今春から大学生のスターダム妃南。末っ子が切り拓いた三姉妹プロレスラー

事実、プロレスの実績では妃南は羽南と吏南の後塵を拝している。羽南がフューチャー・オブ・スターダム王座の最多防衛記録を樹立すれば、吏南がそれを更新してみせた。羽南はシンデレラ・トーナメントで優勝しタッグのベルトも巻いた。吏南は吏南で、若手ブランドNEW BLOODのタッグ王者として若手大会のカリスマ的存在にもなっていった。
「羽南が防衛していたときは、さすがだなと思って見ていたんですけど、吏南が獲ってからは焦りが出てきたし、何もない自分が情けない。自分はプロレス向いてない、やめた方がいいのかと思うようになりましたね」

劣等感が日常生活にも影響を与えていた。姉妹で比較されるのが苦痛だったのだ。幸か不幸か、高校生になってから勉強が楽しくなった。成績も良好。ならば学業に専念し、別の道を探す手もあると考えた。
「大学に行くのは小さい頃からの夢でもあったんです。だから大学には行きたい。じゃあプロレスはどうするかでけっこう悩みましたね。ここまでやってきて、何も残せないままプロレスをやめる。だとすれば、この期間は何だったのとなりますよね。逆に、今後も無意味な状態が続くようならやめた方がいいとも思えるし。そんななかで、やっぱり負けてられないと思いました。ここでプロレスやめても結局はあとで恋しくなるだろうし、両方ともいましかできない。だったら両方とももっと頑張ってみようと思いました」

進学を決断したのは、受験の約1カ月前。複数の大学を受けずに一校に集中して答えを出した。そしてプロレスでは、ユニット消滅で袂を分けた天咲光由に挑み、フューチャー王座を初戴冠。両方で結果を残してみせたのだ。しかも高校の成績は学年ナンバーワン、卒業式の総代にも選ばれた。代表者として卒業証書を受け取ったのだ。高校の成績1位で、プロレスの若手王者。さらには漢字テストで校内1位も獲得したという。“3冠王”妃南は、3月3日の“ひな”祭りに高校卒業。しかも卒業式当日は後楽園で試合があり、学校から会場に直行した。しかし、試合にはほとんど絡むことなく35秒で終了。節目の一日に、ある意味印象深いオチがついたと言えそうだ。
「卒業式は、友だちとちょっと写真撮ってバイバーイって感じで、ちゃんとみんなとは話せなくて。そこから2時間半くらい車に乗って会場入りも、試合はすぐ終わっちゃって。まあ、それはそれで思い出かなって(笑)」

「写真提供:スターダム」
そして、4月7日が大学の入学式。JDレスラーとしての生活がスタートを切る。一方、吏南は高校を卒業し、プロレスラー専念を決めている。
「ここから吏南にもっと差をつけられてはいけないし、私は大学生だからというのを理由にはしたくないですね。プロレスはプロレスで全集中、学校は学校で全集中。切り替えを大事にして、どちらも一本の気持ちでやっていきたい。新しい領域に踏み込んでいきたいと思います!」
小学生から始めた三姉妹が、現在も全員プロレスを継続させていることじたいが奇跡的。妃南が夢中にならなければ、羽南も吏南もレスラーになっていたかはわからない。三姉妹レスラーの生みの親とも言える妃南だからこそ、三姉妹唯一のJDレスラーにかかる期待は大きいのだ。

「写真提供:スターダム」
インタビュアー:新井宏














