新団体マリーゴールドのジュリア「私が所属でいられる時間は短いかもしれない」
写真:新井宏
スターダムのエグゼクティブプロデューサー職から契約解除されていたロッシー小川氏が2カ月の沈黙を破り、噂されていた新団体旗揚げを正式に発表した。
4月15日に都内でおこなわれた会見には3月末にスターダムを契約満了で退団したジュリア、林下詩美、MIRAI、桜井麻衣(桜井まい改め)ビクトリア弓月(弓月改め)に加え、高橋奈七永、石川奈青の7名が所属選手として登壇、団体名は「DREAM STAR FIGHTING MARIGOLD(マリーゴールド)」と発表された。
旗揚げ戦は5月20日(月)東京・後楽園ホールでおこなわれ、ジュリア&X組vsSareee&X組のタッグマッチがメインカードとして実現する。さらには、風香アドバイザーに率いられる形でアクトレスガールズ退団が明らかになったばかりの6選手が現われ、参戦を直訴する一幕も。「昭和のエッセンスを注入していきたい」とした代表取締役の小川氏。スターダム退団者に加えアクトレスガールズ勢登場のサプライズによって、賛否両論渦巻く船出になりそうだ。
写真:新井宏
とにもかくにも注目度大の新団体マリーゴールド。所属選手の中でもエースともくされるのがジュリア、ということになるのだろう。スターダム退団者の中でいち早く離脱が明らかになったジュリア。詩美らが追随する形でこの日を迎えたわけだが、ジュリアは会見で「人生、何が起こるかわかりません。何が起こるかわからないからこそ、駆け抜ける意味があると思います。安定を求めるのも楽しい、けど、それをぶっ壊すのはもっと楽しい。仲良くなるのもうれしいけど、仲が悪くなるのだっておもしろい。褒められたら気分いいけど、けなされるのすら、いとおしい。それが生きるということだと思います。私はいま、間違いなく生きてます!」とコメントした。彼女自身、3団体目にして初めての旗揚げ戦。マリーゴールドオリジナルメンバーが揃ったこの席で、いったい何を感じたのだろうか。
「まずは、相当な覚悟がないと(新団体には)来れないですよね。元スターダムでここに来た選手たちには、それぞれが相当の覚悟があると思う。人数こそ少ないかもしれないけど、少ない人数で合わせた力は何十倍にも何百倍にもなる。そんなパワーを生み出すことができると、私は思ってます」
写真:新井宏
全員で話し合って移籍を決めたわけではない。それぞれがそれぞれの思いや覚悟をもって、彼女たちは新天地に闘いの場を求めるのだ。ジュリアが退団を考え始めたのは、やはり、スターダムでさまざまな問題点が噴出していた頃だった。
「次の契約満了の時期に終わりかなっていうのは考えていましたね、実際のところ。確かに(新団体の)噂はあったんですよ。私が小川さんに新団体を作ってくれと言ったかって? 言ってないです、言ってないです(笑)。ただ、それを聞いた瞬間に小川さんについていきたいって思ったんですよね。小川さんが引き抜いたみたいに言われていますけど、実際にはいろんなことがあるんですよ。かばうつもりはないけど、小川さんは悪くない。それは言っておきたい、マジで」
小川氏は以前、「複数の選手から新しく団体を作ってほしいと言われていた」ことを明かしている。その選手が誰なのか、その選手が今回のメンバーにいるかなどはともかく、移籍を選択した選手全員に小川氏が声をかけ、一方的に引き抜いたわけではないようだ。
また、マリーゴールドには元スターダムだけではない。2011年のスターダムの旗揚げメンバーであり、退団後はSEAdLINNNGを設立。病気などもあって離脱した後にはフリーとしてスターダムの若手にパッションを注入、女子プロ界の人間国宝と呼ばれる奈七永がマリーゴールドに合流。さらには元アイスリボンでスターダムの若手ブランドNEW BLOODに参戦したことのある石川奈青も心機一転、所属選手として加入した。
元アイスリボンという点でジュリアとは共通項のある石川。しかし、アイス時代にほとんど接点はなく、石川のデビュー前、エキシビションマッチで一度あたっただけだ。
「石川とは行き違いなんですよね。このマリーゴールドという団体は元スターダム勢や小川さんと縁のある人たちが集まってできたものに見えるけど、そんな中に石川が飛び込んできた。その覚悟ってすごいと思いますよ。3月くらいに一度話したんだけど、石川奈青という存在があることを残したいと。その気持ちがメチャクチャ伝わってきたんですよね」
