拳王と決別したはずなのにつきまとわれる清宮海斗 ノアを引っ張る男の苦悩はエンドレス

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

名勝負数え唄にもいろいろある。清宮海斗拳王ノアの先頭を争う二人の抗争はリング上のみならず、リング外での舌戦も含めた「闘い」である。

ここ数年、GHCヘビー級王座を巡る攻防など激しく激突してきた2人だが、4・11東京・後楽園ホール大会の一騎打ちは、いささか意外な展開だった。

拳王が清宮の若い日の写真を持ち出し「デコせま、ゲジゲジまゆ、イガグリ坊主」と嘲笑。しかも若き清宮がプリントされた特製Tシャツを制作し、拳王がペンを走らせるサイン会を催すなど、まさにやりたい放題だった。

これには清宮も「気持ち悪い」「めんどくさい」と激怒。清宮の熱心なファンも拳王のヘアスタイルを「きのこ頭」と揶揄して激高。ベルトをかけた時とは一味違った緊迫感が漂った。

ゴングが鳴れば、いつものように厳しい技の応酬となったが、怒り、嫌悪感をむきだしにした清宮が変型シャイニングウイザードで勝利した。


©プロレスリング・ノア

「これで拳王とは完全決別。俺は俺の道を行く。誰が何と言おうが、俺がノアを引っ張っていく」と吹っ切れた表情。翌日以降も「すっきりした」とさわやかな笑顔を振りまいていた。

とはいえ、拳王は「何が決別だ。1回勝ったぐらいで、俺たちの仲が終わるわけがねえだろ」といつも通りの俺様節を爆発させた。まだまだ清宮をつけ狙うことを強調していたが、4・14東京・品川大会でマスクマンの救出としながら「海斗さーん」とストーカー行為。清宮は無視を決めこんだ。今後も拳王がすんなりと引き下がるとは思えない。

4・11後楽園大会で、清宮も拳王作の「イガグリ清宮Tシャツ」を「嫌がらせなのかも知れないが、俺は何とも思ってないし、イヤじゃないんだよ」と“公認”。急きょ、サイン会を開催し、なんと清宮と拳王のサインが並んで入るという特別なTシャツが誕生している。

清宮はノアの先頭に立つために邁進すると決意を新たにしている。となれば拳王の存在を無視することは現実的に難しい。今後も、しつこく仕掛けて来るであろう拳王の息の根を止めるしかない。

清宮と拳王はリング外の“舌戦”も見もの。令和の名勝負数え唄は番外戦も火花がバチバチと散るのだろう。

「若きエース」と言われてきた清宮だが、今年7月には28歳になる。「もう若いとは…」と苦笑い。GHCヘビー級王座史上、最年少の22歳で栄光のベルトを初戴冠。26歳で2度目の君臨も果たしている。

全日本プロレスの安齊勇馬が三冠ヘビー級史上、最年少の24歳で頂点に立ったことで、新時代の到来と騒がれている。ただしデビュー後まだ1年半とあって「キャリア不足」を指摘されている。清宮も同じような声を浴びただけに、他人事ではないだろう。

ただし、清宮には批判の声も全く意に介さない心の強さがある。それが「誰が何と言おうが…」の発言につながる。安齊は批判の声を気にしているようだが、それはキャリアの違いか。

清宮はキャリアも着々と積み重ねて9年目。「一緒にしてくれるな」という思いが「もうすぐ28歳になるから」の言葉にこめられたのかも知れない。

ノアだけでなく令和の日本プロレス界をけん引するべき清宮である。安齊の快挙が刺激になったことも事実だろう。全日本には安齊旋風が吹き荒れ勢いづいている。

ノアが新日本プロレスに追いつき、追い越すためにも清宮への期待がいよいよ高まっている。健康に良いとされる大好きなトマトでパワーを充填し加速してほしい。

トマトは夏野菜。「♪去年のトマトは青くて固かったわ。だけどいかが。もう今年は赤いでしょ♪」という往年のアイドル・桜田淳子の歌を思い出した。

感情が高ぶり過ぎて涙を見せることもあるが、清宮の芯の強さは群を抜く。年齢を重ね、ふてぶてしさが加われば、さらに強力なものになるだろう。ノアの景色はどう変わるのか。また拳王との愛憎劇の行方は。

新緑がまぶしい季節を迎えるが、緑のノアが輝くかどうかは清宮海斗にかかっている。

▼柴田惣一のプロレス現在過去未来(バックナンバー)
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