1・4東京ドーム大会でIWGP世界ヘビー級王座を争う王者・SANADAと挑戦者・内藤哲也 真のエースはどちらだ?
試合のみならず、リング内外でのプロレスラーの魅力をお伝えして行きます。
2023年のプロレス大賞MVPには新日本プロレスの内藤哲也が輝いた。タイトル戦線には絡まなかったものの、真夏の祭典G1クライマックスを制したことが評価されたという。
内藤と最後まで争ったのは、ジュニアの高橋ヒロムだった。現IWGP世界ヘビー級王者・SANADAは早々に選考レースから脱落している。元々、下馬評でもSANADAを推す声は今一つだった。
4月にオカダ・カズチカからベルトを奪取し3回、防衛を果たしている。今年の新日本プロレスの頂点に君臨し続けたのに、である。
公私に渡る兄貴分・西村修は「きれい。さわやかすぎる」と心配する。SANADAのファイトスタイルもマイクアピールも、整い過ぎているということだろう。
全日本プロレス育ち、アメリカ遠征で成長した闘い方は、トラディショナルであり、洗練されている。令和風の味付けもされているが、ファンのハートをつかみ取るには、何かが足りない。クールすぎる、表情が乏しい、淡々とし過ぎて人間臭さが感じられず熱量が足りない、小さくまとまっている、などという声も聞こえてくる。もちろんそれは、大きな期待への裏返しなのだろうがファンの目は厳しい。
内藤も厳しい言葉を投げかけているが、厳しさだけでなく温かさも感じさせる。SANADAはロス・インゴ・ベルナブレス・デ・ハポンのかつての同志だ。
元より、若い頃から「新日本そしてプロレス界が発展するためには…」と、俯瞰の目で大局をとらえてきた内藤である。新日本を人気、実力ともに支えるべき男なのに、もう一歩ブレークできないSANADAを歯がゆく思っているはず。
SANADAに内藤イズムを見せつける大舞台が用意されている。24年の幕開けを告げる1・4東京ドーム大会のメインイベントである。
王者・SANADAに内藤が挑戦するIWGP世界戦。最後にドームの長い花道を入場してくるのはSANADAだが、MVP男・内藤への歓声が上回りそうだ。
内藤は感情表現が豊か。コメントも本音を巧みな味付けで発し、エスプリが効いている。表情も変幻自在。クールに装うこともあるが、そんな時でも熱いものが伝わって来る。ファンにしても感情移入しやすい。サポーターもアンチも熱気がこもる。
ファンを乗せ、その応援の熱に自分も乗るという、まさに相乗効果で内藤人気は爆発した。
若き日の内藤と酒席を共にしたことを思い出す。「乾杯」の音頭も、当時話題になった内藤発言「まーずーは」を引用。「まーずーは乾杯!」で、場がワッと沸いた。参加者一人ひとりに目配り気配りし、大いに盛り上げていた。宴会部長もできるのだ。
タイプは違うが、自然なファンサービスで人を魅了する棚橋弘至に負けず劣らずの内藤に「応援します」という人が続出していた。
その棚橋は「自分が今年のMVPを選ぶならSANADA。SANADAがチャンピオンとしてしっかり試合をしたから、他の選手にも目が行って評価される。すべてはSANADAありきだ」とコメントしている。
SANADAはもっと評価されるべきという希望も込めている。棚橋らしく愛にあふれている。
歓喜、無念、哀しみ、激怒…ありとあらゆる情念を感じさせ、その表情ひとつでファンを熱狂させた猪木さん始め、新日本のエースは人間力が欠かせない。
内藤がSANADAを人間力で下し、夢だったドームでの「デ・ハポン」の大合唱を実現させるのか。はたまたSANADAが魔性の力を手に入れ、内藤を退けるのか。
かつて新日本の入門テストに受かった内藤と、落ちたSANADA。紆余曲折を経て、今はSANADAがチャンピオンとして内藤を迎え撃つ。まるで大河ドラマのようだ。万感の思いがSANADAの胸をよぎるだろう。
今こそ、悔しさ、悲しさ、そして王者の意地…すべての感情を解き放ち、リング上で爆発させてほしい。
1・4決戦は極上の闘いになること必至だ。
<写真提供:新日本プロレス>
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