木健さんの講座に通っていたんですけど、講座内でバックステージをインタビューする実習があって、DNAの試合を取材させていただきました。そこで、「ネットで結果も全部わかるが、そこにある空気や会場の熱気を感じて、表現することが大事だよ」と言われたのが心に残っています。「新日本プロレスワールド」などで試合の映像も見ることができるし、インターネットの恩恵は受けているんですけど、自分の目で見て感じることをやめないようにしよう、と思います。

――後楽園ホールや新木場1st Ringなどに見に行くと、距離感や息遣いなど、画面だけでは伝わってこないものがありますね。

榎本:座る位置によっても体験が違います。

――大日本プロレスの新木場で、蛍光灯が選手の頭に当たって、帰る時にも蛍光灯がまだ刺さっている(笑)

榎本:蛍光灯が「ボン」と音を立てて割れるなんて、見ないとわからないですよね。

――「なあ、金沢!」とか、よく出てきましたね(笑)

榎本:最初は金沢さんだけをチョイスしただけですけど、呼びかけを加えたら面白いというアイデアが出ました。そこから、(辞書順で隣の)「なあ、山本!」と、(ターザン)山本さんにつながると、リフレインがあってさらに面白い。

――編集もしっかりされていますね。

榎本:いい感じにできましたね。

――ここまでやるのは凄いと思います。なあ金沢……(笑)

榎本:文字によっては足りない文章もあったり。「か」が足りないとか、それを増やしたりバランスをとるのが大変でした。

 

<新しいプロレスから、新しい言葉が生まれてゆく>

榎本:描いている途中でもプロレス界の流れが速いと思いました。書いていた言葉が日が経つごとに変わっていくので、修正をちょこちょこやりましたね。

――技一つをとっても「ストレッチプラム」と「冬木スペシャル」が別の技で、冬木さん曰く指の角度が違うとか(笑)

榎本:それ、書きましたね(「理不尽大王」)。それもプロレスの面白さです(笑)。

――棚橋(弘至)さんの「ハイフライフロー」、岡林(裕二)さんの「ゴーレムスプラッシュ」とか、フライングボディプレス系の技もどんどん変わっていく。どれを選ぶか、誰を選ぶか、すごく大変だと思います。プロレス語は、1000語から削る作業が一番大変ですよね。

榎本:大変でしたね。どれを残したらいいか、悩みました。

――そういう意味では、『プロレス語辞典』の内容が基本になったとしても、この後に第二弾が続く可能性はありますか?

榎本:よく言ってくださるんですけど、1000語近い言葉がそんなに出てくるかというと……。

――十年経てば変わりますよ。

榎本:(セイシュン・ダーツ)青木さんが、辞書みたいに毎年度出していったらどうか? とおっしゃってました。

――技名も変わるし、一年経てば新人も入ってきます。

榎本:やれたらいいかも。

――(プロレスラー)名鑑は毎年出ます。それと同じように、プロレス語辞典を毎年出していってトレンドを追っていくのもいいと思います。

榎本:確かに、その時の言葉があります。言葉は生きていますし。

――レスラーが放つ旬の言葉はすごく多いです。「時は来た!」みたいなプロレスを代表するワードはもちろん、一年に何個か、これぞという言葉が生まれますね。

榎本:次回作を出すかどうかは別として、新たな言葉はメモっています。たとえば、「田舎のプロレス」という言葉は面白いと思っています。もともとは揶揄した言葉だけど、その言葉を通じて田舎の良さ、地方の良さ、そしてプロレスの良さが発信されていったこともあったので、言葉は生きていると思いました。

――言葉のプロレスには、見ているだけではないプラスアルファの魅力の伝え方があります。それは榎本さんの持っている力、絵の力を含めて、プロレスの間口を広げることにつながっているように感じます。青木さんがおっしゃっているように、毎年プロレス語辞典の年鑑とか出たら面白いですよね。

榎本:それができたら素敵ですね。ただ、覚悟がいります。今回は初めてだったので必死だったんですけど、今度は体験があるので(多少は楽)。やれたらいいですね。

――ここまでよくやったなと。

榎本:子供の頃の記憶もたぐるんですけど、それが正しいかの検証もしなければいけなかった。それが、自分のプロレスファンとしての振り返りにもなりましたね。

――単純にすごいなと思いました。ここまでよくやられるな。本を作るのはすごく大変ですよね。

榎本:出させていただいたのはありがたい。こんな機会はめったにないので。

――本はずっと残りますからね。この本を通じて多くの方々がプロレスに触れる機会が増えることを期待しています。

榎本:プロレスは本当に面白いし、行ったらつかんでくると思うので、そのきっかけになれるといいですね。

――ずっとプロレスを愛し続けられた理由は何でしょうか?

榎本:明日も頑張ろうって思えるんですよ。今は大人になったので、見方もいろいろですけど、レスラーが傷つきながら戦う姿を見てしまうと、ただただ感謝しかない。人生できついときにプロレスを見て、もう一回頑張ってみようと何度も思いました。今はその恩返しで、ただただ描いているだけです。

――同じ気持ちでいるファンの方は多いと思います。自分が落ちているとき、つらいときに、肉体的にハードな戦いをしている人が踏ん張っていて、それでも勝てず、最後の最後にチャンスをつかんで大逆転する、プロレスのドラマに魅せられる部分があるのでしょう。

――榎本さんにとってプロレスとは?

榎本:なんだろう……出てくる言葉は「明日の活力」とか、「明日の希望」とか。人生にすごく大事なものをいっぱい教えてくれるツールだなと、いつも思いますね。プロレスを見ていると心がきれいになるというか。

――プロレスって、何回見ても飽きないんですよね。

榎本:これだけ見まくっていたらいつか飽きるんじゃないかと思うんですけど、飽きないですね。一度見た試合でも、何回見ても楽しめます。こんなスポーツはほかにない。サッカーとかも面白いんですけど、同じ試合を何度も見ることはないと思って。

――確かに、初代タイガーマスクの試合とか、何回見ても凄い。あの天才的なムーブメントは凄いですね。

――最後に、このインタビューを通じて伝えたいことはありますか?

榎本:プロレスに感謝って言葉しか浮かびません。これだけ素敵な夢、元気や希望を与えてくれるプロレスに感謝しています。今はプロレスがだんだん盛り上がっている途中だと思うので、大爆発するお手伝いが一ミリでもできたら嬉しいなと思います。

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