石川奈青の存在を残したい。これは昨年5月、スターダムNEW BLOODで“中野たむ対決”をおこなったときに抱いた思いから来ているのではなかろうか。あの試合で石川はニセ中野たむに変身。そのなりきりぶりは見事だったが、プロレスラーならばやはり自分自身を表現したいと思って当然。ジュリアもそのとき、石川に声をかけていた。
「私はそんなのやめろって言ったんですよ。ただ、あのときは本人が必死で、なんでもいいからやるっていうマインドだったと思うんですね。だけどそうじゃねえだろ、石川奈青でやれよって。あれから時間が経って、いまはもうまわりに気を使う必要もない、イチからのスタートなんだから、好きなようにやればいいって思いますね」
新団体でも中野たむの幻影に付きまとわれるのか?と思いきや、会見でも石川は「マリーゴールドの石川奈青です。中野たむではありません。誰かの物まねをするのではなく、石川奈青としてのプロレスを見せるために、今日この場に立っています。石川奈青こそがマリーゴールドだと言われるような、マリーゴールドのリングでは誰よりも輝く選手になりたいと思っています」とコメント。あの日の姿は一度きり。石川は石川奈青として、リングに上がるつもりだ。
それぞれが特別な思いを胸にリングに上がる新団体マリーゴールド。旗揚げまであと1カ月。移籍する元スターダム勢は全員が3月末で契約を満了、詩美とジュリアは4・12後楽園でスターダムラストマッチをおこなった。試合後のジュリアはマイクを取り「4年前、ヘンな移籍の仕方で来てしまった私を、いまこうやって、あったかく応援してくれてる諸君、本当にありがとう!」とファンにメッセージ。場内は大ジュリアコールに包まれた。
「確かに、ファンから見たらヘンな移籍の仕方だったと思います(苦笑)。そういう印象を与えてしまったのは事実。ただ、今回は何ひとつヘンなものはありませんよ。契約書を隅から隅までちゃんと読んで、やめるのなら3カ月前には伝えて、契約切れを待ってやめましたから。そこはちゃんと学びました(笑)」
スターダムとの契約が終了した翌日の4月1日にはNOAHに登場、5・4両国への参戦を発表した。そのうえ、会見当日の夜にも現われマリーゴールド勢での5・4方舟マット上陸を宣言した。さらに気になるのは、噂される海外マットだ。
レッスルマニアウィークエンドの4・6「NXT スタンド&デリバー」で、観戦中のジュリアが映し出された。過去の例からしても、このような紹介をされたレスラーの多くがWWEと契約をかわしている。では、ジュリアの場合はどうなのか?
「いきなりカメラで抜かれてて、ビックリしましたよ(笑)。それに関してはまだ明確なことはひとつも言えないけれども、もしかしたら私がここマリーゴールド所属としていられるのは短いかもしれないですね。つまり、ずっといるわけではないという可能性があるということです」
写真:新井宏
少なくとも、ジュリアはこの団体に骨を埋めようとしているわけではないらしい。とはいえ、彼女のプロレス人生において大きな分岐点であることは間違いない。
「会見でも言いましたけど、人生ってホント何が起こるかわからない。もしからしたら明日何かがあってプロレスできなくなるかもしれない。あの日だって全部突然の出来事で、NXTを見てるところを映されるとは思ってもいなかったし、トリプルHと握手するなんて思ってもみなかったですから。それに、女子プロ界が一強だけじゃつまらないというのもわかるんですよ。だから私は、選手にもお客さんにも選択肢を与えたい。どうぞ見定めてくださいって。私にはいくら時間があるかわからない。だからホントに一瞬一瞬、一戦一戦、無駄にできないんですよね。仮に、仮にですよ、(近い将来)私がいなくなったとしても、これからの選手や後輩たちにプロレスとは?闘いとはなんぞや?というのを自分ができる限り伝えていきたいと思っています。私がいなくなったとしても、オメエらで引っ張っていけよって。そうできるように、できる限りのことを全力でやっていきますよ」
ジュリアにとっては新団体も通過点なのか。もしかしたら旗揚げから数カ月で海外へ完全移籍となる可能性もゼロではない。そうなれば、5・20後楽園でのSareee戦も含め、おのずとジュリアの国内試合すべてが貴重になってくる。ジュリアにとって、マリーゴールドとは!?
写真:新井宏
インタビュアー:新井宏
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