「誰よりも地球で一番強くて美しい」ZONESが誕生するまで…全く知らなかったプロレスとの出会い


<写真提供:Evolution>

――デビュー戦の相手である山下りな選手とは、アマゾネス対決と言われましたよね。

ZONES まず、ZONESと言うリングネームをつけるにあたって、誰かとかぶらないかどうかネットで調べたんですけど、最初に出てくるのが「デスマッチアマゾネス」山下りな選手。「あー、でもこの人、リングネームじゃないな、まあ、セーフかな」って。だからそう呼ばれていることは知っていたんですよ。でもデスマッチファイターだし、なかなか絡むこともないだろうって思って、ZONESって付けて、しょっぱなアマゾネス対決みたいに、組んでいただいて。「あー、怒られたらどうしよう」みたいな。同じタイプの人が集まって、ぶつかることってあるじゃないですか。人間として。どうしようって思って。調べれれば調べるほど、血みどろの山下選手の写真ばかり出てくるので、デビュー戦なのに、チャンピオンだし、デスマッチファイターだし、どうなっちゃうんだろうっていう怖さはありました。

――それで実際に対戦してみてどうでしたか。

ZONES いやー、しょっぱなのタックルで本気で倒しに行こうと思って当たりに行ったんですけど、自分が弾き飛ばされたんですよ。そこでちょっとパニックになりました。豆鉄砲を食らったじゃないですけど、「え?」みたいな。なんでこの人、こんなに強いんだろうって。こっちは走り込んでタックルしているのに、ただ立っているだけの山下選手に弾き飛ばされて。これまで、練習相手がSUNNYとChiChiで、小さい選手しかいなくて、こんなに大きい選手とやったことがなかったので、プチパニックを起こしました。

――プロの洗礼を浴びたわけですね。

ZONES あとはすべての攻撃が痛くて。私も逆水平チョップとかやってみたんですけど、その十倍くらいの威力で返されて、胸板のところが血でにじみましたね。

――ChiChi選手やSUNNY選手たちもこの日デビューされたわけですが、やはり二人のことは練習生時代からずっと一緒で、同じ日にデビューと、ライバル意識はありましたか。

ZONES うーん…、二人とは同じところからスタートして、同じ日にデビューするという、仲間意識のほうが強かったですね。ただ、今だから言えるのは、試合順が私的に悔しくて。デビュー戦は、第2試合だったんですよ。

――デビューするZONESさんとChiChi選手とSUNNY選手の3試合だけの興行でしたよね。それで第1試合がSUNNY選手で第3試合がChiChi選手でした。

ZONES 私は「誰よりも地球で一番強くて美しい」というのをコンセプトにやっているから、誰よりも強くみたいな、という思いがありました。しかも相手も山下選手でチャンピオンだし、デビューが決まった時から、私はメインでやってやるぜ、みたいな謎の責任感があったんですよ。なぜかというとたぶん、自分がプロレスを知らな過ぎたからなんです。一番強そうな人って、たとえば剣道とか柔道の一番強い人って団体戦で大将って感じで最後に出るじゃないですか。そのイメージで私が「エボ女の大将になってやるぜ、」みたいな、謎の気概みたいなものがあったんですよ。それでデビュー戦の試合順が第2試合だったから、悔しい気持ちがあって。でもそれが今となっては良かったなって思っています。デビュー戦の時から第2試合だけど、メインのつもりでやってやるって使命感を持って戦っていたので。先輩がいないからこそ、デビューしたてだけど、責任と気概と根性だけでこれまでやってきた感じですかね。

--つねにメインの気持ちで試合をしているということですね。

ZONES ただ、師匠たちはお相手もあって、試合順を決めているし、デビューしたてで私たち3人に優劣はないし、メインとかじゃなくて、1,2,3試合という呼び方をしてくれたんですよ。


<写真提供:Evolution>

--たしかに、この日はデビュー戦の3選手の3試合しかなかったから、各試合とも均等だったと思えますね。デビュー戦の山下選手もそうですが、2戦目の相手も運命的とも言える松本浩代選手が相手でしたよね。

ZONES 松本選手も早々に当たったら怖いなって思っていた選手でした。髪型はデビュー前から今と一緒なんですけど、練習生になってから、女子プロレスの試合をたくさん見るようになって、「ああ、同じ髪形をしている人がいるなあ」って。もし試合とかで一緒になったら怒られたりするかなってちょっと怖さがありました。しかも同じパワーファイターで似ていて「うわー怖いなー」って。そしたら第2戦で当てていただいて。でも去年、デビューした年の上半期ベストバウトと言ってもいいくらい、引き出してもらいました。2戦目なのに場外乱闘もしたし、やったこともないのに雪崩式ブレンバスターもされたんですよ。

