7月から「経営専念」を宣言したサイバーファイト高木三四郎社長に聞く、現状と今後の展望【後編】

⑥プロレスラー社長のやりがいとは?

―――そして、プロレス社長のやりがいとはという質問に移りたいと思います。新日本プロレスでも棚橋弘至選手が代表取締役社長に就任しました。やっぱりレスラー社長というのが今注目を浴びていると思うんですね。いわゆる背広組と呼ばれていた人たちに経営を切り離してやるのと、プロレスラーがそのまま社長になって采配することについて、やっぱりレスラーが社長をやったほうがいいというお話を以前高木社長には伺ったことがあったんですが、その辺は今はどうですか?

高木 いいというか、そのほうが選手とうまくいくんじゃないですか。

―――調整しやすいという感じでしょうか?

高木 そうだと思いますけどね、やっぱり。これはすごく難しいですけど、本当は多分、ちゃんと経営ができる人が経営者をやったほうがいいと思います。

―――プロレスは特殊な世界だなというふうにも思いますし、痛みを一緒になって感じている人のほうが良いという。

高木 そういうのもどうかなと思うんですけどね。それもどうなんだろうな、みたいな。なかなかプロレスが一般的にならないのって多分、そういうところもあると個人的には思うところです。だから本当は、もうちょっとちゃんとビジネスとしてもスキームを作っていかないと、なかなか参入しづらくなってしまう業界になってしまいそうな気がしていて。野球とかサッカーとかバレーとかバスケとかというのは、やっぱり参入しやすいというか、参加させていただけるじゃないですか。プロレス団体だけじゃないですかね、こうして企業がちゃんとしたところがついてというのが少ないのも。だから、やっぱりそこはすごく感じますね。もうちょっと参入しやすい環境作りみたいなことをやっていかないと、ちょっと未来がないんじゃないかなとは思ってしまいますけどね。

―――なるほど。

高木 それと棚橋選手が社長になったことというのは関係ないと思うんです。やっぱり単純にすごいことだなと思いますし、逆に言うとまず新日本プロレスの社長兼レスラーというのはアントニオ猪木さんとか藤波辰爾さんだったり、錚々たる方々がやっていたわけだから、そこに棚橋選手の名前を連ねるわけなので。やっぱり、これは本当に業界にとっても明るいことだなとは思いますけどね。

―――高木社長は、プロレスラー社長としてのやりがいみたいなものというところはどんなところに感じていますか?


©DDTプロレスリング 新幹線プロレス

高木 自分はやっぱり企画を立てる側のプロレスラーなので、そういう意味でのやりがいという部分で言ったら、やっぱりいろいろな企画を立案して、それがお客さんとか世間に伝わると受けるみたいなことだと思うんですよ。ただ棚橋選手の場合はちょっと違うと思います。でもやっぱり、その象徴としての社長像というのは僕はありなんじゃないかなと思っていて。これはすごく表現が難しいんですけど、プロレスというのは何か一座みたいな空気感というのがあるじゃないですか。そういう意味においては、これを束ねる人、というのは座長という感じなんですよね。やっぱり棚橋選手だったりいろいろな社長レスラーの方々がいらっしゃいますけれども。やっぱりまとめ上げるというところで、そういう人が就任するというのは、中はまとまりますよね。だから、そういう意味ではすごく理にかなっているというか。いろいろなことが年末年始に起きたわけじゃないすか。その中で一つの会社をまとまってやろうというところにおいてはすごくいい人選だなと思います。

―――私からみていると、社長レスラーって大変だなという。ここ何十年か見ていますけど、社長レスラーをやられている方ってコンディション作りというのが結構しんどい部分があると思うんですよね。

高木 だからそこは不安に思いますよね。でも、棚橋選手は疲れないと言っているぐらいなんで、大丈夫なんじゃないかなと思いますけどね。

―――ご自身が企画して立案したものが、お客さんに喜んでもらえるという部分がものすごく何にも代え難い喜びなんですかね。

高木 やっぱりそうですね。そういう意味では、企画したものが反響を得られるというのはすごくありがたいなと思います。

―――年月を重ねて、若いときと今と、その喜びの度合いというのは何か変わってきたりしますか?

