【編集長コラム】「2018年の棚橋弘至VS鈴木みのる」

1・4東京ドーム大会もすでに「思い出」になるほど、プロレス界の時計の針は早く進んでいく。新日本プロレス1・27札幌大会では、IWGPインターコンチネンタル王者・棚橋弘至が鈴木みのるの挑戦を受けて立つ。

1・4決戦では棚橋はインターコンチネンタル王座V4を達成し、みのるはNEVER王座から陥落している。しかも坊主頭になるなど、みのるは屈辱を味わわされた。

それでも、みのるは「ギラギラしている」(棚橋)。実際「次のターゲットはインターコンチネンタル王者・棚橋」と、満天下に認めさせた1・5後楽園ホール大会の迫力は、さすがだった。その全身から醸し出すどん欲さは、誰もかなわない。

棚橋もIWGPヘビー級王座戦線とは一線を画し、インターコンチネンタル王座を光り輝かせることで「エース復権」を狙っている。

プロレス界で長くトップに君臨している棚橋とみのる。オカダ・カズチカや内藤哲也に新日マットのど真ん中を譲ったかと思いきや、まだまだ簡単に引き下がる気は、さらさらないのだ。

そこで思い出されるのが、2012年10月8日、東京・両国国技館で行われた「王者・棚橋VS挑戦者・みのる」のIWGPヘビー級戦だ。

決戦前には稀にみる激しい舌戦が展開された。みのるの「プロレスごっこ」という激しい言葉に、棚橋は珍しく色をなし「そういう自分はプロレスごっこも出来ないじゃないか。受け身を一からやり直せ!」と反撃。

なおも、みのるは「昔のレスラーや関係者、ファンにサーカス、曲芸と言われるのはおまえがチャンピオンでいるからじゃないのか」と挑発。棚橋は「そのへらず口を黙らせてやる!」と激高した。

歴史は繰り返されるというが、2017年のベストバウト賞を総なめにした「オカダVSケニー・オメガ」への一部の意見を思い起こさせる。

「2012年の棚橋VSみのる」は、棚橋が敢えてオーソドックスな技を多用し、ヘッドロック、足四の字固めなどを繰り出した。

特に足四の字の攻防では「1995年の新日本プロレスとUWFインターナショナルの対抗戦」を彷彿させた。また、足四の字をかけられているみのるが「折ってみろ!」と棚橋を挑発。これは「1988年の猪木VS藤波」を想起させた。

棚橋の左腕に巻かれたテーピングに、噛みつくみのるには、ショータ・チョチョシビリ
の柔道着に歯を立てた「1989年の猪木の勇姿」が重なった。

随所に新日本プロレスの歴史絵巻を見ているような「名勝負」だった。背中がゾクゾクしたことを今でも克明に思い出す。

まさに死闘。精も根も尽き果てた棚橋が、恒例のエアギターも1度だけ披露し、リングサイドを一周してファンサービスにも努めた。その姿は「これが俺のプロレスだ!」と言わんばかりだった。

「今も引退してからも、プロレスがずっと好き」とバックステージで涙ぐみながら語る棚橋。長年、プロレスに関わって来た者として胸がジーンと熱くなったものだ。

2012年の一戦からは5年半が経過した。今は棚橋もみのるもIWGPヘビー級戦線の最前線からは一歩引いている。

とはいえ、チャンスを虎視眈々と狙っている。天下取りへの意欲は、いまだ赤々と燃えさかり、プロレスに人生のすべてを打ち込む姿勢に、揺るぎは微塵もない。

棚橋の決め台詞「愛してま~す」は、もちろんファンにも向けて言っているのだろうが、もしかしたら、人ではなく「プロレス」に対しての思いなのではないか。それだけ棚橋はプロレスが好きなのだ。棚橋はプロレスを愛している。

みのるも表現の仕方は違うが「プロレスにとりつかれている」ことは間違いない。

闘いの歴史を積み重ね、円熟味を増した二人が激突する「2018年の棚橋とみのる」。1・27札幌決戦のインターコンチネンタル戦を、見逃すわけにはいかない。

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