――デビュー2戦目で(笑)。

ZONES すごい怖かったんですよ。でも、全体的に、よく食らいついたという記憶はあります。

--それくらい一生懸命だったということですね。それが「ゴジゾネス」というタッグを組むようになって、今も関係が深いですよね。二人のタッグで印象的だったのは、昨年、OZアカデミーの横浜武道館大会でのタッグ王座の次期挑戦者決定戦(10月22日=対加藤園子&水波綾、対橋本千紘&優宇戦)ですね。他の5選手を見ても錚々たるメンバーのなかにZONESさんも入り込んで、ゴジゾネスをアピールできた試合だったんじゃないかと。

ZONES 気持ちは5匹の猛獣の檻に入れられた人間みたいな。キャリア差、技術差があったのはわかっていたんですけど、昨年の下半期のベストバウトくらいの試合でした。あの6人のなかにいて、3WAYタッグって無茶苦茶難しい試合だったんですよ。それに、めちゃめちゃハードで、すごいダメージだったんですよ。たしか3連戦か4連戦しているときの最後の試合で、めっちゃ体もボロボロで、最後は優宇選手にラストライドをバコーンッてやられて終わったんですけど、私にとっては最初のタイトルマッチができるかどうかのチャンスだったので、すごく気持ちが入ってました。終わった後、ビービー大泣きして、それもリングのところから客席の上のほうにいる人に聞こえるくらいで。松本さんには「泣くんじゃねえ」って何度もひっぱたかれて。でも、その姿がなぜか刺さったお客様が多かったらしく、あの試合を見て、エボ女に来てくださるお客様が増えました。


<写真提供:センダイガールズプロレスリング>

--それは本当にデビュー年のなかでも節目の試合でしたね。実績という意味では、じゃじゃ馬トーナメントの優勝(1月7日、新宿FACE)というのもありますね。その直前には参加選手による合同練習も行われたわけですが、同世代で他団体との練習というのもいい経験になった
んじゃないですか。

ZONES 本来であれば技術的に自分よりできている選手がいて、悔しがったり落ち込んだりするようなところだと思うんですけど、それよりも楽しいが上に来てしまいました。同世代、同期の人と練習したことが本当になくて。同期もいないので、言えないんですけど、気持ち的にキャッキャしていたというか(笑)。はしゃいじゃう気持ちでしたね。気持ちで負けなければじゃじゃ馬はなんとかなるだろうって思ってて、その技術的に足りないところもあるけど、気持ちで何とかしようっていう気持ちでした。

--それだけ同期とのつながりは楽しめたと。本番のじゃじゃ馬自体も楽しめましたか。

ZONES 自分が参加した選手の誰よりも楽しんだ自信はあります。

--優勝まで、トーナメント3試合あった中で特に印象的だった試合は?

ZONES 準決勝のChiChi(12月8日、新木場1stRING)との試合ですね。

――まさかここで当たるとは…といった試合でしたね。

ZONES でもやっぱりChi Chiに上がってきてほしかったというのはあります。同門対決を仙女のリングのメインでやれことになったので、それが印象深いです。じゃじゃ馬トーナメントって仙女の選手やかかわっている選手がSNSとかユーチューブとかですごく盛り上げてくださったりもあって、すごく認知度の高いトーナメントだなって。それもあってか、普段、私はあまり緊張しないんですけど、じゃじゃ馬トーナメントはめっちゃ緊張しました。ふだん緊張しない分、息が上がってしまって、第1試合の丸森レア選手との試合も7分くらいやった気がするんですけど、ふだんの7分よりも全然、息があがってしまって。控え室に戻ってからも息が整わないんですよ。緊張しているから。間に2試合くらいあって、同じ日に準決勝だったので、今までと違って、息が上がったまま、試合開始というところが今までとは違っていました。でも、絶対負けられないというなかで、絶対に私が一番強さを見せると思っていたし、Chi Chiは気が強い、ど根性ファイトみたいに言われていますけど、私は誰にも負けないつもりで、エボリューションの中でも一番で、業界でもトップになるつもりでやっているから、気の強さでも全然負けたくなかった。それプラス、技の強さと体の強さを持って行けば絶対勝てると思っていたので、気持ちをすごく持って試合したと思います。

--それが優勝の要因でもあったんでしょうね。さて、最後に、ZONESさんが良く語られている「誰よりも地球で一番強くて美しい」というキャッチフレーズはどういった思いで付けられましたか。

ZONES 言霊と言いますか、最初から大きいことを言って、なんだこいつと思われても、それにどんどん近づいて行きたいなという思いを込めています。絶対にそうなる! という気持ちで付けました。

――わかりました。地球上で一番強くて美しくなっていく様をこれからも見続けていきます。 

インタビュアー:泉井弘之介

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