高木 いや、年齢とかではあんまり変わらないですかね。単純に物事を仕掛けたものが当たれば嬉しいですし、逆に言うと外れることもあるので、それはそれで何が足りなかったんだろうなと自問自答することもありますし。それぐらいです、本当に。そんなに差はないです。

―――やっぱり興行というのは、それぐらい魅力的なものなんですね。

高木 そうですよね。

 

⑦これからプロレスラーを目指す若者へメッセージ

―――そして最後に、これからプロレスラーを目指す若者へのメッセージをお願いします。

高木 これは入る団体はちゃんと考えたほうがいいですね、本当に。入ってから理想じゃなかったということってすごいあると思うので。よくいるんですよ。ここに入りたかったけど、落ちちゃったからここに来ましたみたいなことがあるんですよ。そういう感覚では選ばないでほしいなと思います。入ったとしても長続きはしないので、本当に自分が入りたい、理想像だと思う団体をちゃんとチョイスしてやってほしいなというのはありますね。

―――これは就職ともよく似てますよね。

高木 似ていると思います。

―――一般サラリーマンの方でも、就職するときに本当は違う事をやりたかったけど、色んな理由で仕方がないから一般企業に入ったと。でも結局すぐ辞めちゃうという事もありますね。

高木 こればかりは、カラーが合わないところに入ってしまうと自分が苦労するだけなので。それが本当にここだったら面白いな、ここに入りたいなと思ったら、それは多分曲げないほうがいい。こっちが駄目だったからここに入ろうかみたいなというのは、考え方とかそれが合わないところに入ってしまうと、本当に長続きしないので。そうすると続かないから辞めちゃおうって、またここで時間が無駄になってしまうわけじゃないですか。だから、そこは本当に僕は思うんですけど、本当にちゃんとチョイスしたほうがいいのになと思うんですよ。

―――やっぱり自分の本当にやりたいところの選択の気持ちはずっと持ち続けて、そこを目指したほうがいいという感じですかね。

高木 これは本当に若いレスラー、プロレス目指す人たちにやっぱり言いたいですね。

―――夢の部分とかってどうですか?プロレスラーになったらこんな夢があるみたいな、もしくはこれからこういう夢を見ていこうみたいな。

高木 これはなかなか難しいですね…。別に夢がないとかって言ったわけではなくて、さっきも言った話なんですけど、どこにその欲を求めているかにもよると思うんですよ。好きだったプロレスラーになって稼ぎたいとか、好きだったプロレスを稼げないけどやりたいなのか、それだけでも違うじゃないですか。だから、結構これって抽象的な言い方ができないというか、難しいんですよね。夢がないことを言ってしまうつもりはないんですけど、変なところに入ったら本当に変なんですよ、想像以上に。だからもうあまり言えないですよ。

―――誰でもなれる職業ではないですからね。

高木 本当に自分が入りたいと思うところに入るというのが、それが夢を叶えるということかなと思います。本当に自分が入りたいと思える団体に入るという気持ちはちゃんと持っていたほうがいいと思いますね。いるんですよ、いっぱい。入ってからやっぱりこんなはずじゃなかったんですけどねみたいな。聞いたらギャラがメチャクチャ安かったりとかあるので。ちょっときつい言葉で言うと、入り方を間違えると本当に一生後悔するので。

―――確かに。

高木 だから入りたいと思うところで入って、というところはもう後悔しないかなと思うんですよね。ちょっと違うところに入ってしまうと、またなんかあれじゃないですか。だからプロレスラーになりたいというだけで来るのはやめたほうがいいです、本当に。どこの団体で入りたいかまで決めてから、やりたい、じゃないと続かないですね。

―――本当に現実を直視しながら経営をみていらっしゃる高木社長だからこそ、ある意味で若者に対しての本当のメッセージですよね。

高木 本当にそうですよね。

―――選択肢を間違えないでくださいというような。

高木 本当に入りたい団体に入るというのは、そうですね。

―――本日は、どうもありがとうございました。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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