【宮本和志インタビュー】天龍源一郎・川田利明・石澤常光に鍛えられた戦士、福島で「プロレスオリンピック」を開く!

<先輩レスラーを追いかけて>

――当時は渕正信さん、川田さんが残っていらしたと思いますが、その時の全日本プロレス内部はどんな感じでしたか?

宮本:渕さん・川田さん・(太陽)ケアさん、あと外国人レスラーが全員残っていたので、自分的には前と変わらず。最初のシリーズは四大会だけ売り興行があったので、ノアの選手が戻ってきたんです。以前と変わらない風景でやっていたので、何も変わらなかったです。それに、当時は今と違って巡業も一ヶ月近くあったから、その間はずっと忙しくて、何も感じませんでした。

――日々の新弟子業務が大変なんですね。疲れたことは?

宮本:新弟子として、プロレスの仕事ができる嬉しさの方が大きくて、川田さんのコスチュームを洗えるのが嬉しかったです。

――ファンじゃないですか(笑)

宮本:すぐに川田さんの付き人につかせてもらって、洗濯も任せてもらったんですけど、一番最初のディファ有明大会の次、後楽園で洗濯物を渡したら「このアンダータイツ、俺のじゃないぞ。俺のは二枚生地で違うんだよ!」と言われました。自分の洗濯物と一緒に洗濯していたので、あ、やばい、もしかして……と思って、いま履いているのをよく見たら、自分が川田さんのを履いてた(笑) 謝ったら、「いいよ、お前にやるよ!」って。そのアンダータイツは宝物にしてあります。失敗だらけでしたけど、川田さんはああ見えてシャレが利く人で、いろいろな失敗も許してもらいました。今思うとヒヤヒヤものですね。

――普段の川田さんはどんな人ですか?

宮本:リング上の川田さんは寡黙で、何もしゃべらない。「ザ・男」って感じですけど、リングを降りるとたくさんしゃべる方で、食事の時はお酒も飲むしシャレも言うし、ギャップがあって面白かったです。

――リング上ではボコボコに?

宮本:それがレスラー流の愛情表現ですね。僕は天龍(源一郎)さんとやる機会が多くて、デビュー二戦目で対戦させてもらったんですけど、のどちんこにモロに入るチョップ、グーパンチやサッカーボールキックを散々喰らいました。天龍さんの顔面キックで鼻の骨を何回か折っているんですけど、一度鼻血が止まらなかったことがあって、試合が終わってから仕方がなく病院に行ったら、「鼻の粘膜が中で裂けて、鼻の穴がひとつにつながっている」というので、そのまま緊急手術。それがシリーズ開幕戦で、鼻を縫って、前歯が折れたまま、巡業に行きました……。前歯は上下とも差し歯です。

――天龍さんは、猛攻撃で根性を試すようなところがありますね。

宮本:逆に「自分のおでこにシューズの跡をつけてやる」という気持ちで戦っていました。ファン心理では、勲章ですよ。天龍さん番(記者)の小佐野(景浩)さんに「天龍さんのシューズの跡、ここにつけてきますからね!」と話したりしていました。

――天龍さん相手で、臆してしまうところはありましたか?

宮本:それはなかった。

――ハートが強いんでしょうね。

宮本:プロレスが好きというのもあります。

――ファンの人に対して弱気な自分を見せるのは失礼……

宮本:それもそうですし、元子さんが見ていてくださったので、期待は裏切れないという思いがありました。

――天龍さんは技を次々とかけてくる一方、技をいくらでも受けてくれる懐の深さもありました。宮本さんにとって、男・天龍源一郎はどんな人ですか?

宮本:プロレスの世界での「親父」、「ザ・親父」ですよ。「男」とか「親父」とか、泥臭い表現が似合います。

――酒の席でも?

宮本:当時(天龍さんが経営していた)「鮨處 しま田」に呼ばれると、覚悟していかないと。ある時は瓶ビールが山のように積んであって、嫌な予感がするなと思っていたら、「おい宮本、今日は瓶ビール百本用意したからよ、全部飲むまで帰さないからな」って(笑)

――えぐい(笑)

宮本:でも、そこまで飲んで、ぐでんぐでんになって潰されて帰って、はっとなって目が覚めたら、ポケットのいたるところから万札が出てきて……

――知らないうちに?

宮本:天龍さんにご祝儀が出ると、弟子にそのまま渡してくれるんです。男気があるなと思いました。天龍さんのためなら何でもやろうという気になります。

――そこが、「懐が深い」と呼ばれる所以なんでしょうか。

宮本:新弟子にとっては一万円でも二万円でも嬉しいですから。あと、天龍さんに関する失敗がありました。デビュー前、広島・尾道に巡業で行ったんです。その日はオフで、普段ならジムを探すんですが、地方すぎてジムがないので海岸沿いをランニングしていたら、宿泊しているホテルの屋上で、デカい人が日焼けしているんです。よーく見たら荒谷(望誉)さんっぽいんです。「荒谷さん!」と声をかけたら「うぉー!」と天龍さんの声(笑) 「あ、やばい」と思って、屋上まで駆け上がって「すいません天龍さん、間違えました!」って謝ったら、怒らずニヤッとしてくれて。

――確かに似ています(笑)

宮本:歩き方も似ていて、荒谷さんかな?と思ったら天龍さんでした(笑)

――懐が深い先輩プロレスラーとの出会いが、スタイルの確立にもつながったんですね。

宮本:天龍さんの影響が一番。天龍さん・川田さんの二人です。

――受けも攻めも含めて、男らしさを見せながら……。

宮本:逆水平チョップも大切にしていきたいと思います。

――逆水平は天龍イズム継承の証ですね。

宮本:天龍さんから受けた影響はすごく大きい。

――黄色系のコスチュームも天龍さんの影響ですか?

宮本:元子さんから「あなたは黄色ね」と言われたんです。よくよく考えると、デビュー戦の相手の馳(浩)さんも、僕が付き人についていた川田さんも黄色。そういう意味かと、ありがたく頂戴しました。

<次ページ:強さの探求、総合格闘技との邂逅>

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