闘魂スタイルの中嶋勝彦が猪木流でまたまた仕掛けた さて斉藤兄弟の弟レイどうする

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

三冠王者・中嶋勝彦の「闘魂スタイル」に浸食されつつある王道・全日本プロレス。1・27東京・八王子大会では芦野祥太郎がベルト奪回に臨んだものの失敗してしまった。

中嶋が芦野を仕留めたのは腕固め。“闘魂”アントニオ猪木が“大巨人”アンドレ・ザ・ジャイアントを世界で初めてギブアップさせた伝説の「闘魂名勝負」(1986年6月17日、愛知県体育館)を意識していることは間違いない。

思えばV1戦の宮原健斗、V2戦のチャーリー・デンプシーも、この技でトドメを刺している。挑戦者たちを「強かったよ」と称えながらも、着実に防衛回数を積み重ねてきた。

まさに強い王者ぶりを発揮しているが、V4戦に名乗りをあげてきた斉藤兄弟の弟レイに「斉藤兄弟なのだろう。二人で来いよ」とうそぶいた。

1対2のハンディキャップマッチ。これも決してジョークとは思えない。実は猪木さんは1対2どころか、1対3の変則タッグマッチに2度も臨んでいるのだ。

82年11月4日、翌83年2月7日、ともに今はなき東京・蔵前国技館だった。相手はラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇のはぐれ国際軍団。当時、同軍団と抗争を展開していた猪木は「三人まとめて、やってやる」と変則マッチに持ち込んだもの。

猪木は三人全員を倒す。はぐれ国際軍団は一人でも猪木を仕留めれば勝ちという特別ルール。もちろん、さすがに勝てるはずもない。猪木は最後の一人に敗れたものの(第2戦は反則負け)大きな話題を呼んだ。

斉藤兄弟は世界タッグ王者を保持するスーパーヘビー級。一人でも大変だ。いや、実際に中嶋は1・14後楽園大会で世界タッグ王座に挑戦した一戦で、レイのアイスバイン(アッパー拳底)にピンフォール負けを喫している。

1対2変則マッチを口にしたのは、実現はともかく、レイへの倍返しを頭に置いた陽動作戦だろう。レイはDDTのD王GPに参戦するなど、シングルプレイヤーとしても着々と実績を積み重ねている。「二人でかかってこい」と言われて、腹が立たないわけがない。

元より兄ジュンは沈着冷静に戦局を見据え、レイは熱く突進するタイプ。かつて誰も手出しできなかった小島聡の“聖域”鼻テープをむしり取とり、むしゃむしゃと食べてしまうなど、熱くなると誰も手がつけられなくなる。中嶋の挑発に我を忘れると、思わぬ暴走に走ってしまうかも知れない。

レイはアンドレを思い出す巨漢だ。ねじり倒してレイの腕を絞り上げる中嶋。となれば、それこそ猪木VSアンドレの名勝負の再現である。

レイをおちょくり、舌戦を仕掛けた中嶋。当初は唐突感が否めなかった闘魂スタイルだが、継続は力なり。風車の理論で否定的意見をも話題にするという意気込みさえ感じる。このまま防衛を重ね「闘魂スタイル」完成の青写真を描いている。

 

燃える闘魂の闘魂に、ストロングスタイルのスタイルを合わせたであろう「闘魂スタイル」とは、最上級の強さを表現する文言として使っているはず。

全日本プロレス電撃参戦からの3か月は勢いのまま突っ走ってきた中嶋だが、体格差のあるレイを迎えての防衛戦は、真価が問われる一戦だ。

もちろんレイも「アイツの持っている三冠ベルトを必ずここ全日本プロレスに戻してやる」と意気込んでいる。中嶋の蹴りをその巨体で弾き飛ばすのみ。

中嶋が全日本プロレスを闘魂スタイルに染め上げるのか。それとも巨体を躍動させるいかにも全日本スタイルで、レイが三冠ベルトを取り戻すのか。目が離せない大一番となった。(文中敬称略)

<写真提供:伊藤ミチタカ氏>

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