【SSPW】間下隼人「タイガーマスクにはなれなかったけど、僕だって“虎”なんだ」新弟子時代からの過酷な半生を激白!
■「8時間かけて10,713回スクワット」「犯罪に巻き込まれてホームレスになった」――初代タイガーマスクの弟子として味わってきた“地獄”の日々と、晩成の大器を作った過酷なトレーニング
――さらりと「指の一本くらい安いもの」という言葉が出てくるのは、それこそ梶原一騎先生の劇画のようです
「周りにスゴい人たちしかいないんで、感覚がズレましたね。僕、実は思い出作りで佐山先生の入門試験受けに行ったんです。そしたら受かっちゃったんですよ。そこからが、ホントに……本当に、もう、地獄でした……」
――最初に見た地獄はどのようなものでしたか?
「入って1週間くらいだったかな?先生がお出かけになる前に『キミ、スクワットしてて』って仰って。いつまでとか、何回とかも分からなかったんで8時間くらいスクワットしてたんです。意識も朦朧としてたんですけど、回数だけは数えようと思って。10,713回です。それはまだ覚えてます。先生が道場に帰られて『キミ、何してんの?』って言われるんで『スクワットしてました』って答えたら『馬鹿かお前はッ!』って怒鳴られて……。もう歩けなくて。っていうか本当に立つこともできなくなっちゃったんで、先生がタクシー代を出してくれて寮まで帰りました。あとで見たら道場の畳がちょっと沈んでて、血と汗のシミができてて……言ってて思ったんすけど、これ劇画っすね(笑)」
――入門テストは普通だったのでしょうか
「面接のときにドアをノックして開けたら、まず目の前に金髪で入れ墨だらけの折原さん(折原昌夫)がいるんですね。ドアが閉まって密室になったときに『あっ、俺殺されちゃうんだな』って思いました。そのあと折原さんが先生を呼んだら、袴を履いて日本刀を持った先生が出てきて。そこでまた『あっ、俺殺されちゃうんだな』って思って。そのあと、折原さんに気を失うまでスパーリングでボコボコにされて。先生が気を失った僕の顔にペットボトルから水をかけて、僕が起きたら『はい、合格♪』って。……“普通”っていうか、『まあ、そんくらいは』って思っちゃうんですよね、今の僕から見たら」
――普段の練習自体も相当にキツいものだと思いますが、最初の頃はどのような練習をしていたのでしょう
「プロレスの技術的な練習よりも格闘技寄りというか、ただただひたすらに強さを追究する練習だったんです。俗に言う“ガチンコ”ですね。僕は格闘技経験なんて無いのに、いきなりスーパー・タイガーとヘッドガードもマウスピースも付けずに打撃のスパーリングをして。勝てるわけ無いじゃないですか!(笑)勝つどころか、一発もかすりもしないし、蹴られまくるわ殴られまくるわ、歯は折れるわ顔面は血まみれになるわ……今考えると本当に恐ろしい練習でした。すんごいキツかったです。そのあとに、折原さんとスクワットを3,000回やるっていう。でも、なんも知らない状態で入ったんで、それが当たり前だと思ってたんですよ。でも、デビューして1年くらいしてから他の選手と話すことが多くなってきてから『あれ?これ普通じゃないのでは?』ってようやく気付きました(笑)」
――それに食らいついていった精神力は凄まじいものがあると思います
「いや、そんなこと無いっすよ。毎日毎日寮で『どうか朝が来ないでくれ』って祈りながら寝てましたもん(笑)当時は練習中に水を飲むことも禁止だったので、吐くフリしてトイレに行ってタンクの水を飲んだりして。まあ吐く水分も無くなっちゃってたのも事実で……。入門したとき80kgで来て2週間で66kgまで落ちて、『ああ、これは死ぬなあ』と思いながらやってました。キツかったっすねえ……。少しでも空手とかレスリングとかやってればよかったんですけど、『モーニング娘。』の追っかけしかやってなかったんで。地獄でしたねぇ……」
――新弟子時代、練習以外で苦労したことはなんでしょう
「言っちゃダメな話が多すぎるんで、ちょっとマイルドなのを(笑)当時、道場の鍵は僕が持ってて。まず室外機を見るんですよ。先生がいるかいないかが分かるんで。そこが第一関門。次にエレベーターを見るんです。エレベーターが1階に降りてたら先生は出かけている可能性がある。(道場がある)2階にいたら先生がいらっしゃる可能性がある。最後の関門は、電気メーターを見る。動いてたら確実に先生はいらっしゃる。地獄の門でしたね、当時は……。それが1年続いたんで。途中で後輩ができたりもしたんですけど結局みんな辞めちゃったんで。弟子が20人くらいいたときもあるんですけど、みんな2週間も保たずにいなくなっちゃいました。僕、今でこそチャンピオンですけど、下がいないんで。今年38歳になるんですけど、ずっと若手扱いで。佐山先生はまだ僕が20代くらいに思われてるんじゃないかな?(笑)」
――「言っちゃダメだ」と思った話の中で、ギリギリ大丈夫だと思うエピソードをお願いします
「怖いんで、まあまあ大丈夫なやつで勘弁してください(笑)新弟子時代は佐山先生の付き人をやってて、かなり多めに洗濯代とか買物代とかをもらって、その余りが収入って感じで。だから、寮を出ようと思ったときに審査が通らなくて全然アパートとか借りられなかったんですよ。苦労して初めて借りたアパートに住み始めて1~2週間くらいだったかな?天井から変な黒い液体が垂れてきて。上の階の住人にクレーム入れたりしてたんですけど、いきなり警察が来て取り調べ受けて。なんか上の階の人が大麻を育ててたみたいで……。僕、悪人面じゃないですか。完全に犯人の一味扱いされて取り調べが始まっちゃって(笑)すぐに疑いは晴れたんですけど、なんやかんやでアパートを強制退去させられて、公園で寝るホームレス生活が始まっちゃって。『なんでこんな思いしなきゃいけないんだろ』って絶望しながら道場行ってたんですけど、その通り道で偶然中学の同級生に会って。その同級生が不動産の仕事してて、紹介でアパート借りられるって奇跡が起きたんですよ(笑)結局、結婚するまでそこに住んでました」
――「まあまあ大丈夫なやつ」で相当危ない話が出てきて困惑しているのですが、これ以上の地獄があった……?
「これ以上は本当に言えない話しか無いんで、残りは墓まで持っていきます(笑)」
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